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5年前 <1>

※大してグロくはないけど、痛そうな話が苦手な人は読んじゃダメ。

5年前の今頃、2019年の1月22日に私は大手術を受けた。この話はいつかにも書いたんだけど。顎変形症という病気でね。文字通り顎が変形してたの。正確には私の場合、上下の顎の骨が歯一本と半分ずれていた。それを治す手術。多くは生まれつきというか遺伝要素が強い疾患なんだけども私の身内でそんな人はいない。そして悲しいことに虐待でそうなってしまう(つまりは後天性)場合もある。私は後者なんだろう。虐待のストレスで歯を食いしばったり、指しゃぶりなどを激しくして健全に歯と顎が発育しないことでそうなってしまうケースが知られている。私の幼少期~小中学生時代にはまだ歯の矯正なんてしている子なんてごく少数のお金持ちだけだった。あの頃、親にお金があって且つ治療に積極的だったら手術などせずに矯正で済んだかもしれない。

顎変形症の手術って20代で始める人が多い。というのも術前に1、2年の矯正期間があり、術後も矯正治療が続くという長期の治療だし、術後は顔が2倍ぐらいに腫れるわ(半年してようやく普通レベルの顔になる)、しばらくは流動食。接客業の人はしばらく仕事を休まざるを得ないだろう。それに若いと体力、回復力もあるってんでね。

若い頃からこの手術を受けようと考えていたけど、タイミングが何となくつかめなかった。若い頃は旅行ばかりしていたし「接客業」に従事してたから。別にやらなくても死んだりはしない。けど顎がずれているということは肩こりなどの原因になるし、二足歩行である人間がおかしな歯並びや顎だと変な風に力が入ってめちゃ身体に負担がかかるし、咀嚼も正しく出来ないということはあまり知られていないが、私はひどい肩こり持ちで常に吐き気を催すほどだった。けど、やっぱり長期間の治療になるし大手術だしだわでためらい続けていたのだ。
そんな私が40歳目前で治療を始めたのは理由があって……
がんの疑いが濃厚と告げられたから。40歳の誕生日を3か月後に控えた12月に。それを機に仕事を辞め、もういっそ顎変形症の治療を始めちゃえ!って思ったの。で、まずは色々検査。顎変形症は「病気」なので保険が適用されるんだけども顎変形症の基準を満たしてないと当然保険外になってしまう。検査なんかしなくても目視でずれてるって分かるんだけどね、まぁやらないとダメってんで歯型を取ったりレントゲン撮ったり、顔面に心電図で使うようなパッチみたいなのを何個も貼りつけて顎を上下左右に動かす検査なんかをした。帰りがけ、靴を履いているときに先生に
「どうしてこの手術をすることを決めたのですか?」と訊かれた。
どうして、は「この年齢でどうして?」って意味だと察した私は
「このままで棺桶に入りたくはないからです」と答えた。
私はがん、多分がん。死ぬかもしれないから。けど自分ががんって疑いがあるということはこの時は話さなかった。
「はい、頑張りましょうね。私も頑張りますから」と先生。

結果、もちろん適用。早速矯正装置が口内に入った、が、これがめちゃ痛い。保険適用だから昔ながらのメタリックなやつね。目立つ目立つ……。目立つのは仕方ないにしても、装置が唇の裏や頬っぺたの裏に刺さりまくる痛みと、歯を物理的に動かす痛みのダブルパンチ。しかも食事は柔らかくて装置にくっつかないもの限定。装置がぶっ壊れたり外れたりすると非常に面倒くさい。すぐに矯正歯科に通わないといけないから。当然私の好物のソフトキャンディは×、ガムなんてもってのほか、煎餅ももちろんダメどころかホウレンソウなどの野菜も歯や装置に引っ掛かりやすくて歯磨き&手入れが大変だから×(虫歯を作ったら矯正を続けるのが難しくて治療が遅れてしまう)。なので基本、あまり嚙まないで済むような具入り、もしくは具無しのパスタや米が主食だったなぁ。おかげで太ってしまったんだけども(それまでは鶏むね肉とかが主食だった)、それが結果的に良かったことになるという(後述します)。

治療を進め、矯正歯科に3度くらい通った頃「こりゃほぼがんでしょう」ってことで病巣を削る手術をすることになった。採った組織を病理検査に出してがんかどうかはっきりさせるのも兼ねた手術。
はい、残念ながらというか予想してた通りがんでした。ステージ1だったのが幸いだったけれど、さらに悲しいことにこの手術じゃ病巣を取り切れなかった。もう一度同じ手術をしてワンチャン賭けるか、臓器丸ごと取ってしまう手術に踏み切るかの選択を迫られることになった。

長くなりそうなので、続く!