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うたうしじみ~しじみを救うためにとった魔女の驚くべき行動~

関東に住んでいた頃、地域文庫の活動に参加していました。文庫の本を貸し出したり、おはなし会を開いたり。

文庫の活動の中で、”すばなし”も学びました。
文庫を担っているのは、文庫活動30年以上のキャリアを持つ方々で、ほとんどの方がおはなしの名手。
本当に勉強になりました。
浴びるように聞かせていただいたおはなしの中で、衝撃と言っていいほど心を打たれたものが、いくつかあります。

その1つが、この『うたうしじみ』(作/小島なおみ)です。もう「ズキューン」と胸を撃ち抜かれた気持ちでしたよ。

魔法使いのおばあさんが、夕食に食べようとしじみを買ってきました。
水を張ったボールに入れて、かつお節を削っていると、プチプチと音がする。

「のぞいて見ると、うっすらと口をあけて、しじみたちが、いびきをかいてねています。そしてときどき小さなからだを、満足そうに動かしています。」

魔法使いは、安心しきってねているしじみがなんだかかわいそうで、食べられなくなってしまいます。
そして、しじみは翌日食べることにしました。
でも、次の日も食べられない。
その晩、しじみたちが起きてさわぎ出します。

ここはどこですか?海ですか?河ですか?
魔法使いが「ここは海からも河からも、うんとはなれたところですよ」と答えると、
しじみたちは、ワーッとあぶくをたくさんだして、泣きはじめました。

「これこれ、泣くんじゃないよ。
おうちにつれていってあげるから、泣くんじゃない」

昔はほうきに乗ってどこへでも飛んで行かれた魔法使いでしたが、今ではほうきもボロボロ。
そこで魔法使いは、100匹以上いるしじみたちに、電車の切符を買ってあげるため、募金活動を始めます…。

募金ですよ、募金! しじみの1匹1匹に切符を買ってあげるために、募金です! すごい、絶対に考えつかない!

このお話のとりこになってしまった私は、語り手だった先輩に頼んで、早速絵本を借りました。”すばなし”で聞いていても、最高におもしろかったけれど、その絵は私の想像をはるかに超えて、本当にステキでした。

作者は児島なおみさん。
アメリカでの生活が長く、最初の絵本もアメリカで出版されました。
だからなんですね。
魔法使いとみそ汁の組み合わせが、なんとも言えない雰囲気を出しています。

関西弁を話す飼い猫のトラジが、またたまらなくいい!
口は悪いが根は優しいトラジのファンになってしまうこと、間違いなしです。


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