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国立奥多摩美術館館長の他の美術館に行ってきた!(Vol.14)東京オペラシティアートギャラリー『Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎』

他の美術館に行ってきた!(Vol.14)

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東京オペラシティアートギャラリー
『Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎』
会期:2023年1月18日~3月26日
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2023年1月27日(金)曇り。新国立劇場やNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)、さまざまなオフィスなどが入る新宿区の文化複合施設「東京オペラシティビル」。その中で美術を紹介する東京オペラシティアートギャラリーというスペースで開催中の泉太郎さんの展覧会に行ってきた。アートギャラリーといっても、その空間の広さや仕立ては美術館に相当する。泉さんは、僕の勝手な判断ではあるが、今の日本で面白い現代美術作家5人紹介してほしい、という話になったら、その中に確実に入ってくる作家だと思う。現代美術が持つ、何とも言語化しにくいが、何か気になって見入ってしまう、そんなあり様を、巧妙に作り出せる作家だと思う。実は、今回の展覧会開催にあたり、僕の会社「奥多摩美術研究所」に、泉さんから作品の制作について依頼を受け、一緒に動いていた。だから、今回は、この展覧会を純粋なただのお客さんという感じでは見れなくなっていた。泉さんが作品を形にしていく過程は、なかなか紆余曲折の連続だ。作品を作るということは判断の連続。その判断するときの選択肢はいつも無数にあって、その中から1つを選ぶときには、可能性を切り捨てていかなければならない。そうしなければ形を持たせていくことができない。しかし、泉さんの中には常にその選択肢が可能性として残っていて、パズルのピースを動かし続けながら、言語化できない最適解を模索しているという感じだった。それは、作家としてはとても素晴らしいことだと思うが、それを形にしていく業者としては、とても大変な作業だった。今回もなんとか形にして納めたのだが、展覧会会場で、その泉さんがこだわった部分をお客さんがどのくらい感じられるのかを想像して見ていた。一緒に作ったからこそ知っている、見えにくい数多くのこだわりポイント。僕が関わった部分以外にもそんな所が無数にあるのだろう。ぜひそれらを、感度をあげて探してみてほしい。きっとさまざまな部分やキーワードがリンクし、あなただけの不思議な物語が立ち上がってくると思う。【☆8.9】(佐塚真啓)
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「西の風新聞」2023年2月9日(1688号)掲載


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