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今年書いた書評コラム、54冊一気振り返り。年末の読書のお供になりましたら


毎週水曜日に連載させていただいている、朝日新聞「telling,」の「読書という贅沢」。書評のようで書評はあまりしない、コラムなのですが、この一年に読んで書いた本を一気にご紹介します。

コラムを書いた時には気づかなかったこととか、コラムを書いていた時の話とかも書き添えてみました。
年末年始の読書のお供にしていただけましたら。


1月の書籍テーマは「目標」

【001『夢の叶え方を知っていますか?』森博嗣】

森博嗣さんからスタートした2019年。森博嗣さんは、私が最も好きな作家さんの一人で、とくにエッセイは、細々よく読んでいます。一度ファンレターを出したときに、「その摩擦が世界に立てている理由です」みたいなお返事をもらい、感動したことがある。
この本の本文中にある、あなたの夢は自分が「見たい夢」か。それとも人に「見せたい夢」か。にドキっとする。自分の夢を見たい。


【002『やらない理由』カレー沢薫】

このコラム、今、読み返すまで、内容全く覚えていなかったけれど、結構大事なことを書いている。おちゃらけているようで、実は書いていることはすごく大事なことだ。
いやでもマジな話で、私のライター講座は「健康に健全にまっとうに週末はお酒を飲みながら稼ごう」が裏コンセプトなのだけれど、正直、ライターを続ける上で一番大事なことじゃないかと思ってる。表コンセプトにしようかな。


【003『ファクトフルネス』ハンス・ロスリング】

震災と福島と自分のことは、いつか書かなきゃいけないと思っていた。出産後、私がはじめて持ち込みした書籍の企画も、震災復興支援の本だった。(藤沢烈さん『社会のために働く』・講談社)『FACT FULNESS』では、感想を書くときに、自分の経験を添えて書いてねと書かれていたので、素直にかけたなあと思います。
死にゆく父とともに、最後の著作を執筆した子どもたちの気持ちを、いま、考えています。


2月の書籍テーマは「女であること」


【004『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ】

いやあ、これは、2019年ほんとに話題になりましたね。この本以降、韓国の女性著者さんの本が一気に大量翻訳された一年だったように思います。今読み返して思うのは、もう少し書けばよかったということ。この当時、たしか文字数が1500くらいで納めてくださいって言われていたんですよね。今は3000字近く書いています。いろんな意味で、今年を代表する一冊だった。


【005『愛がなんだ』角田光代】

これはたしか、当時の編集長の推し本だったような気がする。なかなかに痛い本でして、恋愛渦中真っ只中だと、返り血必至です。
この頃、大切な人が恋愛をきっかけに心を壊していき、ずっとそばにいたのに何もできなかったことが苦しくて苦しくて仕方なかったから、彼のことも考えながら書いてたな。もう会えなくなっちゃったけど生きていてほしい。
ここにも書いているけれど、私は、角田さんの本では「くまちゃん」が好き。なんというか、不平等感がなくていいなあと思って。いや、恋愛なんて、本当は、好きになったもん勝ちなんだけどね。


【006『吉田豪と15人の女たち』吉田豪】

今これを読み返すと、そういえば、このあと後藤真希さんはいろいろ大変だったんだよなー。でもこのインタビュー読んでいたから、「ああ、っぽい感じで素敵だな」としか思わなかったんだな、とか思い出す。
このコラム、書き出しがひどい(笑)
好きな書き手さんはいっぱいいるのだけれど、一番泣いたり感動しちゃうのは自分が書いた原稿で、それは多分、共感のポイントが私と一番近いからだと思う(そりゃ、そうだ)。
だって(笑) どんな自意識。


【007『妻のトリセツ』黒川伊保子】

「非常によくおモテになるイケメン」シリーズ第一弾。私の文章読んでないとおもってたんだけど、これに関しては、本人にバレました。奥さんにはバレてないと思う。多分。
このコラムは一瞬で書いた原稿だと記憶しています。その後、『夫のトリセツ』も出ましたよね。こっちも売れているそうですが、夫、取扱説明書を読んでまで取り扱おうと思えない自分をいま反省しました(口だけ)。


3月の書籍テーマは「生きるか死ぬか」


【008『もしすべてのことに意味があるなら』鈴木美穂】

過去に何度か取材させてもらったことのある、鈴木美穂さんの処女作を選書。ちょうど半年前に彼女の結婚式に出たばかりで、その時の感動を思い出してしまい、うるっとしながら書きました。今、彼女はご主人とともに、世界一周旅行に旅立っています。とても楽しそう。


【009『一切なりゆき』樹木希林】

これ、書評を読んでいただけると、とくにこの本をおすすめして”いない”ことがわかるでしょうか。ただ、むしろどうしてあまり面白く感じないんだろうと思考し、この本を通して旅した場所は面白い発見があった場所でした。この感じは、noteにこのあと書いたのですが、なんとそれを、内田可哉子さんが読んでくださり、するどいですね、と、コメントくださったのが嬉しかったです。
この書評を書いたときに見つけたことも、私にとってはプチ発見でして、そりゃそういうこと結構いろんな場所で書かれているけれど、自分で気づくのってまた違うなあと思ったんだよな。という目線でいうと、この本は私にいろんな気づきを与えてくれた本だと感じます。
しかし今、えげつないほど樹木希林さんの本だらけですね……。

↑そのときのnoteがこちら。


【010『傷口から人生』小野美由紀】

日本に、作家の小野美由紀さんという方がいらっしゃること。この方の存在と作品を知れたことは、2019年の僥倖だったなあと感じます。近く芥川賞(直木賞?)を獲られる作家さんなのではないかな。とにかく表現がカラフルで、つぶつぶしているな、というのが私の感想。
ご本人とも、今年は何度かご一緒させていただき、私が小野さんのライティング講座に行き、小野さんが私のワークショップに来てくださいました。小野さんのレポート素敵なので、ぜひご覧ください。

私のレポートのほうはこちら


【011『私とは何か』平野啓一郎】

この本に書かれているところは、いまでも21世紀最大の発明だと思っている。研究者ではなく、作家も「発明」をできるということに気づいたのも、興奮したな。
このときのまんざらでもない編集さんには、つい先日、2人めのお子さんが生まれました。私が書籍ライターになってから、もっとも無駄話を一緒にしている編集者さんです。いつか、彼から執筆依頼こないかなあと思っているんだけど、くる気配がない。精進しよう。
ちょうどこの頃、この連載を続けるかやめるか悩んでいた問題に終止符をうち(体力的にきつくて)、やっぱりしっかり続けようと思うようになって、で、気持ちも新たに書くようになったのがこのあたりから。


4月の書籍テーマは「捨てる」


【012『こじらせない離婚』原口未緒】

この本は、私が企画持ち込み&ライティングをさせていただいた本です。自分が企画した本の中では、もっとも「自分が読みたかった本」と言えるかもしれない。離婚の苦しさは、別離の苦しさではなくて、自信貯金喪失の苦しさなんだなーって、書きながら改めて思った。この本、長く売れていて、この時バツ3だった著者の未緒先生は、バツ4になっていました。先日先生のホームページを見たらそのプロフィールの無双感が半端なかった。
30歳 結婚
33歳 離婚
34歳 結婚
35歳 離婚
36歳 結婚
37歳 離婚
40歳 妊娠・事実婚
41歳 出産
44歳 事実婚解消 現在、1児のシングルマザー

女たるもの、こうでありたい(違


【013『自己肯定感の教科書』中島輝】

この本に限らず、自己肯定感という言葉は、今年の一大ブームだった気がします。最近ではファッション誌でも自己肯定感特集が組まれているなど。「私、自己肯定感が低いから……」が、免罪符ワードになっていることは気になっています。私自身の最新著作『女は、髪と、生きていく』は、企画当時は自己肯定感をあげるがキーワードだったんですが、書籍が出るタイミングを考えて、原稿から自己肯定感という言葉をほとんど削りました。この言葉とこの言葉を取り巻くetcはこれからも注意深く観察していきたいと思います。
先日、ある著者さんが、「自己肯定感を持ちたいのか、自己を肯定したいのか」と書かれていて、そこには示唆があるなあと感じました。


【014『春にして君を離れ』アガサ・クリスティ】

これは鴻上尚史さんのお悩み相談コラムでおすすめされていた本。これは、ちょっとこの時に書いたことと違うことを、今は思っている。近く再読するつもり。
ちなみに、私はテレビ制作会社のAD時代、鴻上尚史さんの弟さんと長くペアを組ませていただいていた。テレビの現場では、結婚される時に結婚おめでとうVTRを作るのがディレクターデビューのひとつの登竜門だったりするのですが、贅沢にも第三舞台の役者さんにご協力いただいて、VTR作らせてもらったことを思い出しました。鴻上さん、お元気ですか?


【015『天才はあきらめた』山里亮太】

山里さんのことは、順番でいうとおかしいのだけれど、ももクロのライブを観るようになってから知って「素敵な人だなあ」と思っていました。そしてバカリズムさんとのトークを通してその才能の深さにおののくという感じで。
この回は、私も結構身を切って書いた気がする。ちょっと黒いものを吐けたような気がする。


GW特別バージョン 読書本7選


【016『本の読み方 スロー・リーディングの実践』平野啓一郎】
【017『読書の価値』森博嗣】
【018『読書する人だけがたどり着ける場所』齋藤孝】
【019『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子】
【020『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(西岡壱誠山里亮太】
【021『読書という荒野』見城徹】
【022『裏・読書』手塚マキ】

自分で選書しておきながらなんだけど、選書するのがいっぱいいっぱいで(たしかこの2倍くらいの本は読んだ気がする)、紹介は少し雑です。やはりこの中では見城さんの文章が圧巻で、ぶっささる感じ。
花田さんとは、某媒体で対談をさせていただいたのだけれど、わけあってお蔵に入りました。楽しい方でしたよー。


5月の書籍テーマは「美」


【023『働くおっぱい』紗倉まな】

この頃、AV男優の一徹さんの書籍を担当させていただいたいて、来る日も来る日もAVを観ていたのですが、もう、圧倒的存在感があったし、本当に可愛くて可愛くてエロかったのが紗倉まなさん。
このコラムを書いた1週間後くらいに、たまたま一徹さんとの対談に同席させていただく機会があったんですが、もう、会議室に入ってきた瞬間からいいにおいがした。そして信じられないくらいいい人だった。私の取材の後、これまたたまたま、この書評コラムの担当編集さんだった人がインタビューだったらしいんだけど、彼女ももう一瞬で惚れてて、私と彼女は「まなちゃん可愛かったよ可愛かったよ、ちょう可愛かったよ」というメッセをやりとりしておりました。


【024『この世でいちばん美しいのはだれ?』神崎恵】

神崎恵さんの本を読むと、肌がうるおう感じがします(気のせい)。なんか何もしてないのにいい女になったような気がするんですよね。私、神崎さん、大好き。ちょうどこの頃「女らしさ」という言葉を使った原稿がNGになったり、「女」を表現することにセンシティブになっていたので、この本に勇気をもらいました。


【025『私がオバさんになったよ』ジェーン・スー】

みっちりぎっちり詰まっていて、読み込んで感想を自分内会議するまでに結構時間がかかった記憶。ちなみに、月に4冊もしくは5冊書くにあたって、ざっと、7〜8冊くらいは読んでその中から本を選ぶのだけれど、この5月の連載テーマ「美」は、読みたい本が多すぎて、ただただ読書ばかりしていた気がする。


【026『きりこについて』西加奈子】

これは、かつて私の担当をしてくださっていて、いま朝日新聞の「かがみよかがみ」の編集長をされている伊藤あかりさんの絶賛オススメ本。あかりんとは、本を読むたびメッセでやりとりしていて、面白い本についても語るし、これどうなのと思った本についても語るし(こっちのほうが盛り上がる)、めっちゃ素敵なパートナーでした。
で、そんなあかりんの人生を変えた一冊だというので、読んでみた次第です。これはいい旅をさせてもらった本。


6月の書籍テーマは「怒り」


【027『友だち幻想 人と人の<つながり>を考える』菅野仁】

いまなにか思い出を書こうとして、本の内容を何一つ覚えていないことに気づいた。読んでいるときにいろいろ思考が旅した本ほど、内容は覚えていないってこと、よくあります。


【028『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』中村恒子】

これは、当時メンがヘラっていたメンにオススメした本。なんというか、こういうまあるい本って、いいなあと思う。どんな編集さんがつくってらっしゃるのかな。こういう円熟した文章も書けるようになりたい。本文にも書いたけれど、これを書かれたライターさんの本も好きです。


【029『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健】

今年、読んでよかった本、ベスト5に入るのがコレ。めちゃんこ付箋と書き込みだらけになり、その付箋のまま夫に渡し、最終的には、私のライター講座にきてくださった講座生さんに付箋のまま渡した本になります。ボロッボロになるくらい読み込み書き込みした。
「あー、アドラーって、なんか私に似てる」と発言して、物議をかもしました。


7月の書籍テーマは「大人の女」

【030『ぼくは勉強ができない』山田詠美】

学生時代の私のバイブル。当時付き合っていた彼に、この本が好きって渡したら、なんか逆に傷ついたと言われたことを、いま思い出しました。何がダメだったのだろう。いや、ダメか。
これを書いたあと、私のまわりの女子の間では、桃子さん派か、秀美くんのママ派かみたいな話が盛り上がった。私は秀美くんのママ派だよ。
これを読んでくださった五百田さんが山田詠美さんの何十年ぶりかのトークイベントにお誘いくださり、生山田詠美さんにお目にかかれたのもいい思い出です。声が色っぽかった。
山田詠美さんの文章は子宮にくるんだよな。官能小説を読んだあとのような気分になる。


【031『エロスのお作法』壇蜜】

もしも女を2つに分けたら、もう最初の2分割で確実に私とは反対側の星に住んでいらっしゃると思うのが、壇蜜さんと神崎恵さん。わりと本気で好きだし、こういう女性になりたいのですが、こういうのって、ないものねだりなのかもしれないです。
もし生まれ変わったら、こういう女性になりたいです。あと、100回生まれ変わるなら、99回まで女がいいですといってたけど、最近、男にもなってみたい


【032『トラペジウム』高山一実】

この本について書いていたとき、友人たちと盛り上がったのが、「決して推薦していない帯の書き方について」でした。みなまでいうな。


【033『ブスの自信の持ち方』山崎ナオコーラ】

この本のコラムはちょっと消化不良。今考えるともう少し切れる切り口があった気がする。と、思ったのは、自分の書籍『女は、髪と、生きていく』を書いたあとのこと。
この回に限らず、この書評コラム、実は、2パターン書いたり、書き終わったあとにめっちゃ修正させてもらったりすることが多いのだけれど(すみませんすみませんすみません)、多分、その本について考える日数が1日長くなるとその24時間分の思考が、24時間前の自分を否定するのだろうなと感じています。
なのでどんなに締め切り前に用意しても結局前日に書き直してしまう(言い訳


【034『顔に降りかかる雨』桐野夏生】

本文のとおりなのだけれど、ある素敵な女性に導かれるようにして読んだ本。私、好きな人が好きな本を食べるように舐めるように読むのが好き。


8月の書籍テーマは「自信」

【035『M 愛すべき人がいて』小松成美】

この書評コラムは、私の中で、今年のひとつの分岐点だったなと思う。というのも、それまで私、怒りをモチベーションにして原稿を書かない、というか、怒ったまま書かないということをマイルールにしていたのだけれど。
はじめて、「めっちゃ頭にきた!」という感情に身を任せて書いた文章です。これはよく行く池尻のお店で、ワインあおりながら、ケータイで一気に書いた。PVについては聞いてないけれど、多分、今年のコラムの中では一番読んでもらえたのではないかと思います。これを書けたことで、何か、私の中でちょっと、書くことに対する意識が変わったんですよね。


【036『自分史上最高にかわいく写る シンデレラ・フォトレッスン』渕上真由】

これはたった一人の人を想定して書いたのだけれど、残念ながらその人には届かなかったです。


【037『夢、死ね!』中川淳一郎】

この本は、あおったタイトルほど、変な感じでもネガティブな感じでもなくて、書いてあることはとても納得のいくことばかりだった。私もかなり近しいことを考えていると思うのだけれど、こういう表現で伝える方法もあるのだなーと勉強になった一冊。山田詠美さんのレコメンで読みました。


9月の書籍テーマは「結婚と出産」

【038『それでも、母になる』徳瑠里香】

わりとすごいことカミングアウトしたねと言われたのですが、書いているときには意外と痛みが伴っていなくて、私にとっては過去のことになっているんだなということを思いました。闘病中と聞いているのだけれど、元夫、元気だろうか。
この本に出てくるもろずみはるかさんと一緒に原稿を書いているときに書き上げました。


【039『夫のちんぽが入らない』こだま】

今年、このあたりの記憶があまりない。8月と9月は何の罰ゲーム? というような、地獄のような日々だったな。


【040『妻は他人 だから夫婦は面白い』さわぐちけいすけ】

この人の本は、このあと立て続けに読んだ。夫婦だけではなくて、私、あらゆる人間関係の理想がこんな感じであればいいのになーって思う。もっともっとフラットに立ちたい。本文にも書いたのだけれれど、装丁のイラストがちょっと怖いんだよな……。あとからじわじわきます。


【041『ピュア』小野美由紀】

今年2冊目の小野美由紀さん。私にとって2019年に出会えて最も影響を受けた人かもしれないです。小野さんの文章は血と精液の匂いがする。私にはとうてい到達できない領域にいる人だけれど、でも、あっち方向に山頂があるというのがわかって、その高さがわかるというのは、素晴らしいことだと思う。つい先日もご飯をご一緒させていただいたのだけれど、高級店で声をひそめてする色っぽい話にどぎまぎしました。


10月の書籍テーマは「◯◯な秋」

【042『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延】

この本とこの書評も私にとっては思い出深いやつ。今年の渾身を3本をあげてと言われたら、これと、「M」と「いつものご飯」。カツセマサヒコさんにバレたのは想定外だったけれど、カツセさん、文章だけじゃなくて本人もほんと色っぽかったんですよ。なんですかね、あの色気。
この本の担当編集者の今野さんが作る本は大好きで、いつも大事に読んでいる。今野さんは元アスリートで、会話をするときの例えがよくスポーツになる。あと、aikoで例えると、とかになる。
今野さんのこの本が大ヒットしたことも、自分のことのように嬉しいし、大好きな人が作った本を、こうやって自分の腹に落とせたことも私としたはすごくよかった。
↓この2冊も今野さんの担当本。


【043『蜜蜂と遠雷』(恩田陸】

目黒の駅前のカフェで朝日新聞の4人の編集さんに取り囲まれ、「ところでさとゆみさん、締め切りを守っていただくことは可能でしょうか? 隔週連載にしましょうか?」と詰められたあとの一発目がこちら。映画を観に行ってから書いたため、「これから(なるべく締め切りに間に合うように)頑張ります」と言った舌の根乾かぬうちに締め切りを破るなど。


【044『16歳の語り部』雁部那由多、津田穂乃果、相澤朱音、佐藤敏郎】

これは締め切りの前日に本を差し替えさせてもらって書いた文章。これも私の中では思い出深い文章で、体を投げ出すように書いた。書いたあとに、同じ区域に住むママ友には読んでもらいたくない感じがして、拡散を迷ったやつです。


【045『こんな雨の日に』是枝裕和】

これは、書いたあとにいろんな友人から、「さとゆみ、大丈夫?」「あんたこういう芸風じゃないでしょ」と連絡がきたやつで、みなさんに心配をかけてしまってごめんなさい。もう中学生が書いたラブレターを朝日新聞のスペース使って公開してしまったようなものでして、私の一番こじれている部分がこじれたまま昇華されずにダダ漏れしただけの文章でした。やり直せるなら一番書き直したいコラムがこれかもしれない。
実はこの数週間後、是枝さんから連絡がきて、15年ぶりくらいにお会いすることができた。「いつも読んでるよ。BKAKって面白いね」と言われて、もうあれだ。これが穴があったら入りたいというやつだと思った。「好きすぎてキモくないですか?」と聞いたら「キモくないからこれからも書いてよ」と言われたので、もう、これからも公開ラブレター爆撃し続けます。こんどはもっとちゃんと昇華されたものを。


【046『三体』 劉 慈欣】

これ、最後から2つめの章で、次元の展開についていけなくなって、うっかり脱落しそうになりました。英語が読めるようになりたいと、生まれてはじめて思った。続きはよ。
私、SFはほとんど読まないのだけれど、SFを読んで得られる感情や真理みたいなものは、私がいつも手に入れたいと思っているものと同じなんだなと思いました。それはなんというか、座標軸を持つという感じ。座標軸の拡大、なのかな。そんなことを考えていたら、昨日ある方がそのことを、ものすごく的確な言葉で表現してくれて撃ち抜かれた。そうか、私たちはそのために読むし書くし働くのかもしれない。来年はもう少しSF読もうと思いました。おすすめあったら教えてください。


11月の書籍テーマは「ひとりの夜に」

【047『人間』又吉直樹】

これは、ちょっと痛かったですね。流血するほどではなかったけれど、痛いまま書いたので、うっすら血のにおいがします。この本で流血できないところが、私の弱いところでもあるし健全で鈍感なところでもある。メンがヘラったメンがこの書評を読んで『人間』を読もうと思うというから、その前に君は『真実』を読んだほうがいいと伝えて、深夜0時超えてから一緒にTSUTAYAまで買いに行ったのも良き思い出。


【048『楽しくなければ仕事じゃない』干場弓子】

大好きな編集さんが大好きな編集さんを著者さんに迎えて作られた、なんというか、私てきには、いろんな意味でバイブルみたいな本だった。見出しの立て方、強調、レイアウト、装丁、それからタイトルと英語タイトル、構成、なにもかもが勉強になりすぎて本書き込みだらけ。


【049『かか』宇佐見りん】

これは一気読みからの一気書き。最近の文藝はとても気になる。


【050『完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込み』若林正恭】

年末超きついスケジュールで原稿書いているときに、バカリズムさんの結婚の報道が出て、私がバカリズムさんを好きなことを知っている友人たちから一斉に「さとゆみ! バカリズムさんが!」という通知が鳴り止まなかったのが私の今年のクリスマスでした。息も絶え絶えのライフがゼロになった。
バカリズムさんといって第一想起されるのが私であることを誇りに思うと同時に、福山さんや二宮さんの結婚報道で会社に行けなくなる人の気持ちがわかりました。でもねむちゃんは好き。
この若林さんの本を選書したとき、バカリズムさんの本とどちらにするか迷ったんですよね。でもなんか、バカリズムさんは好きすぎて書けなかった……。
結果、若林さんのことを書くには遅れたし、バカリズムさんのことを書いておけば結婚のときにきっと私のコラム再掲してもらえたんだろうなと思ったら、なんか、悔しい。バカリズムさん、若林さん、そして山里さん、お幸せに……。


12月の書籍テーマは「大掃除」


【051『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵】

大掃除だからこんまりさんという安易な選書。このときもう一度読み直して、過去に書いた自分の原稿、ひょっとしてめっちゃ間違ったんじゃないかと思って、冷や汗出て、吐いた。


【052『女は、髪と、生きていく』佐藤友美】

自著です。書いた時以上に、いま、この本、いい本だなあと思っています。感想がちょっと尋常ない感じです。深く刺さっている感じがとてもするので、来年は広く届けることを頑張ります。
渾身で書きました。よろしければ、年末年始、読んでみてくださいませ。もしいまいちでしたら連絡ください。つつしんで買い取りさせていただきます。


【053『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』寿木けい】

これは、めっちゃ気持ちよく、一気に書いた文章。今年書いたコラムの中で多分、一番短い時間でかけたと思う。すごく読んでもらえたようで、いろんな人からサチコの次は何になったんですか? と聞かれます。


【054『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ】

今年最後のtellingは、用意していた原稿が、事情があって前日にボツになるというプチ事件があり、急遽この本に差し替え翌朝には納品するというtoo hardな年末となりました。いったん納品したあとも、数時間の間にものすっごく細かく直しを入れさせてもらって、最初に納品した原稿は決定稿とは全然違うものになっています。編集さんにめっちゃ無理言ってギリギリまで粘らせてもらいました。ありがとうございました。
この本は2020年のどこかで紹介したいなと思っていたのだけれど、トラブルのおかげで結果、今年読み切れて考えきれて良かったなあと思いました。本文にも書いたけれど、私の文章に対する態度もこうでありたいなということが明確に定まったし、それは多分これから生きるときの態度とイコールだと思ったから。
今年はとても厳しい一年だったけれど、最終的にあれもそれもいろんなものをふわっと抱きとめて世界を好きになり世界とやわらかく繋がりたいというのが、この本の読後感であり、私の2019年の読後感でした。この本に出会えてよかったです。


2019年、『本という贅沢』を読んでくださったみなさん、ありがとうございました。このコラムは私が本を読んで旅をした場所についてメモした旅行記みたいなコラムです。
これまで、誰がよんでくださっているのか、面白がってもらえているのか、全然わからないまま書き続けてきたのですが、最近「読んでますよ」とか「買いました」と言われることが増えて、旅の友達が増えたような嬉しいきもちでいます。

そういえば、この間、私にこの連載を書かせてくれるきっかけになった、あかりんと「かがみよかがみ」でトークイベントをさせていただいたのですが、

「さとゆみさんの原稿は、どんなに疲れていて、1文字も読みたくないという時ですら、すらすら読める」という紹介をしてくれて、多分、一年前だったらなかなかぐさっときていたのだと思うけれど、今となっては、嬉しい感想です。

読んでくださってありがとうございます。よろしければ、また遊びにきてください。

さとゆみ



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