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酔いどれ雑記 218 lover with benefits

無償の愛だとか、見返りなしの関係って本当にあると思いますか?少々ずるいかも知れませんが、私の答えは「あってもなくてもどうだっていい」です。

高校の頃、同級生を好きになった話をいつぞやにしましたが(私は女子高に通っていたので、当然その人は女性です)、彼女に元々好意を持ってはいたけれども、私の中で彼女の存在が「面白い友達」以上になったのは彼女のこんな言葉がきっかけでした。

「私、あんたのこと大好きだけど、それはある意味あんたを利用してるってことだよ。あんたが面白い人じゃなければ私はこうしてあんたと一緒にいないよ」

こんなこと、生まれて初めて言われたのである意味衝撃的でしたーー私も同じようなことをずっと思っていたけれどそれがまさか彼女の口から出るとは!

「利用している」って部分に引っかかる方はきっといるかと思います。もう少しいい言葉はないのか、そしてそれでいいのかって。けれど私を感激させるには充分でしたし、どんなにきれいな上手い言葉を遣ったところでそれは「利用する」の別名です。搾取する、だと誰かが不本意な形で利用されていることになりますが、私は私で彼女を「利用」していたのですから問題はありません。

結局、彼女には振られてしまったのですがね。利用価値がなくなったからなのでしょう。

それから10年後くらい、私はパリに住むフランス人と関係を持つことになりました。彼は日本が大好きで日本語を一生懸命勉強していましたが、趣味嗜好の点では全然私とは合わない人でした。ある日彼は

「僕は君のことが大好きだけど、君が日本人だからって理由も大きい」
と言ってきたのです。

うんうん。私もあなたがパリに住んでなければまず会うこともなかった気がするからね。

残念ながら、高校の彼女の時のようにその言葉を聞いて余計愛おしくなったりはしませんでしたが......。

無償の愛だのなんだので結ばれていると考えている人より、ある意味ではお互いを「利用」していることを認めている間柄の方が誠実な気がします。これは私の超個人的な見解ですが、無償の愛だのなんだのは、長年一緒にいる間にその美点が消えて無くなったとしても過去にお互いを「利用」し、愛でていたという事実から生まれるような気がしてなりません。

ああ、あのままパリにいたらどうなっていただろう。あのままいたならば、そろそろ無償の愛が生まれている頃だろうか?