ゲームの『戦略性』を理解しよう

 『ゲームの戦略性についてだけに視野をぐっと絞って解像度を上げよう!』という記事です。

 戦略性が高いゲームの『戦略性』ってなんだろうか?
 『戦略性』が高いゲームを作るには何が必要だろうか?

 戦略性が高いゲームを作ってみたいと思いつつ、そのような根本的な部分について全然理解ができておらず……
 今更ながら自論が整理できてきたので紹介します。

 ※この記事はできるだけ普遍性を持つよう努めましたが、面白さとは主観のもとに成り立つものです。この記事がそれぞれの考え、解釈を発展させることを願っています。



前提

 (先に断っておくとこの前提は論理を組み立てるために必要なものです。前提に納得できないならブラウザバックしてもらって構いません。)

戦略性とは

 戦略性が高いゲームとは考えさせるゲームのことです。

 『選択の悩ましさを生むゲーム』とか、『最適解を探す体験を生むゲーム』と言い換えられます。
 ですから、最適解を探す体験を作り出せば戦略性を生むことができます。

人が行動をする条件

 人が行動をする際は2つの条件が必要です

  • 動機があること

  • 可能であること

 以上です。

悩ましさを生むために不可欠な要素

  1. 最適解を探す必要性がある

  2. 最適解を探すことができる

  3. 最適解を知らない

 この3つさえ抑えておけば戦略性が発生します(素晴らしいゲームになるかは別として)。

 逆に言えば、一つでも抜け落ちたら他がどれだけ良くてもそのゲームから戦略性は無くなります。

 それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.最適解を探す必要性がある

 これはわかりやすいですね。
 『最適解を見つけると嬉しいことが起きる!!』ということです。
 例えば……

  • 敵にダメージが入る

  • 味方にバフがかかる

  • コンボ・シナジーで強力に

  • 弱点属性を突いて威力アップ

 などなど……挙げたらキリがないですね。
 この例はRPGなどの戦闘内ですが、『勝ったら何が起きるか』というのも考えると良いですね。

  • お金、経験値がもらえる

  • 先に進める

 など。

 ただ、これだけでは弱いです。逆の発想も持っておきましょう。『最適解を見つけないと損する!!』という発想です。
 例えば……

  • 無抵抗でダメージを受けると死ぬ

  • 無抵抗でデバフを受けると負ける

  • 速く敵を倒さないとゲーム内マネーを奪われる

 などなど……
 前者よりも最適解を見つける必要性がより明確になるので積極的に使うと良いように思われます。

 たしかに必要な要素ですが、1つ注意するべき点があります。

 『プレイヤーのストレスを溜めさせすぎないこと』です。
 後者のやり方は難しくしてストレスをかけるやり方なので、

  • どれくらいの頻度や確率で損をするのか

  • 遊んでくれる人(ターゲット)はどのくらいのストレスまでなら耐えられるか

  • モチベーション管理ができているか

  • 失敗したときのストレスはどれくらいか

  • ストレスを解消するタイミングがあるか

 などを考えないとコントローラーをぶん投げられて「別のゲームやろ」と思われてしまいます。

2.最適解を探すことができる

 「最適解を探す体験をさせたいんだから当たり前じゃ……」と思うかもしれませんが、実はとても難しい部分です。
 これを達成するには複数の条件が必要です。いくつか思いつくのでそれぞれ説明しますね。

1.選択肢とその数は考えるのに適切な量か?

 例えばカードゲームで手札が5000兆枚あったら、「いや、最適解を探す気にならねぇ!!」となりますね。
 逆に手札が1枚しかなかったら「いや、考えるも何もねぇだろ!!」となりますね。
 極端な例ですが、選択肢それぞれの役割をプレイヤーがわかるようにはっきりさせる必要があるということです。

 アクションゲームでは時間的な圧が強いため、選択肢が少ないように見えても遊ぶ側からすると多すぎることがあり、特に選択肢を絞る必要があると感じます。

 例えばスプラトゥーンでは基本操作を4つに絞っていますが、どれも役割がはっきりしています。

  • メインウェポン→普通の攻撃

  • サブウェポン→牽制

  • スペシャルウェポン→突破口

  • イカ状態→移動、回復、潜伏、撤退

 イカ状態の役割だけ多いような気がしますが、対面を考えたときイカ状態の役割は「回復」「潜伏」「撤退」3つ。どれもリスクの低い行動だから役割が似ていて一つの選択肢にできると考えられたのです。

2.適切な量の情報を与えられているか?

 じゃんけんって戦略的な面白さはないと思うんですが、その要因の一つがこれです。
 次の手で何を出してくるのか全くわからない→適切な量の情報が与えられていない
 情報が多すぎても困ることはありますが、ターゲットによります。
 自分は将棋を遊んでみても情報が多すぎてほとんどなんにもわからんのですが、もちろんあれを好む人もいるわけです。

3.それは遊ぶ人にとってクリア可能か?

 こちらも"遊ぶ人"がどんな人なのかイメージしておく必要があります。


 アクションゲームなど、限られた時間で入力する必要があるゲームであればさらに配慮が必要になります。

4.遊ぶ人が考える時間があるか?

 「敵の行動を見てから反応しないと被弾する」+「予備動作が短い」+「毎回適切な行動が違う」 とかだったらまぁ反応できないよね〜って話です。
 (考える量)×(考える時間)≒(プレイヤーの能力)
 という関係ができているといいですね

5.遊ぶ人が考えたことを実行する難易度は適切か?

 これもそんなに話すことはないですね
 遊ぶ人がどんな人か考えましょうって話です。
 カービィシリーズにゴリゴリのコマンド入力を要求されるようになったら面白くないでしょう。


 ざっと話しましたが恐ろしいのは、なにか1つでも『最適解を考えられない原因』があると最適解を探す体験が無くなってしまう点です。
 気をつけましょう。

3.最適解を知らない

 本当は 2 の項目に含まれるのですが、重要なので別項目にしました。

 最適解を変動させることは駆け引きを生むだけでなく、飽きを防ぐ役割もあります。最適解を知っているのであれば悩ましさが生まれることもありませんからね。

 ということで、今から戦略性の高いゲームを作るにあたって最も難しく、大切な部分を説明しようとしているのですが……

 これに関してはだらねこさんが素晴らしい記事を書いてくれているので丸投げします。

 味方や敵、盤面を変化させていくことでちょっとの違いを作っていくという記事です。非常に参考になるのでおすすめです。

戦略性と面白さを結びつける

 ゲームは楽しませるためにあるわけですから、常に面白さと結びついていることが理想です。戦略性が高くても面白くないのなら本末転倒です。

 しばしば「『面白い』とは『感情が動くこと』だ」と言われます。私もこれに同意します。
 が、「じゃあ感情が動くゲームを作ろう」って言ってもわからないですよね。

 「面白い」という言葉は広い意味を持ち、曖昧です。使えるレベルにするにはどんなときに面白いと思うのかを分類し、解像度を上げる必要があります。

 例として戦略性に関わる面白さを3つ挙げます。(冒頭にも話しましたが面白さとは主観なのでぜひ自分で分類してみてほしいです。)

予想と納得

 不確実な未来を今ある情報から予測する。それに基づく行動をする。明確な成功/失敗が返ってくる。
 このようなサイクルはどうやら『面白い』らしいと考えています。
 選択肢の部分を作るためにリスク・リターンの考え方が用いられます。

攻略

 一方的に有利な状況を作り出す楽しさです。
 三すくみ、位置取り、立ち回り、などの面白さです。

非連続的な報酬

 予想がいい方向に外れる楽しさです。
 コンボ・シナジー、クリティカル、シールドブレイク、などの面白さです。


おわりに

 実を言うと自分はゲームデザインを深く考えてゲームを作っているほどえらい人間ではないのでこんな記事を書くのはおこがましいとも思います。
 しかし、この考えは誰かのアイデアを支えることができると考えました。
 この記事が少しでもアイデアを形にする手がかりになればと思っています。

 建設的な意見ならいつでも何でも大募集中です。ぜひコメントいただけると幸いです。
 (あとスキ、拡散、応援コメントも大募集中です。よろしくね)

おすすめ

 こちらもおなじみ だらねこさん です。
 実践的な内容で具体例が多くわかりやすいです。
 この話の意味をしっかり理解したいと思ってこの記事を書き始めました。

 知っている人も多いと思いますが、おすすめです。ゲームを作りたいと思っている人なら読んだほうが良いです。
 ゲームの核心に迫る良い記事でした。


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