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大相撲夏場所展望

 大相撲夏場所は14日に初日を迎える。そこで、私なりの夏場所の展望を幕内、十両、幕下上位(15枚目以内)に分けて記していきたい。あくまで私なりの展望であるため、諸士各々考えは都度あるだろうが、ご容赦願いたい。

幕内


 今場所最大の注目点は、関脇・霧馬山の大関取りだろう。
 先場所悲願の初優勝を成し遂げたモンゴル出身の27歳は、直近2場所で23勝をあげている。今場所10勝以上あげれば、三役で直近3場所33勝の規定に到達する。角界の新たなスターが求められる中、混戦の大関昇進争いをいの一番に制することができるだろうか。
 対抗馬となりうるのは、復活を期す横綱・照ノ富士だろう。
 昨年秋場所の途中休場後、膝の手術等もあり3場所連続全休となっていた横綱。だが、今場所は師匠の伊勢ヶ濱親方が出場を明言しており、久しぶりに豪快で力強い相撲が見られそうだ。
 場所前に行われた横綱審議委員会の総見では、大栄翔等を相手に8勝2敗と仕上がりは順調そう。昨年夏場所以来、丸1年ぶりの優勝も可能性は充分ありそうだ。
 他にも、先場所最後まで優勝争いを引っ張った大栄翔、新関脇の若元春、若手のホープ・豊昇龍と、今場所の関脇4人は全員先場所二桁の白星をあげている。ハイレベルな優勝争いを期待したいところだ。
 一方、気がかりなのは、カド番の大関・貴景勝。先場所は膝を痛めて休場となったが、今場所どこまで状態が戻っているだろうか。膝の怪我は力士生命に響きかねないが、カド番では休むことも許されない。まずは勝ち越しを目指すのが妥当な線だろうか。
 平幕では、大関経験者の朝乃山が9場所ぶりに幕内に戻ってきた。逸ノ城の引退により、幕内下位で彼に対抗できそうな力士は見当たらない。序盤から白星を重ねて、終盤で役力士と対決するような展開に持ち込んでほしいところだ。
 幕内は全体を見渡しても、やはり大関昇進をかけた霧馬山に耳目が集まる。ただ、照ノ富士や朝乃山の復帰もあり、これまでの場所ほど楽な道のりではない。まずは、平常心で臨むこと、そして平幕力士に星を落とさないことが重要となりそうだ。

十両


 十両は、逸ノ城と朝乃山の幕内復帰(逸ノ城は場所前に引退)により、本命不在の場所となりそうだ。
 その中で注目したいのは筆頭の2人。豪ノ山と湘南乃海だ。
 武隈部屋の豪ノ山は、学生時代から実績を残していた押し相撲の力士。先場所は、逸ノ城に唯一の黒星をつけるなどの活躍で、6枚目で11勝4敗の好成績を残した。しかし、幕内の枠の問題もあり筆頭に留まることに。
 ここ3場所は9勝、9勝、11勝と徐々に力をつけている。押し相撲は一度勢いに乗ると止まらなくなる傾向にあり、この勢いのまま新入幕を掴み取りたい。
 高田川部屋の湘南乃海は、190cm超えの長身が魅力の大型力士。十両昇進までは苦労したが、新十両となった先々場所で12勝をあげると、先場所も3枚目で9勝と新入幕も狙える星をあげた。
 筆頭止まりとなった今場所は、新入幕の絶好のチャンス。まだ25歳と将来性も豊かな大型力士は、幕内に上がれば人気も高まるはずだ。
 また、新十両の2人も楽しみな存在。
 藤島部屋の藤青雲は、明治大学を卒業した後、実業団を経て角界入り。新型コロナウイルスの影響で実業団の大会が中止となり、夢を追って入門した25歳が、夢を1つ叶えた。
 明治大学からは2000年夏場所の武雄山以来23年ぶりの関取誕生。私事ではあるが、大学の後輩にあたるだけに、活躍に期待したいところだ。
 時津風部屋の時疾風は、小牛田農林高校、東京農業大学を経て角界入り。約4年かけて関取の地位にたどり着いた。
 宮城県からは1995年の五条楼以来28年ぶりの関取誕生とあり、地元も盛り上がっているようだ。東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県は、時疾風自身も中学時代に震災を経験している。復興の象徴的な存在になってほしいところだ。
 場所前は、大学の先輩であり大関経験者の正代の胸も借りたもよう。得意の左四つを磨いて技有りの相撲を見せてほしい。

幕下上位


 幕下上位最注目は、10枚目格付け出しデビューとなる大の里だ。
 海洋高校から日本体育大学に進学すると、1年次にいきなり国体個人戦と学生相撲選手権を制覇。その後も3年次に全日本相撲選手権、4年次には国体個人戦、ワールドゲームズ無差別級、全日本相撲選手権を制し、史上最強のアマチュア横綱とも称された。
 大の里の四股名は、大正時代の大関・大ノ里に由来しており、師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)の四股名候補の1つでもあった。落合に続く、1場所での十両昇進も充分ありそうな大器のデビューを楽しみに待ちたい。
 また、先場所昇進が臨める成績でありながら、筆頭止まりとなった紫雷、川副、ウクライナの大器・獅子、先場所幕下優勝の龍王、めきめきと力をつけている颯富士、向中野、学生相撲出身者の神崎、高橋、風賢央、先場所三段目優勝で初の幕下となる東俊隆など、今場所も幕下上位は実力者がひしめき合っている。
 この中から十両昇進争いを制するのは誰になるだろうか。今場所も目が離せない。

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