東京ゆらんミニ〜喜久の湯編〜
ササウナ視点
「ねぇ、絶対に儲かる話があるんだけど」
私はもう心技体揃った中年になったのでそういうキナ臭い話をしてくれる人さえ周りにおらず、それはそれで寂しいのだが、今でもこういう話は良くあると聞く。距離感が微妙だったはずの同級生から突然会いたいと言われたら、まあまずマルチか、宗教だ。ゴスペルサークルに見せかけた宗教、社会人バレーボールサークルと見せかけて配られるミネラルウォーターのラベルの様子がおかしいとか、バリエーションに富んでいて詐欺の世界は面白い。いまだとオンラインサロンとか仮想通貨とかになるのだろうか、時間さえあれば首を突っ込んでチキンレース的に楽しみたいのだが、実際のところ公私共に時間はないのでこの手の怪しい話を聞いたら、その口を閉じる前に顔面にスタープラチナをブチ込むだけである。
「ササウナさん、今日行く銭湯はサウナ代も込みで500円らしいです」
は?!
サシミンクくんが訳の分からないことを言っている。だいたいね、京都ならまだしもここは大都会TOKYOなんよ、サウナ代は300-500円くらいオンされるものなんよ、というのを懇切丁寧に説明するか、手っ取り早くスタプラか迷ったが、まあ、本人も「らしい」と、伝聞・推定のニュアンスをかもしているわけだし、ただちにオラオラは法治国家として、ねぇ…?などと考えながら立石から歩いていると、やがて喜久の湯に到着した。
番頭に立つのは、スタープラチナがごとき立派な体躯を持つ、胸板ゴク厚のお兄さんであった。私は口だけの男だが、この人は本物の武闘派だ。揉み合ったら秒で捻り殺されるなと思いつつ、身体とミスマッチのベビーフェイスを持つ爽やかなお兄さんに、思い切って聞いた。
「風の噂で、ここがサウナ代を取らないなんてことを聞いたでヤンスが、嘘でヤンスよね?」
筋肉にビビって必要以上に卑屈さが出てしまったが、お兄さんは眩いばかりの笑顔でこう答えた。
「はい。うちはサウナ代、タダです!(キラーン)(後光が輝く音)」
度肝を抜かれた。そんな上手い話がまだTOKYOにあるのかよ…
「あの、あの、あとじゃあ、タオル貸してほしいでヤンスけど、そちらはおいくら万円でゲスか?」
度肝を抜かれてキャラがブレたが、お兄さんの笑顔は揺るがなかった。
「うちは1枚は無料で貸してます!(キラーン)」
「ズコー!」
凹○
↑ みたいな感じで天を仰いで倒れたい気持ちになったが、色んな意味で迷惑かけるなのでそうはしなかった。
銭湯に入るまでの話がこんなに長くなると思わなかったが、銭湯もサウナ、水風呂ともとても良かった。外気浴はできないが、ととのい用の椅子がそこかしこにあってまったく問題ない。あと、地味にサ室で流れてた音楽が90年代ポップスで、ツボ。工藤静香「慟哭」を聴きながらサウナに入ったのは初めてだ。
そして、お兄さんが「めちゃくちゃ強いからやってみて」とレコメンしてくれた、最奥のジェットバス。凄まじい水流が尻に一点集中し、マジでこのまま浮いて天井を抜けるんじゃないかと思った。
立石、住みたい。
サシミンク視点
ササウナさんの導入があまりにもいかがわしいが、本黙示録はとっても健全。なので、安心してください。はいてますよ。(何を?)
今日は京成立石駅最寄りの喜久の湯。個人的には初めて開拓する場所になるのでとても新鮮な気持ちだ。線路沿いを他愛もない会話をしながら通り過ぎ、住宅街を抜けると、あった。喜久の湯だ。事前の情報でジムっぽい銭湯と聞いていたので少し緊張していたが、その必要はなかった。
番頭さんはとても明るく、気さくな方だった。事前調べではもともとトレーナーをされていた方と聞いていたのでかなり鍛えられている様子。噂に違いのない銭湯だ。
脱衣所に入ると懸垂の機械とダンベルが。ここがジムスペースか!かなり目立つところにあって親子連れの方が筋トレをしていた。お父さんは懸垂、お子さんはダンベル。銭湯(サウナ)と筋トレの相乗効果はコミュニケーションにも発揮されるのだと改めて感じさせられた。
お風呂も中々に強烈な要素があって、都内最強と謳われているジェットバスがある。ササウナさんが試してみたところ、なんか笑っている。その笑っている姿が怖く感じてしまい、遂に自分で試すことはなかった。なんでハハハハハハって笑ってるのか、漫画じゃあるまいし。
サウナは6人が入れるくらいのサイズ。なんかスッキリとした木の香りがする気がした。ちょうどタオル交換のタイミングだったからか、番頭さんがタオル持ってサウナの入り口で待機していた。『普段サウナどこ行かれるんですか?』と声をかけていただく。また他の常連さんとも話されていたので、コミュニケーションを大事にされているんだなと改めて感じた。
喜久の湯は銭湯をキッカケとしたコミュニケーションの最先端を走っているのではないだろうか。
皆さんも是非行ってみてほしい。銭湯の役割を改めて感じてもらいたい。