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国立奥多摩美術館館長の他の美術館に行ってきた!(Vol.23)Village Hinohara『根石院展 石を立てる』





国立奥多摩美術館館長の
他の美術館に行ってきた!(Vol.23)

Village Hinohara
『根石院展 石を立てる』
会期:2024年5月3日〜7月7日

2024年5月26日(金)晴れ。桧原村にある「Village Hinohara」というコワーキングスペースの一角で開催されている久保田弘成さんの展覧会に行ってきた。このコラムでは、美術館で行われている展覧会に行ってきて、それをおすすめしてきたのだが、そうすると必然的に都心の美術館の紹介が多くなってきていた。なので今回からは少し間口を広げて、西多摩地域の美術の館(やかた)も時々紹介していくことにしようと思う。車で檜原村に向かった。久保田さんは車を回す作品が有名で、最近は石を拾って立てているという噂を聞いていた。世の中を見渡してみても、美術においても、コンセプトを言葉で組み立てて、そこから形を成していく物事が多くなってきていると感じている。上手く説明は出来ないんだけど言葉で考える前の、直観的に感じる面白さ。それが美術の担える領域だとも思う。久保田さんの作品は、どれもが言葉での説明がバカバカしくなってしまうほど、簡潔で強烈な思いつきの力がみなぎっていてワクワクする。Village Hinoharaに着いて中に入ると、スッキリとしたお洒落な空間の中に、久保田さんが六年間、拾って立て続けてきた「根石」と名付けられた千個以上の石が天井まで並べられている。石はどこにでも転がっていて、誰にでも拾うことが出来る。石を拾ってきて、立てて固定して、展示して、なんでそれが美術・作品になるのか、と思う人もいるのかもしれない。しかし僕は、日々の生活の中で、なにかを選ぶことは、なにかを作ることと同じだと思っている。河原に行き、無数に転がる石の中から、自分の心動く一つを選ぶ久保田さんのそんな日々の姿を想像する。今回の展覧会では、「根石」の販売も行われている。一つ買おうと決めてじっくり探し出すと、自分の中で美意識や価値観と向かい合う問答が始まる。とても興味深い体験だった。(佐塚)

「西の風新聞」第1758号掲載

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