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5年前 <4>

あれ……本当はもっと気楽に、5年前に大手術したんだよ~って話を書きたかったんだけど、どうしてもさらにその1年前のがん発覚→手術の話が避けられないのであれこれ重たいことを書いてしまったよ。

改めて時系列に出来事を並べるとこんな感じ。
がん疑惑濃厚→仕事辞める→(以前からやりたかった)顎変形症の治療を始める→手術で摘出した病巣によりがん確定→もう一度がん手術
今ここで話が終わってる。

顎変形症の治療、手術って言われても何それ!?って人がほとんどだと思う。手術についてすごい簡単に説明(?)すると、口腔内を切開して下顎あるいは上下の顎の骨を人工的に骨折させ、不要な骨を削ったり切り落としたりしてから骨を正しい位置にして固定して切開した傷を縫う……ってこれでも分からないよね、きっと💦
口腔内から手術するから顔などには傷はないんだけども上下の顎というか歯茎には切って縫った痕が思いっきりある。まぁ、見せようと思わなきゃ見れない位置。もし今後の人生、どこかで行き倒れて身元を確認されるようなことがあればすぐに分かる、かも知れない。

顎変形症の治療というのは歯の矯正と外科手術が必ずセットになって行われなければいけない。保険のルール的にもそうだし、どっちか片方だと意味がないというか。そもそも矯正だけで治るならそれは「顎変形症(←病気)」ではないんだよね。

顎変形症の手術は特殊とまでは言わないけど周りにやったことのある人っている?ってレベルではあると思う。第一、そんな病名初めて聞いたって人が多いのでは。あ、「顎関節症」じゃないよ、たまに間違われるけど。なので執刀出来る医師も限られているのだけども私は一応都会に住んでいるのでそこそこ医師を選ぶ選択肢があった。けどその中でも多分だけど日本で唯一の方式を採用している先生を選んだ。術式は他と変わらないんだけども、何が違うかというと、術前の歯の矯正はそこそこに手術を先にしてから矯正をやるってこと。そのまんまなんだけど「サージェリーファースト」って呼ばれる方式。通常の顎変形症の術前矯正は2年くらいかかって、術後の矯正は短いんだけど、その逆だね。私がサージェリーファーストを選んだのは他でもなく、がんがどうなるか分からなかったからさっさと顎変形症の手術をしちゃいたいという理由だった。がんがもし取り切れなかったらさらに手術で臓器を取ったり、放射線治療、化学療法をすることになるでしょ(そういった治療がいいことかどうかは今は議論しない)。そうなったら顎変形症の手術どころじゃない、がん治療優先じゃん。

まぁ、運よく2度の手術で病巣が取れたので、再発転移に怯えつつも顎変形症の治療、手術に専念することが出来た。月に一度か二度矯正歯科(都内にある)に通い、段々と歯が正しい並び方になってくるのが嬉しかった。先生!早く手術のゴーサイン出して~と願っていたけど結果、矯正を始めてから1年後に手術をすることになった。予想より長くかかったけれど仕方ない。

顎変形症の手術の体験談とかめっちゃ読んだけど、術後数日間がめっちゃ地獄だとみんな書いている。切ったところから大量出血し、喉や鼻に詰まって呼吸が出来ない、高熱が出てインフルエンザよりしんどい、チューブを突っ込んで血を吸いとるんだけどこれも苦しいと。おまけに口は開かないように固定されてるから流動食をわずかな口の隙間から流し込むし喋るのも困難だから筆談とか。
矯正歯科に同じ病院で退院して2週間後という女子高生がたまたまいたので話を聞いたらやっぱり死ぬほどきつかったと言っていた。辛すぎて術後2日は携帯も見ることが出来なかったと。
私より25歳くらい若い人でもそんななの!?こりゃ覚悟しないと……。
あと、先生も看護師さんもみんな優しかったけど一人だけ意地悪な看護師がいたと。食事が上手く摂れないから手伝ってと頼んだら自分でやれと言われたって。うん、おばちゃんも頑張るね!

病院の方針で、手術が終わってから翌日の昼前まで麻酔で眠らせたままってのも良かった。多くの病院では術後割とすぐに目を覚ますことになるそうなのだが、一番きつい術後すぐには眠っていられるってのはちょっと安心だと思った。しかし、24時間以上麻酔で眠ってるってどんな感じなんだろう、想像つかなかった。けど女子高生でもそんなにきついんでしょ……うーん。

あとね、先生が私の好みだった。と言っても見た目とかそういうのじゃないよ(笑)。なんかね、楽しそうに説明してくれるんだよね。学校で一番頭がいいんだけど気取ってなくて、実験とか工作が好きでたまらん、みたいな男の子って言ったらいいのかな。外科医ってのはやっぱ腕とセンスが全てだと私は思う。性格が良いけど下手くそじゃ困るわけよ💦
これはあとでネットで知ったんだけども、先生は日本で一番すごい大学の医学部を首席で出たらしい。まぁ学歴なんて私は気にしないけども、先生はヨーロッパなどでの外国で研修経験も豊富だったし、安心材料にはなったよね。

手術の一か月前には術前検査があった。いわゆる身体検査に加え顔のレントゲン撮影、CT、心電図、肺活量、血液検査など。
そして数日後、私が顎変形症の治療/手術の中で一番嫌だった
「自己血貯血」があった。手術中輸血が必要になった場合、あらかじめ採っておいた自分の血を輸血することになるから。それでも足りなかったら他人の血を輸血……。
私ね、血管が細いし迷走神経反射もあるから血を採られるの苦手過ぎるのよ。普通の採血でも針を刺しても血が入っていかなくて何度もやり直しされることなんてしょっちゅう。そうしてる間に血圧がどんどん下がって倒れそうになるの。案の定自己血貯血でも腕の関節にある血管からでは無理で、手首に近い太めの血管から採った。30分くらいかな、所要時間。400mlも血を採ったことなかったから早く終われ!って横になりながらずっと思ってた。あ、体重50kgない人は200mlでよかったらしいんだけどもあの時私は52kgあったんだよね。今より10kg近く重い💦
貯血が終わった後はゆっくり起きて用意してたポカリを全部飲んで少し休んで終了。私は貧血の気はなくて、女性にしては血が濃いと言われたんだけどもこれは治療すると決めてから毎日カルシウムと鉄分をまじめに摂ってたからかも知れない。

いよいよ1か月しないうちに手術だ!あ~、長かったなぁ。入院は順調なら10泊くらいみたいだ。かつての旅行のお供、ヨーロッパや中東を一緒に旅した傷だらけの赤いリモワに入院に必要なものを詰めた。