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読むことの方が書くことよりもずっとクリエイティブだと思う。だから。

北海道にいます。寒い。寒いな、寒いなと思っているときに、なんというか、いちばんやわらかいところに、すとんと落ちてきた文章。

友人が『女は、髪と、生きていく』にあるワークを、何日もかけてやってくれて、さらに18日かけてその感想を書いてくれました。 


本を書く時、私たち書き手ができることは、届いてくれますように、できればその方にとってなんらかよい形で、と祈ることだけであって、そこから本を完結してくれるのは、いつも読んでくれる人のほうです。
 
読むことの方が、書くことよりも数段クリエイティブな作業であるとも感じます。
 
だから、私が辿り着けなかったところに導いてくれる、この文章を書いてくれた友人に心から感謝しています。
書いてくれて、本当にありがとう。
 
 
『女は、髪と、生きていく』を書く前から、というより、この本を書くきっかけになったのが、
彼女も書いている、「なりたい髪を見つけるためのワーク」
(それは理想の自分を表現する20個の形容詞を書き出し、いろんな見地から3つに絞り込んでいく工程に伴走するワークなのだけれど)
の存在でした。
 
このワーク、もちろん楽しくわいわいやってくださる方もいるのだけれど、一方で、何分経っても、ひとつも書けない、書ける気がしないという人もかなりの割合でいらっしゃいます。
 
その理由は本当にさまざまです。
 
自分はそのような棚卸しの遡上に載せるほどのたいした存在ではない、という葛藤をされる方もいれば
もうずいぶん長いこと自分を省みていなかったので、リアルに自分がわからないという人もいる。
 
愛する人を亡くして、自分の理想とその人にとって理想的な自分がごちゃ混ぜになって混濁しているという人もいるし
自分が愛されてもいいと思えない。将来に希望を持つのが苦しいという方もいる 
自傷するように自分を罵る言葉を重ねる人もいたし、数日後、数週間後に見つけた言葉を届けてくれる人もいる。
 
今までで一番気に入った自分(髪)になれた、という感想を毎日のようにいただく一方で
本当は自分はこうなりたかったんだと気づいてしまった今の方が、前よりも苦しいと言う人もいる。
 
今でも忘れられないのは、妻子ある男性とばかりつながることで、男と世界に罰を与えようとしていた女の子のこと。
いまさら自分が幸せになろうなんて虫が良いこと、許されるはずがないと思ってる。
自分のこと好きになっていいんだよなんて、お花畑みたいなこと言わないでください、さとゆみさんみたいな人にはわかりませんよ、と睨まれた。うん、たしかに私にあなたの気持ちはわからない。でも、痛いほど、わかるところも、ある。
 
 
泣いてしまったり、時には怒り出したりしてしまったりする女性たちと、いくつもの時間を過ごしてきて、
どうして髪の話が、こんなふうに人の気持ちを揺らすのか、私たち女性にとって、自分の見た目を自分で決めると言うことはどのような意味を持つのか。それを考え抜いて、できるだけ建設的な形で置き留めたい、と思って『女は、髪と、生きていく』を書きました。
 
 
もちろん本の中身はどこまでいっても実用書で、自分にとって気持ちいい髪型を手に入れる方法について書いているのだけど、
このような女性たちの揺らぎや戸惑いは、雑誌やテレビでは伝わらない、本でしか届けられないものだと思ったからです。
 
私は決してカウンセラーではないから、無責任に開いてはいけない扉があると思ってる。そこには細心の注意を払って書いたつもりです。
 
私にできるのは、そこに言葉を置いてくることだけ。しかも、髪の専門家として責任を持って伝えられる言葉だけ、だ。
その言葉だって、トンチンカンかもしれないし、誰かを傷つけたり怒らせたりすることもあるかもしれない。というか、ある。
 
だから、この文章を書いてくれた友人のような感想を読むともう、それだけでこの本は幸せだと思う。
 

わたしは今まで、理想の世界は追い求めても、自分に理想を持ったことがないと思っていた。しかし加えていえば、わたしはこの歳までのわたしを到底、容認できなくて、一人でもがいて、でもまだどうすればいいのかわからない。
それってすなわち、自分に甘すぎるから未だ曖昧模糊としていても、理想があるって事じゃない?
自分を正すこと。軌道を修正すること。できるできないじゃなくてやること。そのための北極星が「自分に理想をもつこと」ならば、わたしはそれをしたい。



本はいつだって書き手ではなく、読み手のものだと私は思っています。
こんなすてきな言葉をつむいでくれる読み手の方の手で、この本がまた新しい命をもらえることに、感謝しています。


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