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編集・ライター養成講座でいただいた質問42問の回答をアップします

毎回恒例です。

先週の編集・ライター養成講座では、100人弱の受講生のかたにお話させていただき、いま、その時いただいた質問に答え終わったところです。

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このタイミングで、今回ではなく、半年前の講座でお戻しした質問に対する回答をアップしますー(今期の方々にも参考にしていただきたいため)。


【取材、ライティングに関する質問】

●媒体を比較するための細かいルール(ポイント)を教えてください。(2名)
→想定読者(大体の場合、媒体資料があるのでそれを見るか聞くかします)、媒体のコンセプト(思想)、人気のある記事、寄稿している作家さんやコラムニストさんの顔ぶれ などでしょうか。

●佐藤さんにとって「面白い文章」とはどんな文でしょうか?
→思考を攪拌してくれる文章。面白いと思った文章(書籍)ほど、本を読んでいる時間よりも、思考している時間が長くて、内容を全然覚えていないです(笑)。言い換えると、コネクティングドットがある文章、でしょうか。
私にとって「素晴らしい本とは何か」というテーマで書いたnoteがこちらになります。もしよろしければ。
★→書評って一体なんだろう。書評コラムを書くときに考えていること


●今まで言われたダメ出しで、心に残っているダメ出しは何ですか?
→今回、この質問が一番面白かったです。
・原稿がすらすら読みやすすぎて最後まで一気に読んでしまう。書籍の場合、もう少し、手をとめて「?」と思わせる箇所がないとダメだ。読みにくい部分を作りなさい。
・構成案を考える時は、「分類」するな。「分類」すると、本はつまらなくなる。もっと、読者の感情のうねりを作る順番に並べなさい。
・プロが読んでも、素人が読んでも面白い、ダブルミーニングを目指しなさい。
・書籍にアンダーラインを引こうと思う、「強い言葉」を持ちなさい(著者として)。
・実は、文章だけで説明されている方がわかりやすい(写真やイラストがある方が、よくわからない)という読者はたくさんいる。

●文章を上達させるために、多く読みたいが、どんな方向性で文章を探す方が良いですか。書き写しは効果ありますか?
→基本的に「自分が書くのだったら、どうするだろう」という視点を持たずに読んでもあまり文章の上達にはつながらないと思います。つまり、読者目線で読むのではなく、書き手目線で読むということが大事だと思います。なので、自分が一度書いたことがある媒体、書きたい媒体の文章を読むのがいいと思います。そうすると、おのずと「こう書けばいいのか」とか「この文章は読みにくい」とか、意識的に読めると思います。
書き写しは、どうでしょうね……。効率でいうと悪いと思いますが、効果があるかどうかは人それぞれだと思うので、一度やってみられるといいのではないでしょうか。

●著者と仲良くするコツを教えていただきたいです
●著者さんとコミュニケーションをとるときのポイントを教えてください
→「仲良く」なろうとは思っていません。その方の人生や仕事にリスペクトをもって誠実に理解したいと思って仕事をする感じです。(具体的には、その方の著作を読むとか、プロフィールをしっかり調べるとか、そういうことです)。
仲良くなるというよりは、信頼していただき、原稿を任せられる相手だと思っていただけるように努力するというイメージです。
ちなみに、取材進行中は、ライターから著者さんに直接連絡するのはタブーだと私は思っています。必ず編集者さんを通してやりとりします。Facebookなどでも、できれば仕事が完了するまでつながらないようにします(最近は編集者さんがFacebookグループを作ってやりとりすることもあるのですが、そうでない限りは自分から連絡はとりません)。
ライターと著者さんが仲良くなって、著者さんが直接ライターに何かものを言ってくるようになると、編集者さんが意図した方向に進まないトラブルになるケースがあるので、編集さんを飛ばして連絡しないことには、すごく気をつけています。著者さんから直接連絡がきても、決定権は編集さんにあるので、編集さんにご回答いただきますね、みたいなやりとりをして、個人的な連絡は避けます。
もし、別件で著者さんと取材以外で会ってしまうことがあれば(パーティとか……)、必ず編集さんにご報告します。

●新しい分野の知識は、どうやってインプットしていますか?(書籍を読む? セミナー?など)
→時間が限られている時は、その分野についてまとまっている雑誌の特集を読むことが多いかもしれないです。(例えば「東洋経済」や「ダイヤモンド」のAI特集、とか)
あとは、その分野に近いところに友人がいれば、15分、20分くらい時間をもらって、電話やLINEなどでおしゃべりして、相場観を聞くこともします。時間があれば、その分野の書籍を5、6冊斜め読み。

●「自分の書ける力」と「求められるレベル」の見極め。この肌感覚の言語化をもうちょっと詳しく。
→ここ、おっしゃる通り、ちゃんと言語化できていなかったですよね。改めて考えてみると、
「書ける力」と「求められるレベル」の問題ではなく、自分が仕事相手の方に対して、人として対等に話をできると思った時は、引き受けできるタイミングなのかも、と思いました。
つまり、「書ける力」と「求められるレベル」の問題ではなく、コミュニケーションを臆さずに取れるかどうか、が大事なのかもれないと思いました。コミュニケーションがちゃんととれれば、どんな文章でも(適切なスケジュールがあれば)書けるのではないかと思っています。


●どうやったら速く書けるようになりますか?
→文章のゴールが明確に見えていること。(そこにいたるまでの構成が作れること)。
ただ、この1、2年、私は、できるだけ速く書かないようにしています。あるミリオン作家さんから「解像度が低いから、速く書けるんだよ」と言われたことがありまして、その通りだなあと思ったからです。
書くのが遅くなってから、書くのが楽しくなりました。作業ではなく、書くことで思考できるようになったからです。それまでは、思考という趣味を書くことでやりたいと思っていたのに、実はできていなかったんでしょうね。今こそこの仕事を絶対に手ばなしたくないと思っています。

●完璧を追求して予想以上に時間がかかった→〆切を守れずといった状況にはどう対応しますか? 編集者からはやはり仕事こなくなりますか?
→完璧な原稿が何か(その媒体でどんな原稿が求められているか)に対する答えは、こちらにあるわけではなく、先方(編集者さん)にあると思っています。なので、自分一人で完璧な原稿を目指すことはないです。短い原稿だったら、2パターン納品して、どっちがいいですか? と聞くこともあります。
書籍にかんしては、第1稿を納品してから編集さんや著者さんと、さらに精度を上げるものだと思っています。むしろ、フィードバックもらって、チューニング(できれば追加取材も)させてくださいと伝える方が多いです。第1稿で7〜8割くらいの完成度をめざしています。書籍の場合は、だいたい実際の〆切の1ヶ月くらい前に、「テスト原稿を出してください(5〜10ページ分)」と言われるので、そこでのチューニングも大事にしています。
仕事がこなくなるかどうかは、わからないです。ただ、私が編集者の場合は、「迷ったら、すぐに相談してください。抱え込まないでください」と伝えます。連絡なしで締め切りを破ったライターさんとは、二度と仕事しません(といっても、そういうライターさんは過去に2人しかいませんでした)。

●テニスのファーストサービスにあたる練習とは何ですか?
→えっと、これは、テニスのファーストサービスにあたる(ライターとしての)練習とは何かという意味だったでしょうか?
テニスのファーストサービスを、「こちらから行うことを確約されている唯一の攻撃」の象徴だとすると、「取材(の仕方の精度をあげる)」かなあと思います。

●取材先で「あー、悪印象になってしまったな」という時はどうしますか? 挽回しますか?
→うーん、どうかな……。何によって悪印象になったかによりますよね。例えば遅刻なら謝るしかないし、原稿が下手だと言われたら修正します。
ただ、うまく言えないのですが、「相手からどう思われているか」みたいなことは、必要以上に気にしないようにしています。というのも、それ、どんなに想像しても結局のところ、わからないからです。それよりは、相手が何かを思った時に、率直に言いやすい人でいようということだけ気にしています。
感情感染効果というのがあって、こちらが気まずいなあと思って接していると、相手も気まずいなあと思う現象があるんですよね。だから、できるだけご機嫌で、できるだけフラットでいるようにします。この記事に、ちょっと書いたことがひょっとしたら参考になるかもです。
★→くよくよする人はフリーランスに向いてる。


【仕事環境やスケジュールに関しての質問】

●複数の仕事を同時にこなす方法はありますか?
●月に1冊ペースで書くコツは何ですか? 何冊か同時進行ですか?
→最低でも5冊は同時進行になります。今はいろんな段階の書籍を、11冊進行しています。とにかく、見える化。スケジュールを俯瞰できる時間割を作ってます。

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A・B・C・D……の縦軸は、実際には進行中の書籍のタイトルが入っています。
横軸は、その日何に何時間かかる予定か、という目算。黒で予定を書き、その日が終わったら実際にやった時間を赤で修正していきます。
一番右の欄は、その日執筆や打ち合わせ、取材に割いた合計時間を書いています。(メールの返信などの細かい仕事は計測していません)

●モチベーションのキープの仕方を教えてください。(3名)
→「仕事に対して」でいうと、モチベーションが下がったことは一度もないです。一番好きなことを仕事にしているので、基本、働きたくないなあとか思ったことは一度もないです(寝不足で眠いなあ……とかは、時々ありますが)。
ただ、原稿書くのが面倒だなあと思うことはあって(これは超頻繁にある)、そういう時は、取材の音源を聞きます。音源を聞いていると、わー、このめっちゃ面白い話、はやく、世に出さなきゃって思います。


●20年間のうち、文章を書きたくない時、書けなくなった時はありましたか?
→書けなくなるということは、ないです。
ライターは、自分の頭の中から何かを生み出しているわけではなく(ゼロからイチを生み出しているのではなく)、誰かの取材をもとに書くので、「ネタが枯渇する」とか「書きたいことがなくなる」という状況は存在しないです。作家性を持って書く自著やブログなどは、書きたいことが生まれた時のみ、書いています

●どんな環境で書いていますか? PC、場所など、全体的に教えていただければ……
●今は家でライティングされているのでしょうか? 家だと集中できないってことはありませんか?
→家では、20インチiMacか、mac book12インチを20インチのモニターにつないで書いています。書籍やインタビュー原稿の場合、テープ起こしと原稿のファイルを並べて書きたいので、大きいディスプレイがいいなと思います。12インチで作業すると、作業効率が3割くらい落ちる気がします。自宅のリビング、夫の仕事場(時々そこのフリースペースで原稿を書いています)、北海道の実家にモニターを常備してあります。
家で集中できない件ですが、たしかに、家にいると洗濯したり掃除したりしちゃうこともありますよね。私は、超ロングスリーパーでして、だいたい毎日1〜2時間くらいお昼寝もします。というわけで、基本、だらだらやってます。そういうのもあって、「この30分で書けた文字数をはかる」というのをやっています。その30分間はトイレ以外いかない感じで。
また、取材の移動の関係で、たまに、コワーキングスペースで書くときもありますが、そういう時も基本、ディスプレイがあるところに行きます。(宣伝会議さんからもほど近い、ビジネスエアポートグループのフリー会員です)。カフェなどで書くときは、細切れの仕事をすることが多いです。メールの返信とか。
あと、これは最近はじめたばかりですが、コラムや自分のブログに関しては、手書きで書いて、それをiphoneで音声入力して納品というのも、やっています。なぜ手書きで書くようになったかという話は、noteで書きました。よかったらご覧ください。
★→簡単に言語化しないプライドを持つ。小野美由紀さんのクリエイティブ・ライティング講座と手書きの文章


●1日、1ヶ月のスケジュールが知りたいです。
●たくさんの本を読んでいますが、1日のスケジュールってどんなものですか?
1日は、だいたい以下のパターンです
【基本】朝6時半起床→朝食作って(私は食べません、家族分だけ)→7時くらいから執筆→(途中1〜2時間お昼寝)→17時くらいに仕事終える→子ども帰宅→夕食→22時くらいに就寝
【取材や打ち合わせがある日】朝6時半起床→朝食作って→取材場所に移動(その近くのカフェなどで書く)→取材→帰宅→22時くらいに就寝
取材や打ち合わせは、1日にかためます(1日に4本とか)。できるだけ、週のうち2日以上は家を出る用事がないようにしています。
【超忙しい時】 朝4時起床→原稿→朝食作って→17時くらいまで書く→夕食→24時くらいに寝る。
【オフの日】朝から夕方までゲームしたり、漫画読んだりしてます。
本を読むのは、だいたいお風呂の中か移動中、布団の中が多いです。だいたい21時にはお布団に入っているので、そこから1時間は読んでいる気がします。読書時間はトータルで、1日1〜2時間程度でしょうか。
1ヶ月のスケジュールでいうと、基本は月末に書籍の締め切りが多いです。でも、あまり月単位での時間割は考えたことがないですね。

●ご結婚されてお子様もいらっしゃるとのことですが、両立はどうされていますか?
●お子さん、ご家庭があるようですが、書く時間、仕事の時間はどのように作っていますか?
●出産されているとのことですが、乳幼児を抱えて取材の時間などはどのように作りましたか?
→保育園に入る前の11ヶ月は週に4回くらいシッターさんに来てもらっていました。産んだ年は200万円くらい、シッターさんにお支払いしていた気がします。でも、原稿料は産んだ年も1000万円あったので、差し引きすれば黒字なので、別に高いとは思いませんでした。(もちろん、はやく復帰することをお勧めするわけじゃないです。私はあまり乳幼児のお世話に萌えるタイプじゃなかったので)。
自分の時給以下でお願いできることは、躊躇なく人にお願いします。このあたりは、このnoteに書きました。よかったら読んでくださいませ。
★→プラマイゼロと、ゼロは違う。フリーランスの育休事情



保育園時代は、保育園に20時まで預けていました。それ以降もシッターさんにお願いすることが多かったです。土日に仕事する時もシッターさん。
今はもう小学2年生なので、子どもが家にいても特に仕事に問題はないので、自分が自宅にいる日は、学童にもいかせず帰宅させています(息子は息子で一人遊びしています)。むしろ、時々おしゃべりできるので、気分転換になりますし、今は息子と話している時間が一番思考できるので、ここぞとばかり味わいつくしています。今年は学童の父母会の会長もやってますし、土日は子どもの少年団の試合も多いので、ママさんたちとおしゃべりしてることも多いです。自分の知らなかった世界で、こっちも面白いですよ。
基本的に、仕事と育児を両立しようとはまったく考えていません。この辺の感覚は今までうまく説明できたことがなかったのですが、この方の文章を読んで、ああ、これこれ! ってなりました。よろしければぜひ。
★→「仕事と家庭の両立なんて、無理に目指さないほうがいい」(石角 友愛)
(現代ビジネス)


【仕事の獲得、企画に関する質問】
●企画を横取りされる、例えば提案した企画を出版社が別の人をアサインするリスクをどう考えますか?
→そのリスクは、基本ないと思っています。19年間やってきて、企画を横取りされたことは一度もないです。
書籍に関しては、自分が持ち込んだ企画は、企画を作るための著者さんへの事前取材が終わっているものばかりですので(著者さんの代わりに持ち込んでいる)、おろされる可能性はないです。
ちなみに、企画とアイデアは違うと私は思っています。
例えば、石原さとみさんでこんな本はどうでしょう?みたいなアイデアがあるとします。この場合、石原さとみさんのスケジュールが抑えられることに、一番の価値があります。自分がその部分ができないのであれば、それはただのアイデアで、企画の持ち込みでも何でもありません。単なるアイデアを話すことには、ビジネスとしての価値はないと思っています。それが実行できることまで保証できてはじめて、企画だと思っています。

●告知をちゃんとするということはどういうことですか?
→SNSなどで「書きました。読んでください」を伝えること。

●自分からコネクションを作ること、関係を継続することが苦手ですが、モチベーションを保つ方法はありますか?
→自分から人に働きかけること(営業含む)は、得意な人の方が少ないんじゃないでしょうか。得意か苦手かというより、苦手でもやる価値があると思うからやるだけではないかなと思っています。
企画を見ていただき、けんもほろろに扱われることは、私も別に得意じゃないですよ(笑)。それでも出したい企画なのかどうか、というだけの話かと思います。

●カラーセラピーの本は、結局どちらの案が採用になりましたか?
→企画会議を通ったのは「これが最後の自分探し」でしたが、最終的なタイトルは「解決法は自分が知っている。12色セラピーで悩みがすっと消える」になりました。
(講義中お伝え忘れましたが、この企画書は、部外秘でお願いします)

【キャリアに関する質問】

●現在、編集ともライターとも全く関係ない仕事をしているただの本好きの40才です。20年以上つとめている会社をいきなり辞める勇気もないので、今の仕事を続けながらライターをしたいと思っています。ゆみさんだったらどういう戦略を立てられますか?
→ライターになりたいか、ブロガーや作家になりたいかでずいぶん違いますが、私が今、ライターの修行をするのであれば、まずはテープ起こしの仕事を受けるかなあと思いました。テープ起こしすれば、一般的には見ることのできない取材の仕方と、それがどう原稿になったかが、セットが見られるので、一番勉強になると思います。実際にそのテープ起こしをもとに、自分で原稿を書いてみて、プロとの違いを確認するのもいいと思います。
会社員経験は、ライターにとっては強いですよ。長く売れてるライターさんは、最初からライターという人より、会社員経験のある人が多いです。私の友人にも、30代、40代になってから、キャリアカウンセラー、国税局職員、テレビ局職員などから、ライターになった人がいます。3人ともあっというまに超売れっ子さんになられています。社会人としての相場観は、取材にすごく役立ちますし、重宝されます。頑張ってくださいませ!!

●なぜHTMLなど、コードについて学ぼうと思ったのですか?
→①美容師さんたちから、ホームページの運用について質問されることが増えたから。
②自分でメディアを持ちたいと思ったから(インタビューサイトを作ろうと思ったから)
③オウンドの編集長になったから(メディアをディレクションしなくてはいけなくなり、そのためにはエンジニアさんと最低限の共通言語を持たなくてはいけないと感じたため)

●ライター&エディターになりたいと思ったのはいつか? と理由を教えてください。
→なんとなく、文章を書く人になりたいなあと思ったのは、中学生の頃でしょうか。理由は新井素子さんの小説を読んで感動して。ただ、自分には書きたい物語がないなあと思っていた時に、作家ではなく、ライターという「人に取材して書く」仕事があることを知り、それがいいかもって思いました。
なんとなく「書く」を中心に人生を設計できたら、と思っていましたが、元々の趣味である「考える」ことを、そのまま職業にできる面でもライターはいいかもと思って、大学生くらいの時にはライターになりたいと思っていました。(テレビ制作会社でもドキュメンタリーを撮ってそれを書籍化する人になりたいと思っていました→当時、私が入社した会社にいらした是枝裕和さんがそういう働き方をしていたため)
編集者になりたいと思ったことは、一度もなかったです(というか、編集者が何をやる仕事なのかは、業界に入るまでわかっていませんでした)。編集もやるようになったのは、なりゆきです。


●今の仕事の一番良いところはどこですか?
→誰と仕事をするか、いつ仕事をするかを自分で決められるところ。つまり、自由ということでしょうか。

●仕事のために良い人でいたいと思いますが、誰とでも仲良くというのは自分と差があります。人からの評価を気にして疲れることもありますが、良い人になるコツはありますか?
→良い人であろうとすることと、誰かと仲良くなることは別の話だと思っています。私にとって良い人であるということは、誠実に仕事をすること(嘘をつかない、約束を守る、不満がある場合は陰口を言わずに本人に直接に伝えるなど)であって、仕事において必要な話がちゃんとできる関係性を築くことができれば、とくにプライベートで仲良くなる必要はないと思います(なってもいいと思いますが)。
人の評価は、気にします。仕事についてどう評価されているかを知らないことには、次につながらないので、気にしなくてはならないと思っています。
ただ、気にするのは仕事の評価(何が不足しているか、納品物はクオリティに達しているか)だけです。どう思われているか、みたいなことはあまり探らないかな。会社員の方よりも、「1年後もこの人と一緒に仕事しなきゃいけないから、今は我慢しなきゃ」みたいなところがないのがフリーランスの魅力だと感じます。
この件に関してnoteを書いたことがあるので(前出)、よろしければどうぞー。
★→くよくよする人はフリーランスに向いてる。


●仕事を断る時に気をつけていることは?
→嘘の理由で断らないこと。
スケジュールNGの場合は、すごくお引き受けしたかったんですが、スケジュールがどうしてもとれず無念です。またぜひお声かけください、とお伝え。
内容に興味がない場合は、このテーマはあまり興味がないことを、お伝えします。スケジュールを理由に断っちゃうと、ずっとオファーがきちゃって、その都度嘘をつかなきゃいけないのが苦しいので。
ギャランティが自分で決めた基準に達していない場合は、そのようにお伝えします。ケースバイケースですが、過去の経験でいうと、8割方、こちらが提示した条件で、折り合ってくださいます。
ちなみに、原稿料はそのつど交渉しますが、美容業界でのセミナーなど、年間何十回もあるセミナーは、どのルートから頼まれても、大手企業からでも、個人からでも、一律金額でお引き受けしています。多く提示されても下げてもらいますし、低く提示された場合は「一律でお引き受けしていますので」とお断りします。これは、交渉にかかる時間がもったいないのと心理的負担をなくすためです。

【編集業や編集者さんに関しての質問】

●企画・編集をする時と、ライターをするときの、責任や気持ちの違いはありますか?
→仕事内容が違うだけで、気持ちの違いはないです。責任に関しては、版元や媒体の編集者さんには、部数(PV)に対する責任が生じているのだと思いますが、私は自分がオウンドの編集長をやっていた時以外は、数値目標を持たされたことはないです。

●ライターの立場からみた「良い編集者」とは?
→表現することを通して、大きな夢を実現しようとしている人。スタッフの心理的安全性を確保してくれる編集者さん(なんでも相談できる)。

【プライベート関係の質問】
●お聞きしていいかわかりませんが、離婚→再婚と書かれていたのが気になりました。
→そうなんですよ。50歳の夫と別れて25歳の夫と再婚しました。人生、何があるかわかりませんね。SEO対策のこともありますし、みなさん、ビジネスネームは慎重に考えましょう。


【そのほか】

●弟子は募集していますか?
→今はしていません。理由は講座でお話ししたとおりです。テープ起こしや下調べなどをお手伝いしていただくことはよくあります。他に本業を持っている方に、そのつど都合を聴いてお願いしています。(年間5〜6人くらいにお願いしています)

●心が折れたときにどう復活しましたか?
→心が折れるということについて考えてみたのですが、うまく想像できなかったので、多分、ぽきっと折れたことはないんじゃないかと思います。
なんといいますか、フリーランスって常にいろんな仕事を抱えているので、どれかで失敗しても、他の仕事があったりして、1ヶ月ずっとうまくいかない、ずっとどん底、みたいな状況はあまりない気がします。(折れそうになる前に他の仕事のことを考えなきゃいけなくなるって気がします)。これも、先ほどの、noteが参考になるかもです。
★→くよくよする人はフリーランスに向いてる。


●カメラもできるライターは助かりますよね。どの程度できますか?(自分のサイトの時はカメラマンを使っていますか?)
→まったくできないです。自分のサイト(インタビューサイト)の時もプロに依頼しています。私は雑誌出身なので、カメラマンさんの仕事は、誰にでもできるものじゃない特殊なプロの仕事と思っているふしがあるかもです。でも、もちろん、できるライターさんは素晴らしいと思います。仕事も増えると思います。私は、カメラはできませんが、DVDつきのムックなどの、動画編集の仕事はよく引き受けていました。いま、一番身に付けたい技術は写真よりもイラストです。

●ライターや編集で一番うれしかったことは何ですか?
→どうでしょう。これという1点は思いつきませんでした。
(取材時にはわかったつもりになっていた)著者さんが言わんとしていることについて、実際に書きながら著者さんの思考を追体験して「ほんとうに」理解できたときは、うれしいです。

●佐藤さんが今、あたためている夢は何ですか?
→夢といいますか、目標ですが、時間と場所に縛られないライター活動ができるようになりたいと思っています。南の島のビーチで原稿書いたり、この本はイタリアで書きたいなと思ったらイタリアで書いたり、暑い時期は北海道で書いたり、みたいなことです。

●あまり授業に関係ないですが、素朴な疑問です。編集担当や有名なライターさんって、どうしてあんなに偉そうなんでしょうか……。
→この質問もすごく面白かったです。そうですか、みなさん、偉そうでしたか……(笑)。こういう気づきに対して、考えるのが私は大好きです。素敵な質問をありがとうございます。
ところで、私は偉そうな編集さんや有名ライターさんに出会ったことはほぼないです。(念の為の確認ですが、偉い人に見えるというフラットな意味ではなく、威張っている人に見えるというネガティブな意味で使ってらっしゃいますよね?)割合でいうと、1割以下だと感じます。という自分の実感値を交えて立てた仮説を書いてみますね。
①もし質問者さんが、講座やセミナーで話す方たちを「偉そう」と思ったのであれば、それは講師という役割(自分が得た知識を伝えるティーチャーとしての役割)がそうさせているのではないかという仮説。
編集者のインタビュー記事などでも同様です。基本、成功者の極意を聞くことになるので。ただし、読者の方に、取材相手を「偉そう」と思わせることは、普通は意図していないでしょう。だから、「偉そう」と感じさせてしまうのは、(意図的でない限り)原稿のクオリティが低いのだと思います。
②もし質問者さんが、直接プライベートで会った編集さんたちがたいてい偉そうだったとしたら、質問者さんには、そういう人を呼びよせやすい資質があるか、そういう態度を取らせやすい資質がある。
③質問者さんご自身が、自分の意見をはっきり言う人を「偉そう」と感じる体質なのかも、という仮説。(つまり、質問者さんは偉そうと思う行為を、私は偉そうだとは思わないという仮説)
あと、いくつか仮説を思いつきましたが、長くなりそうなので、ここでは割愛しますね。

(さいごに)

たくさんの質問をありがとうございました。

ライターの仕事の核は、書くことではなく、聞くこと、だと私は思っています。
何を書くかも大事ですが、何を問うかのほうが10倍くらい大事だと思っています。

このような質問をいただき、私自身もいろいろ振り返るきかっけになりました。感謝しています。
少しでも皆さんのお役に立てば嬉しいです。

ちなみに、この質問への回答の執筆にかかった時間は、4時間27分です(レコーディング)。
講義を聞いてくださった方がたは、私がなぜ、このようなことをしているのか、きっと想像がつくのではないかと思います。
書いて生き残っていくことは、原稿がうまいことだけではないと思っているからです。

私にとって、皆さんはライバルではありません。
それは、私が皆さんよりも先輩だからとか、優れているからとかではなく、書いて生きていこうと決めた人たちは多分、助け合うことはあれど、足を引っ張り合うことはないと思っているからです。

講義の冒頭でお話しましたが、私は、惜しみなく自分の気づきを後輩に伝えてくれる先輩がたに育てていただきました。なので、聞かれたことには、常にタブーなく、できるだけ真摯にお答えできればと思います。

一緒に、書いて、生きていきましょう。

んでは、また。どこかでお目にかかれますように。

新刊が発売になりました。ライター業と著者業の違いについては、また近々書きたいと思います。



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