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台本を公開している理由

僕のnoteでは、これまで公演してきた自作の台本をほとんど無料で公開しています。自分の作品を誰でも読める場所に公開することには少し抵抗がありました。それでもメリットとデメリットを考えたとき、メリットのほうが多いのではないかと考えるようになったからです。

メリット1 沢山の人に読んでもらえる
演劇というものは大前提として、公演日にお客さんが合わせて、お金を支払って、交通費も支払って、時間も使って、予定を調整した上でようやく見ることが出来るものです。公演数もそんなに多いわけではありません。ということは僕ら作る側にとってみたら、よっぽど演劇が好きな人でないと僕の作品、少なくとも台本にすら触れる機会がないということです。最近の演劇は配信をしたりしてもいますが、正直よっぽど有名な劇団や作家、出演者でもない限り、舞台の映像よりは映画やドラマを見たほうがいいと感じます。こっち側の僕でも映画を選択すると思います。そんなちいさなパイでしか発表できない演劇用台本はあまりにももったいない気がしました。どうせならば、多くの人にちょっとでも読んでいただく機会があったほうがいい。それが一番大きな理由かもしれません。
デメリット1 お金にならない可能性が高い
公開している台本は基本的に無料です。どうしても最後の最後だけは本当に読みたい人の数を知りたいため有料にしています。実際フォロー数を増やすために読みもせずにいいねを押してくださる方もいるでしょうが、それでも気に留めてもらうだけで相当ありがたいことなのです。もしかしたら誰かが「佐藤雀っていう人の書いている台本が面白い」って他の誰かに伝えてくれたら僕のことを知ってくれる人が増えます。それはお金よりも価値が高いことだと思うのです。実際に読んでくれて、面白いと思ってくれたらお金を支払ってもらう。もっと言えば「お金を払わないと申し訳ない」と思ってくれる人が出てきて欲しいなと思ったりもしてます。とはいえ、まずは知名度重視ということで、このデメリットは打ち消されます。

メリット2 僕という人間を知ってもらう
台本でも小説でもモノを書くという作業をしていると、人間性というものが必ず出てくると思います。どんなに僕が「頭のいい感じのモノを書きたい」と思っても自分以上のものは書けませんし、取り繕って書いたとしても自分自身が納得できないものになってしまうと思います。モノを書くということは「自分のことを書く」ことにほかならないと考えています。それがフィクションであったらなおさらです。著名な映画監督や作家の書いたものを読んだとき「僕にはこんな発想はできない」とか「こんな悪魔の所業のようなことを書くのは勇気がいるだろうな」とか考えてしまいます。文章には自分の考え方、倫理観、正義感、生き方が出てしまうものだと思いますし、そうでなければ読み手に失礼な気がしてしまうのです。
デメリット2 自分を晒すことは怖ろしいこと
自分が真剣に向き合って書いたものをバッサリと「つまらない」と言い捨てられることもあります。舞台・演劇を発表するときにアンケートを取ったりしますがそこに恨みつらみみたいに書かれた経験は僕でなくとも演劇をしたことがある人はあると思います。見た人全員に「すばらしい」と言ってもらえることはあり得ないと思っています。三谷幸喜や宮藤官九郎が書いた作品ですら全員が「よかった」と思うはずがないんですから。せめて僕の書いたものが面白いと思ってくれる人が8割いれば上出来だと思うようにしてます。最初のころは1枚のこき下ろされたアンケートに憂いたりしていました。いや、今もだな。精神的にはよろしくない仕事だなあとつくづく思います。なのでこのnoteに自分の書いたものを晒すことは怖ろしいとも思っています。

メリット3 ぼーっとしているとチャンスを逃す
演劇を公演するとき、偶然にも大物監督や脚本家を探しているプロデューサーが見に来てくれたらそこからチャンスが拓けるかもしれないとどこかで思っています。とはいえなかなかそんなチャンスは来ません。一度だけ本当に偶然見に来てくれた出版社の編集長が終演後に声をかけてくれて、ノベライズを書かせてもらえたことがあるくらいです。まあ演劇という狭い社会に才能はゴロゴロしてるわけで、簡単に言えば上のステージに行く方法が少ないのです。そんな風にもがいている間にも一緒にはじめた劇団がのし上がっていったりするとやっぱり嫉妬しちゃうのよ!であれば、書いたり読んだりするこのnoteという場所を戦場のひとつと捉えたいと思ったのです。
デメリット3 と言いながらもう若くない
そうなんです。僕の場合、初めて台本を書いたのは30を過ぎたころだったとおもいます。その後ずっとモノカキを目指して生きてきたわけではなく、50を過ぎた今頃になって上記のようなことを言い始めているんです。完全に人生出遅れています。もうナリフリ構ってはいられません。できることはやっていくしかない。

デメリットを書いていても全て打ち消してしまっていることに気付くわけですが、とにかく一人でも多くの人に台本を読んで欲しいと思っているわけです。100人いればひとりくらいは読んでくれるんじゃないかなと淡い期待をしながら、アップデートしております。まずはお金よりも皆さんの時間を少しだけいただけたらありがたいのです。

読んでみるぞという方はこちらからどうぞ

ここまで読んでいただきありがとうございました!
引き続き雀組の台本をよろしくお願いします。

こちらは僕ではありません。女優の安井摩耶さんです。

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