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どうにかして人をほめたい

よく行くスーパーマーケットのよくレジをしてくれる店員さんが髪を短く切っていた。

髪を切ってだいぶ素敵になっている。

これまで中途半端に伸びてぼさぼさになっていた髪がさっぱりとカットされ、半白の生え際もきれいに黒く染められている。

だいぶいい。

これは彼女に伝えてあげるべきではないのだろうか。だってだいぶいいから。

しかし私と彼女とはレジの会計でしかつながっていないドライな関係であって、そんな人間が急に

「髪の毛切りましたね。素敵です!」

と言ってきたらどんな風に思うだろうか。変な人だと思われるのではないだろうか。

私の頭の中で「店員さんをほめたい」VS「変な人だと思われたくない」がせめぎ合いを始めた。

毎日のように行く店だし「変な人だと思われたくない」が優勢である。そのとき私の心の中に遠くから誰かがやってきた。

小島よしおである。

よしおが「そんなの関係ねえだろ?」と語りかけてくる。つい「そうかも」と思ってしまったが、そんなの関係なくもない。彼女は髪を切った翌日にレジの仕事をしているだけで自分の髪形を世界に発信しているわけではない。もし彼女がインスタで「髪の毛切りました~~☆ どうですか?!」と発信していたのなら何のためらいもなく私は写真の下のハートマークをむぎゅっと押すだろうがここはレジ前である。

━━いいことを思いついた。

店の片隅にあるご意見コーナーに書いて伝えるのはどうだろうか。

「店員の○○さんの髪形がショートヘアになっていました。さっぱりして、とても素敵になったと思います!」

怖い。

人をほめるのはなかなか難しい。とくに見た目に関しては最近では貶めるのは当然ながらほめることもルッキズムであるとされ、言及するときには細心の注意を要する。そのこと自体はとても良いことだと思う。私も中学生の頃「ブス」と言ってきた男子に対して全然恨みを忘れないもので、タイムマシンが開発されたらその頃にもどってあいつをボコりたおすつもりである。しかしほめられるほうに関しては何しろ嬉しいから、【ためらわずほめて下さい】というゼッケンでもつけておきたいくらいだ。

とにもかくにも私は会計のお金を払いながら「髪切ってよくなりましたよ!!」と心の中で強く念じることにした。テレパシーを利用したのである。

私はよいと思ったら口に出してほめたい方だが、リアルの世界で他人をほめるのは意外と難しい場合がある。それにひきかえnoteは簡単に“スキ”で意思表示できるから本当に楽でいい。

“スキ“。改めて素晴らしいシステムである。


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