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第1話 少年の日 洋一は7歳の時、近所のおばさんから雑種の子犬を譲り受けた。 「この犬、もらってもいいでしょ?お父さん」 「大事に育てられるんならいいよ」 「わ〜い」 洋一はその小犬に「ベル」と名前を付けてたいへんかわいがった。 遊ぶときはいつもいっしょ。 散歩も、公園のかけっこも、給食の残りのパンも半分こ。 パンをもらうとベルはうれしそうに後ろ足をステップさせる。 しかし最初の数ヶ月はかわいがって遊んでいたが、そのうち飽きて面倒を見なくなる。 学校で面白くない事があると
第1話 プロローグ 虫達は自然の偉大さを良く知っている。 そして生きる事に対して熱心である。 もしあなたが蟻のような小さな虫だったとしたら、 そよ風は竜巻に思えるし、 小雨は洪水の前の嵐に思えるでしょう。 第2話 トンボ取り 商社マンの柳村健二は、久しぶりの休暇を家族と実家のある山村で過ごしていた。 健二には9歳と7歳の男の子供がいた。 本当はその二人の間にもう一人子供がいるはずだったが、妻の恭子は流産していた。 柳村の実家は農家で、そこは自然に恵まれていた。 夏、暑
第1話 プロローグ 花は美しい、そしてけなげである。 「水が欲しい」とか「太陽の光が欲しい」とは言うはずもない。 でも知ってほしい。 そんな花だけれど心があると。 第2話 登山道 和樹とみどり。 二人は登山が趣味で出会った。 そして結婚した。 和樹は何よりも山が好き、みどりは何よりも花が好き。 登山道。 晴れの日。 澄んだ青空。 風が心地好い。とん、とん、とん、とん、リズミカルに登る登山者達。 登っている途中で見られる、さまざまな高山植物が美しい。 「みどり、ここらへ
第1話 人事異動 4月の人事異動で営業部のヒラから経理部の係長になることになった、晴山仁。 (ヒラから昇進はいいとして、経理なんてやったことないぞ、おいおい) (パワハラか?ちくしょう、僕が何をしたって言うんだ!) 晴山は部下から、 「これ決済お願いします」と言われるも、 「えっと、これは・・何かな?」 「係長、分からないんですか?」 と白い目で見られるし、課長からは、 「晴山君、しっかりしてくれよ、ここの数字間違っているよ」 と叱責されるし。 (どうすればいいんだよ) あ