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酔いどれ雑記 116 OPIUM

街を歩いていて、あ、と思う一瞬って、わたくしは匂いによってもたらされることが多いです。私の住む退屈な場所なのにふと異国のカフェの珈琲の薫りがしたり。本当にほんの一瞬だけ、マッチ売りの少女の擦るマッチが見せる幻想よりも短いものですが。

ああ、私は消えることのないマッチが欲しいのかも知れない。たとえそれが幻でもずっと灯っているのならば少なくとも今よりは幸せだ。

「この間東京駅で君を見ました。元気そうでよかったです」何年も会っていない人からメールをもらったけれど、それはわたくしではありません。「もう何年も東京駅には行ってませんので」......ああ、なんて野暮な返し。その人の髪、きっと腰に届くくらい長かったんでしょう?もうずっとわたくしの髪は......。その人、OPIUMの薫りがした?違うでしょう?そういえばあなた、花粉症だったわね、忘れていました、そんなことは......。