見出し画像

ライターの私がガチンコでインタビューについて考えてみた #ライター交流会 登壇を振り返り

9月5日 #ライター交流会 のイベントで、第3部の「インタビュー」について担当し、お話をさせていただいた。新潟県燕三条からモデレーターをしてくださった水澤 陽介さんと、webライターとしてお話してくださった鈴木詩乃さんのおかげで、自分自身の思考を深める機会となった。(ありがとぅー!)
1年後、3年後、5年後と、少しずつアップデートした思いが出てきそうだと感じていることもあり、今の時点でお話した内容をここで書き留めておこうと思う。

◆取材ってなに? 取材のスタンスは?

端的にいうと、取材とは取材対象者のことを知ること。ブックライターの取材は、2時間×4回、5回行う。事前に質問項目をお送りして、取材対象者に自分の考えを耕してもらっておくことが多い。
基本的にこの質問項目がアジェンダとなり進めるが、取材時は会話のような形式になっていく。派生もするし、脱線もする。そして、その脱線から新たな発見もある。

続いて。
私は、取材で引き出せる話には3段階あると考えている。媒体によって目指すべき段階は違うが、私は③を目指したいと考えている。

①誰が聞いても答えてくれること。
②上手に聞いたら答えてもらえること。
③取材対象者自身が気づいていない意識の底にあるようなこと。

③では、「私、こんなことを考えていたんですね!」「自分がしたいことはこれだったんですね!」など取材対象者自身が自己発見する瞬間がある。
私はその人の瞳が開く、その瞬間が好きだ。
それに、インタビューではどうしても聞く側=「もらう側」になる。新たな気づきまで到達できれば、取材対象者に「おみやげ」を持って帰ってもらうことができる。

実のところ、この考え方は私が尊敬するライターさんが大切にしていたことだ。これだから、ライターとライティング話をすることはやめられない。抽象論をカチリと掴み取れ、言語化できる物書きの方々が、私は大好きだ。

◆取材で大切にしていること

大切にしていることは、取材対象者の目線になることと、取材対象者を取り巻く人の目線になること。入れ替えスイッチを使っている。(たぶん。)

取材対象者の目線になると、共感的質問ができる。「それは大変でしたね。私だったら、○○しちゃいますが、××さんはどうしたんですか?」など。
一方の、取材対象者を取り巻く人の目線になれば、「意地悪な言い方をすると、こうもなりえたわけじゃないですか。どうして、その選択をしたんですか?」などと聞ける。

多くのライターが特段意識せずにこの立場の切り替えをしていると思うが、言語化すると入れ替えスイッチがあるということなのかなと思う。

◆賛否あるテーマに覚悟を持てるか

私は、自分の専門性がある教育のジャンルについて書くことが多い。
また、最新作の『TKマガジン』では、障害や福祉の領域で、平均寿命が示されている15才の少年を取り上げた。

こうしたテーマは、賛否が大きく分かれる。反感を買うこともあるだろうし、もしかしたら誰かを傷つけてしまうかもしれない。
その怖さをどう乗り越えるかといえば、「覚悟」しかない。
元も子もない話だが、ライターは拡声機なので、「この人の言葉や考えを広めたい」と思わなければ、それは自分の心を裏切ることとなる。

これは、ライターの持続可能性ともいえるものかもしれないが、好きじゃない人の声を、手軽にボンボン書いていくと、致命的にすり減る。もうライターという仕事自体を、愛せなくなる。
いろいろな考え方があると思うが、少なくとも私はそうだ。

だから、私は、取材対象者の価値観やスタンスを理解してから、ブックライターの仕事をお受けすることにしている。オフラインかオンラインかで、取材の前に必ず一度対面させていただく。

「取材の事前準備が大切だ」という意識は多くの人に浸透していると思うが、事前準備は単に取材対象者の情報を集めるという意味だけではないと思う。その人の価値観や人生を通じて何をしたいと考えているのかを知り、覚悟を決めることを、大切な事前準備だと考えている。

◆オンライン取材とオフライン取材

新型コロナウイルス感染症の影響で、ライターの仕事もかなりオンライン化が進んだ。緊急事態宣言があけて、一瞬対面取材に戻ったが、またすぐに「オンラインにしましょう」という流れになった。私の拠点が東京だからかもしれないが…、他のエリアのライター仲間のみなさんはどうだった?

オンラインは非常に便利だし、もはや、なくてはならないものという意識になっている。しかし、オンラインでは感情の動く幅が狭いということも感じる。
ものすごく嫌な思いをすることもないが、感動して涙が止まらないみたいなことも、ない。
いまのところ、大きな弊害はないのだが、この感情の幅の狭さは私たちライターの文章にどんな影響を及ぼしているのだろう。きっと少なからず、変化しているはずだ。

とあるライターの先輩が、「死ぬときに走馬灯で思い出すのはオンラインで人と会っている時ではなく、オフラインの時だろうなぁと思うんだよね」と言っていた。その表現に膝を打った。
便利や効率性とは別の軸に、人の感情の動きはある。

とはいえ、私自身、すべてが対面取材に戻るイメージは持てていない。オフラインとオンラインが上手に混じり合うハイブリット取材がライターの仕事になっていくんだろうな、と思う。

少し別の観点から話をする。
インタビューは、OJTの中で学ぶ要素が多い。私自身も編集者としてさまざまなライターの先輩方と一緒に取材に臨めたことが、今の自分につながっている。
オンラインになれば、「取材に同席する」という難易度が下がる。「音源起こしの担当が一緒に入りますね」などと言い、ちゃっかり取材を観察すればよいのだ。(秘密保持はきちんとしながらね!)
取材OJTを実現しやすくなることで、ライターの成長速度は上がるかもしれない。(私も取材参加させてほしい先輩ライターさんが結構いる。)

私たちは、オンライン化によって、対面の良さは十分に知ることになった。今度はオンラインの良さを知り、それぞれのメリットデメリットを把握した上で、この取材はオフラインにすべきかオンラインにすべきかを判断できるようになっていけるとよさそうだ。

#ライター交流会 では、現時点での自分の思考を整理する機会をいただき、非常にありかった。水澤さんと詩乃さんにとっての取材もまとめたかったが、いったんこのnoteでは私の考えの共有を!

沖縄発のこうしたイベントに、全国から賛同者が集うのも今の時代の良さ。楽しませていただきました!


いつもありがとうございます!スキもコメントもとても励みになります。応援してくださったみなさんに、私の体験や思考から生まれた文章で恩返しをさせてください。