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私と都会と音楽と -レトロフューチャーに見る2つの都会-

先日、Go To トラベルの力を借りて久しぶりに東京に行ってきました。

初めて作ったCDアルバムを音系同人即売会、M3にて頒布するためです。Bandcampでデジタルリリースもしたので、ご興味ある方は是非覗いてみてください。
https://satorutakei.bandcamp.com/album/pianithm

これはその日の帰りの新幹線で、移りゆく夜の町々を眺めていたときふと思いついたことです。

アルバムの中にこんな曲が入っています。

昭和5,60年代を生きた人にはすごく聞き覚えのある感じの曲調だったのではないでしょうか。まぁとにかく80年代チックでレトロテイストな曲です。

当時のこういった曲群を紹介するときに使う言葉としてよく聞くのが「都会的」「洗練された」という言葉です。(↑がそう聞こえるかはまた別のお話…)ですが、今東京や大阪など本当に都会で生活している人には、自分の住んでいる街のような印象はあまり感じがしないかもしれません。

私は今まで関東圏に住んだことはありません。何度か東京を訪れたこともありましたが、遊ぶお金もなかったのでたいてい用事が終われば即帰宅していました。今回は1泊したこともあり、少し余裕をもって周りを見渡したり空気を感じたりすることができました。
・・・東京、なんだかゴミゴミしてますね。少なくとも先日の旅行で感じた印象は、先に出した曲や80年代特有のキラキラした音源に感じる「都会的」な雰囲気とは大分違ったものでした。

どうやら私の思う「都会的」は存在しない(あるいはかつて存在したのかもしれない)「都会のイメージ」であって、現実の都会を感じさせる空気とは乖離しているみたいです。所詮田舎者の思う「都会」への憧れということですね(トホホ

さて、ここのところ大衆、とりわけ若者文化において80年代への回帰路線やレトロフューチャリズムの機運が高まっています。当時を知らない世代がイメージするあの時代(あるいは当時から見た実現しなかった現代)へ思いを馳せ、その要素を現代に取り入れている訳です。これ、今現在存在しない空想の都市に向かうイメージという点で、先の田舎者から見た都会感に近いものを感じませんか?

音楽シーンにおいてレトロ路線が感じられる界隈としてはシンセウェイブやフューチャーファンク(ヴェイパーウェイヴも含めるべきでしょうか)、それからLo-fiヒップホップ、チルウェイヴ等といったものが上げられます。(他にもあったら是非教えてください)

ここからかなり主観的な話になるのですが、シンセウェイブやフューチャーファンクは、これまで述べてきた空想都市への憧憬やノスタルジーを感じさせるものが多くあります。
シンセウェイブはこういう感じ。これはとりわけSFチックかもしれません。

フューチャーファンクは権利的にグレーなものばかりですのでここに上げるのは控えておきます。ちなみに私のフューチャーファンクとの出会いは、何の因果か「BABYBABYの夢」をたまたま見つけたことでした。

一方でLo-fiヒップホップの類に感じるどこか退廃的なレトロ要素、こちらは今回の旅で感じた現実の都会の空気と近いものを感じました。このジャンルはChilledCowの配信が語るまでもないレベルで有名なのではないでしょうか。

シンセウェイブやフューチャーファンクとLo-fi系は同じレトロ路線で括られがちですが、そこにある視点は違うように思います。Lo-fi系は、今目の前にある世界を表現する手段としてあえて最先端(Hi-fi)でないサウンドにしている。一方前者はそこにない架空の都市への憧憬を、今風でない音で表現しているのです(それが一周まわって目新しさを感じさせる訳ですが)。両者の雰囲気の違いはそんな視点の違いから生まれてくるのではないかと感じました。

これらの「都会的」な雰囲気はときに「大人っぽい」と称されることもあるようです。しかし両者には「空想」と「現実」というベクトルの違いがあります。前者は、空想にベクトルが向いているという意味では、大人というよりどちらかというと子供的な目線に近く、そこに見える大人っぽさはむしろ「子供から見た大人の世界」に近い…のかもしれません。対して後者は実際の大人の視点から世界が表れているのではないでしょうか。

私個人としては前者のサウンドの方が好みです。まだまだ子供なんでしょうか…。現代社会を生きる上で現実をきちんと見る視点(Lo-fi的なものが見えてくる目?)はなくてはならないものですが、子供らしい憧憬に満ちた、振れ幅の大きい心も忘れたくないなと思います。


追記:この記事を書きながらいろいろ聞いていたらディスコ、ハウスとヒップホップのノリのちがい(ノリノリとヨレヨレ?)からこのような感覚の差異が生じるのかもしれないとも感じました。
さらに言えば、記事中「空想」への憧憬として括ったシンセウェイブとフューチャーファンクも、過去に向かうもの(郷愁路線)と過去から見た存在しない未来に向かうもの(SF路線)として区別できるかもしれません(そもそもこれらのジャンルはサウンドや制作過程が大分異なるのでひと括りにするのは難しかったかもしれませんね)。

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