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酔いどれ雑記 20 ぬいぐるみ男

※性的な内容あり。人によってはフラッシュバックや嫌悪感を覚えるような内容が含まれています。露骨な性描写はありませんがご注意ください。

過去作に何度か、小中学生の頃に雑誌で知り合った相手と文通(電子メールではありません、便箋と封筒を使い、手書きして郵送する手紙ですよ)をしていたという話を書きました。そして19歳の頃には海外ペンパルをやっていました。当時e-mailはあったけれどまだ一般には普及していない時代です。私の子供時代~10代の頃は掲載誌に住所本名が載っているのが当たり前でしたから当然、私の住所氏名もバッチリ掲載されました。けれど何か重大なトラブルに巻き込まれたことはありません。

世界各地の人からの文通を楽しんでいると突然、アダルトな内容の手紙や写真が何通も送られてくるようになりました。中には10ドル札が同封されていて「君の裸の写真を送ってくれ」というのもあり......。今まで健全な手紙しか来なかったのにどうして?と疑問に思っていましたがある日「君はイタリア人が好みみたいだけど、アルゼンチン人じゃダメかな?」と書いてある手紙がアルゼンチンから来ました......しかも男性が全裸で椅子に座って、広げた脚の間に可愛い動物(確かウサギ)のぬいぐるみが置かれているポラロイド写真が同封されていました(正直言うと、エロティックというより芸術的ではありました、悪趣味かもしれませんが)。その写真はともかく(?)「イタリア人が好み」って一体何?そんなこと当然だけどペンパル募集の原稿に書いた覚えなどありません。なんか気になったので勇気を出して、股間にぬいぐるみアルゼンチン男に返事を出して訊いたのです。「私、イタリア人がいいとか載せた覚えないんだけど!どこで私のこと知ったの?」って。そしたらぬいぐるみ男は律儀(?)に返事をくれて(!)。

「君の広告はアダルト誌のペンパル、パートナー募集コーナーに載ってて、それを見て手紙を出した。ほら、これ君の記事」と添付されてたのは私がペンパル雑誌(まともな)に送った原稿を改変してるものでありました。「19歳の日本人女性、趣味は読書とランジェリー姿での写真撮影。私のファンタジーはイタリア男性だけど、マッチョならだれでもウェルカム」仰天しましたとも。いくら清純とは程遠い私でも。私が掲載をお願いした文章は「19歳の日本人女性。趣味は読書とロックを聴いたり、映画を観ること。同じ年くらいの方なら男女問いません。世界中からお手紙待ってます」ですよ。合ってるのは年齢と性別と日本人ってとこと読書ってとこだけ!

私は一体何が起きたのか考えましたよ。私が掲載を依頼したペンパル雑誌自体には問題はなかった。けれどその雑誌から不埒者のエロ雑誌の関係者が勝手に掲載者の情報を改変して転載し、アホ男が引っかかり載っている女性に手紙を送ったというのが事実だと思います。ぬいぐるみ男には一応、実はこういうわけで......と返事を出しました。無視することも出来たのでしょうが、当時の私が向こう見ずだったのか、好奇心からか、ともかくも書かずにいられなかったんですね。それに軽蔑されるかも知れませんが、ぬいぐるみ男は実はそんなにおかしな人じゃないのではないか?って思ったんです。ぬいぐるみ男は私の話を理解してくれたようで、本当の事情を知らずに写真を送ったことを謝罪してくれました。以後、一切アダルトな内容ゼロという不思議な文通が始まりました。地球の裏側からあんな写真が届いたときは仰天してしまいましたけれども。家のごたごたや引っ越しのごたごた、仕事の忙しさでいつの間にか自然消滅してしまいましたが、今となっては懐かしい思い出です。あの頃の私は若かった、そう思います。機能不全家族育ちで培われてしまった猜疑心や警戒心がバリバリあるにも関わらず、自分が気になったことはとことん追求してしまったり、持ち前の好奇心から真相を知りたくてこんなこともしてしまいましたよと。