見出し画像

酔いどれ雑記 161 28歳


ネットのお遊びの心理テストみたいなものをやってみたら「あなたの精神年齢は28歳です」と出た。

28歳ーーものすごく辛いことも愉しいことも、すべてがあった。あの頃は良くも悪くも生きてるって実感があった。ああ、昨日書いたモンテネグロに行ったのも28歳の頃だったっけ。

28歳ーー1週間後にはウィーン行きだろうがサラエヴォ行きだろうがを自由に決められるような日常だった。望めば世界中のある程度どこでも行くことが出来た。

28歳ーー大学生をもう一度やり直した。現役で入った大学は母が私の借りた学費を使い込んだために退学になったから。でも大学に行こうと思った一番の理由は「悔しい!またチャレンジしてやる!」というような崇高な(?)精神からではなく、学生っていう身分が欲しかったから。当時は無職で(今もだが)、入国に当たってヴィザが必要な国に行くとき職業欄を「無職」にするとヴィザが下りないかも知れないと思ったのだーー結局、ヴィザが必要な国には行ったものの、無職でも特に問題のない国だったという。でも書きましたよ、堂々と「学生」だと。

28歳ーーあの頃はまだ希望に満ちていた。「40歳までには死ぬ」と中学生の頃人生の計画書に書いたものの、40歳までには欧州のすべての国に行き、その他行きたい国々も出来るだけ行く、行かれると思っていた。それから先も生きるなら惰性で生きる、40までに80年分の人生の分け前を享受するだろうと思ってたから。

40歳までに「生前葬」をしておきたかった。今まで行った好きな国をめぐり、まだ見ぬ行きたい国を訪れてーー本当はわたくしを愛していた人たちがわたくしの死後、わたくしの愛した風景を見て、酒でも飲んで私の思い出を語ってほしい。けれどそんな「資格」のある人はリアルではもはやだれ一人もいない。だからひとり生前葬がしたい。もう40をとうに過ぎてしまったけれど、さっさとそれを終えたいのだーーこの世に未練があるのはもう一度あの28歳を再現したいからというのが大きい。あの頃みたいに颯爽と一人や二人でパリやウィーンを歩いて、イェルサレムで祈りの声を聞きたい。