【連載小説】たましいのみなと vol.6

じいちゃんの家にある離れの部屋は、僕にとって秘密基地みたいな場所だ。

行くまでの道のりもワクワクして、そこが自分の居場所のように心地よく、無敵になれるような感覚がした。

たとえば家や学校で嫌なことがあった日も、彼女とうまく行かなくて悩んだ日も、仕事で失敗して落ち込んだ日も、ここに来ればリセットされた。

じいちゃんやそのまたじいちゃんが集めた本を読んでいるうちに、悩みや不安の答えになるようなことばに出会った。

本の中に答えが見つからない時は、じいちゃんが話を聞いてくれて、気持ちが持ち上がるようなことばを掛けてくれたりするうちに、心が回復していった。

今では、週末のたびに本屋へ寄って気になる本を買ってきて、時間を忘れてここで読み耽る。


金曜の夜、ずっしり疲れがのこる身体をベッドに沈めて、次に起きたときには世界が変わっている。

それは週末の2日間だけ、現れる世界。

孤独を愛する時間、空想にひたる時間。

時間のない世界、境界線のない世界。

そして日曜の夜、背中には見えない翼が生えていて、明日もなにか良いことが起きますようにと、パタパタ羽を鳴らしながら眠りにつくのだ。

どこでもドアがあるとしたら、僕にとってそれはこの場所かもしれない。

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