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国立奥多摩美術館館長の他の美術館に行ってきた!(Vol.07)国立西洋美術館『調和にむかって』

他の美術館に行ってきた!(Vol.07)


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国立西洋美術館 『調和にむかって』
会期:2022年4月9日~2022年9月19日
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2022年5月11日(水)晴れ。上野駅を出てすぐ、上野動物園に向かう道中の右手側にある国立西洋美術館に行ってきた。ここは、第二次世界大戦後フランス政府に敵国資産として差し押さえられていた松方幸次郎が収集した美術作品の寄贈返還を受けるために1959年に開館した美術館。建物は20世紀を代表する建築家のル・コルビュジエが設計し、2016年には世界文化遺産に登録された。今回はコルビュジエの絵画作品の展覧会が行われているという事で行ってみた。しかしその前に、常設展示されている多くの西洋絵画を改めてじっくり見てみた。最近、額について考えていた。絵画にとって額とは何なのか。どんな意味や効果があるのか。そんな事を考えていたため、額ばかりに目が行ってしまった。この額じゃなくて、こんな額に入っていたらどういう風に見えるか、額が無かったらどう見えるかと勝手に想像していた。額はこちらの世界から、別の世界を覗く窓枠である。絵の中の世界と、こちらの世界を隔てる機能を額は持っている。そして、展示されていた絵画作品の多くが、過剰とも思えるほど立派な額の中に収まっていた。そこには、絵の中の世界と現実世界を明確に隔てようという強い意思を感じた。なぜ、ここまで強く隔てる意味があるのか疑問に思った。そんな時に、絵の中の世界は動かないが、今この自分が立っている現実世界は、日々刻々と変化しているという思いに至り、この作品が発表された当時の世界にタイムスリップしてみた。そこには、映画もテレビもYouTubeも写真さえも無い。そんな中で、ここに展示されている1枚の絵画を見ることは、1本の映画を見るような、もしくはもっと鮮明でリアルな何か、ワクワクドキドキするイリュージョンを覗く窓だったのではないか。それを作りだす装置として額は今思う以上に機能していたのではないか。結局、額の事ばかり考えていて、コルビュジエの絵画を見るころには疲れてしまっていた。また改めて見に行こう。
【☆7.8】(佐塚真啓)
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「西の風新聞」2022年5月26日(1651号)掲載


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