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子どもと自然のふれあいについての話

現代では、地方に関わらず自然とのふれあいの経験が不足している子供が多いように思います。そのことについて、都市化が進む農地に育った人間の目線から書きます。

なぜ、地方の子供も自然との触れ合いがなくなったのか

先日、衝撃的なものを見ました。同郷の友人が観葉植物しかない公園を指して「自然の中でリフレッシュ」的な投稿をSNSで行っていたのです。
世の中にはいろいろな考えがあるとは思いますが、観葉植物ばかりで管理されている環境を少なくとも僕は自然であるとは考えていません。
都会の子供が自然との触れ合いがない理由は単純にそんな場所がないからです。では、なぜ僕と同様に地方で育ったはずの友人がそのような投稿を行ったのか、それは地方の自然環境が目の前にある環境にあっても自然との触れ合いは現代の子供に不足しているからであると思います。
僕が育ったのは急速に宅地開発が進む田園地帯の寺でした。僕は田んぼや畑の周辺で遊んでいたのに対して、僕の同世代の子供達はもっぱら道路や公園で遊んでいたように思います。そんな僕を見て、大人たちは特別であるかのように褒め、僕もそれで得意になっていました。しかし、今思えば僕がそのようにいられた理由は寺に育ったという環境的な要因も大きいように思います。
どういったことかといえば、僕は農地を所有する人たちと顔見知りだったのに対して、新しく来た人たちは親も子供も古くからの住人を知らないということです。寺というのは古くからの住人の寄り合いの場となっており、そこに集まる人たちは僕のことを寺の倅だと認識しています。
現代の子供は防犯意識が高いので、知らない大人とは基本的に話しませんが、僕は知り合いなので普通に話しますし、物心ついた頃からなんとなく入っていたのはさておき彼らに言質をとって敷地内で遊べます。
一方で、後から引っ越してきた人たちは古い住人との関わりがあまりなく、農家さんが別に子供が入るくらい問題ないと考えていても知るよしもありません。屏風の虎ではありませんが、目の前に自然と触れ合える場があったとしてもそれはあくまで景色にしか過ぎず、そこにどのようなものがいるのかといったことを知ることはありません。
地方育ちでも核家族化が進み自分の親の出自と違う場所で暮らしている人が多い現代ではこのように自然環境と触れ合うことができなくなっているのではないかと思います。
※逆に都会から来た人が勝手に私有地に入って問題になることもあります。許可をとって立ち入るようにしましょう。

自然との触れ合いがないことの何が問題か

正直、僕は友人の投稿を見た時に正気を疑いましたが、別に僕に正気を疑われたからと言って生活するうえで何も困りません。では、いったいどのようなことが問題となるでしょうか。
単純にその人の思考の幅が狭まるので将来的に個人が損をする恐れがあるということもあるとは思いますが、最大の問題は環境保全に対して理解を得られない、理解を得ることができたとしても間違った方向に進んでしまう可能性があるということでしょう。
幾ら自然は大切だと口では言ったところで魅力を知らなければ本気でそう思うことは難しいでしょうし、たとえ本気で行動を起こした場合でも間違った保全により結果として自然環境を損ねる可能性があります。
自然というのは我々の生活を支える基礎の部分であり、将来役に立つかもしれないダイヤの原石が大量に存在する領域でもあります。国際的な潮流としてもどんどん保全を進めていこうとしている状況ですが、自然と触れ合ったことのない人間がそのような状況に適応できるとは思えません。誰もが自然の魅力を知ることが理想的であると思います。

遊べる場所を増やしたい

一方で自然環境が弱っており、たくさんの人間を受け入れることができるような状態ではないという問題もあります。自宅の近所の宅地化されてない田んぼや用水路でも10年前はすぐに袋いっぱい取れたバッタやキリギリスの仲間が昔に比べて明らかに減っていますし、何十匹もナマズがいた用水路の深みも今は数匹いればいい方です。里山と呼ばれてた地域でも木が限界を迎えており、去年はたくさんの生き物が見られた木が今年見たら寿命で枯れかけてるなんてことはしょっちゅうです。
残念ながら無計画にそういった場所に人を招けば環境が壊れてしまうでしょう。
また、当然ながらそういった土地にも持ち主がいるわけで、どこにでも自由に立ち入るというわけにはいきません。
自然や土地の所有者の間に立つ人間が必要な時代になってしまったなと思いますし、前述のような環境で育った人間としては少しでもそういった部分で力になっていけたらと思います。

まとめ

近年、自然環境の保全が促進される一方で、現代では地方の人間も含め多くの人が自然の魅力(あるいは自然が何なのか)を体験的に知らないという問題があります。このような状況では自然環境の保全がうまくいかないのはもちろん本人の可能性も閉ざされます。
その背景にあるのは私個人としては核家族化による地域からの断絶です。これを是正するというのは会社勤めの人も多い現代では難しいかもしれませんが、その役割を代替するシステムが必要であると思います。
※この記事はあくまで私の体験による話です。地域や人によって価値観は違うと思うので、押し付けないようにしましょう。


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