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不老不死はいいことか(生き物の死にざま)

「生き物の死にざま」(著:稲垣栄洋・草思社)読了しました。
題名のまま、色々な生き物の死にざまが描かれたエッセイです。

稲垣 栄洋(1968年 - )
日本の植物学者。みちくさ研究家(自称)。静岡大学教授。
静岡県生まれ。1993年岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省入省。1995年、静岡県入庁、静岡県農林技術研究所を経て、静岡大学農学研究科教授[3]。2004年「生態的特性の解明と到花年数の短縮によるササユリの自生地保全および園芸利用に関する研究」で岐阜大学博士(農学)。
専門の雑草学の延長として、雑草の生き方を伝えることも研究の目的と語っており、雑草の生態に関する一般書を複数出版している。

wikipedia

紹介している死にざま
セミ・ハサミムシ・サケ・アカイエカ・カゲロウ・カマキリ・アンテキヌス・チョウチンアンコウ・タコ・マンボウ・クラゲ・ウミガメ・イエティクラブ・マリンスノー・アリ・シロアリ・兵隊アブラムシ・ワタアブラムシ・ハダカデバネズミ・ミツバチ・ヒキガエル・ミノムシ・ジョロウグモ・シマウマとライオン・ニワトリ・ネズミ・イヌ・ニホンオオカミ・ゾウ

命の儚さ、尊さ、そして動物に対する愛情と人間のことも考えさせられる一冊だった。僕たち人間は、この地球を征服し支配した動物だと自認しているが、本当にそうだろうか。小さな虫や動物から考えさせられたのは「人間とは何か」だった。
人間の血を吸う蚊がどんな境遇で屋内に忍び込み血を吸っているか、彼らの目線に立って描かれているこのエッセイで一番伝えたいことはそこだった。
読後感は悪くない。ぜひ読んで見ていただきたい。

その中で「ハダカデバネズミ」をピックアップしたい。
先ずは下記の太字だけでも読んで欲しい。

ハダカデバネズミ

ハダカデバネズミ
完全地中棲。大規模な群れ(コロニー)を形成し生活する。哺乳類では数少ない真社会性の社会構造を持つ。群れの中でもっとも優位にある1頭の女王メスと1頭または数頭の雄のみが繁殖に参加する。妊娠期間は66 - 74日。野生下・飼育下でも、年に4 - 5回に分けて50頭以上の幼獣を産む。女王メスが死んだ場合は巣内が平和であれば複数のメスの性的活性が活発化するものの、そのうち1頭のメスのみが急に成長し女王メスになる。飼育下の寿命は15年以上で、女王メスは最長で28年2か月の生存記録もある。
巣の中で産まれた個体は同じ巣に留まってワーカーや繁殖個体になるので、巣内で近親交配が行われ巣内の個体間の血縁度が非常に高くなる。これが本種の真社会性の進化を促したとする説がある。

老化に対して耐性があり、健康な血管機能を維持できる。長寿の理由は生活環境が厳しい時に代謝を低下させる能力があり、それが酸化による損傷を防いでいると考えられる。その驚異的な長寿ゆえ、ハダカデバネズミのゲノム解析に努力が払われている。
齧歯類の中でも最も長い約30年という寿命であるが、2023年7月の熊本大学の発表によると、三浦恭子教授らはハダカデバネズミの皮膚の一部を人工的に老化させると、老化させた細胞が死ぬことを発見。この現象を詳細に調べると、老化細胞内にセロトニンが蓄積しており、このセロトニンの化学反応により生じる過酸化水素(H2O2)が細胞死を引き起こしていることがわかった。これはマウスなどにはみられない、ハダカデバネズミ特有の仕組みであり、老化細胞を蓄積させないこの仕組みが、老化しにくく寿命が長い理由と考えられる。

ハダカデバネズミにがんが発見されたことはなかった。このメカニズムは、一定のサイズに達した細胞群に新たな細胞を増殖させない「過密」遺伝子として知られているp16という遺伝子が、がんを防いでいるものである。ハダカデバネズミも含めたほとんどの哺乳類は、p16が活動するよりもかなり遅れた時期に活動する細胞の再生を阻害するp27と呼ばれる遺伝子を持っている。ハダカデバネズミにおいては、p16とp27の共同作用が、がん細胞の形成の阻害としての二重防壁を形成している。ハダカデバネズミはがん抑制遺伝子の産物であるp53タンパク質の濃度がマウスと比較して50倍も高く、血管等修復能力も高く、培養細胞の分裂速度が遅く、強い接触阻害を有する。

2017年4月21日付のアメリカの科学誌『サイエンス』電子版に発表された研究結果によると、ハダカデバネズミは酸素がない環境で18分も耐え、大きなダメージも残らなかったという。
無酸素状態になった際、通常の酸素呼吸とは別の仕組みでエネルギーを生み出したとみられる。研究チームは「心臓病などで、無酸素状態になった際に起こる損傷を防ぐ治療につながる可能性がある」としている。無酸素状態では、ハダカデバネズミの体内で糖類の一種の果糖が増えていることが確認できた。通常時のエネルギー源であるブドウ糖の代わりに果糖を使って、脳や心臓といった生存に関わる組織にエネルギーを供給していると考えられる。

wikipediaより抜粋

簡単に言えば、不老の生き物である(不死ではない)。彼らには老いるということが遺伝子でプログラムされていないことが分かっている。なんて羨ましい!!と思ったのだが、僕たちのずっとずっと祖先である単細胞生物はそもそも老いることはプログラムされていなかったらしい。何らかの理由で、進化の過程の中で老いていくということをプログラミングされたということだ。つまり人類の祖先は老いて死ぬ=古いものを壊し新しいものを創り上げることを選択した。
我々の染色体にはテロメアという部分があり、そのテロメアが経年劣化していくことで老いが生じることが分かっている。つまりテロメアは老いて死ぬために用意されたタイマーである。人間の欲望として不老不死が挙げられるが、このテロメアは多くの生物が自ら望んで獲得した時限爆弾なのだ
何故僕たちの先祖は不老不死を選ばず、老いて死ぬことを選択したのだろうか。その理由が分かれば僕たちは喜んで死を受け入れられるのかもしれないが、きっとそれは難しいだろう。

少なくとも日本の80歳を超えても引退をしない政治家たちには、到底理解できないだろう。そのこともまた人間という生き物の死にざまなのかもしれないですね。それこそハダカデバネズミのような醜態を見せて黒塗りの車で永田町をウロウロ徘徊することが生物としてどうなんだろう?

ハダカ出歯ネズミ

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