見出し画像

「490円のワンピースと酸欠」2020年8月31日の日記

「税込500円」

1年ほど前、大学の近くに鎮座する古着屋チェーン店で見つけたワンピースの値札を前にして、私は大混乱していた。

周りを見れば同じような値札が無数に並んでいる。私はますます混乱した。   ド田舎から出てきて、メイク道具にちゃんと触ったのも大学の入学式前日だった私のなけなしのファッション知識は、値札を前に既に粉々に打ち砕かれた。    服って1900円が底値じゃなかったの?500円って靴下が3個くらい繋がったやつの値段じゃない?100g500円ってこと?なに?嘘?罠?

オシャレに慣れていない子供や田舎者を陥れる都会の卑劣な罠だと思い、ワンピースをひっくり返して真の値札を探したりした。めちゃくちゃ破れたりしてるのかな?とも思った。しかし、そのワンピースはどう見てもただのワンピースだったし、その値札には「税込500円」と書いてあった。

混乱しまくった後に、恐る恐るそのワンピースを試着してみた。

そのワンピースはかなりかわいかった。紺色の生地に、小さな白い花が全面に散らばったレトロな感じのワンピースだった。コンプレックスだった二の腕も腹も足も隠れるタイプだった。恐る恐るレジに通してみると、モニターにはなんと「500円」と表示された。値札は本物だったのだ。その時私は確信した。ここは田舎者を陥れる都会の卑劣な罠などではない。

むしろその逆である。オシャレに向いてない・慣れてないけど、服を買いまくって似合うかどうか試せる大富豪ではない「オシャレ初心者」に、ワンコイン〜1000円以内で良さげな服を買わせて練習させ、上達させ、何より「オシャレを楽しめる体」にさせるための修行の場なのだと。

安いから試着も気軽に出来て太ももが入らなくて試着室で泣くことも無いし、もの凄い色の服も500円ならいっか!!!て買える。外見とファッションコンプレックスのために買えなかったスカートとかワンピースも買える。すごい。なんというシステムが都会にはあるんだ。と私はいたく感動した。

結果的に、紺色に白い小さな花が散っている500円のワンピースはよそ行きでいつも着ている。デザインTシャツの店で買った、妹に「地獄みたいで良い」と言われたワンピースと並んで、初めて鏡の前に立つのが楽しくなる服の買い物だった。あのお店には本当に感謝している。

では、なぜ今その話を書いたかというと、今日、久々に大学に行く機会があり、もう1着ほどワンピースが欲しいなとその古着屋を覗いたからだ。

そこで友達に褒められて気が大きくなった私は、二の腕を覆うべき布がガッサー!と全部切り落とされているワンピースを試着してしまった。「これはやばいんじゃないか」と思ったが、古着屋のおかげでオシャレ力が向上した私は「買うだけ買ってみよう」と値札を見た。

「990円」

1年前の私だったら卒倒していた値段だったろうが、私は成長した。「500円じゃないのか」と思いさえした。色々考えが卑しくなっている気もする。とにかく試着を終えて、レジに通した。するとなんとモニターには「490円」と表示された。

はあ?

よく見ると、値札には「SALE 50%OFF」というシールが貼り付けてあった。 


なんで??


なんで??????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????



なんで・・・・?



大きな謎を抱えたまま、私は「490円」のワンピースを鞄に詰め、帰路についた。授業中、マスク越しに延々と声を出さなければいけなかったため、帰りの電車の中でも軽い酸欠で体は怠く、息苦しかった。

ただ、「なぜ1000円以下のものを半額にしなければいけないのか」     「なぜこのワンピースはワンコイン以下で売られることになってしまったのか」

ぼんやりとした頭で、そんなことを考え続けていた。


(今日は友達と久々に会えて授業も心配してたより楽しかったです。最寄りのタリーズの茶より前述のワンピースの方が安かったのがめちゃくちゃ怖くて書きました。マジで他意はないですいつも助かっています)


お疲れ様です。おやすみなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?