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[Re:] Re-try; オールドレンズの楽しみ -- (3) ヤシカ Yashinon-DX 50mm --

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[Re:] Re-try;少年の頃、大好きだったこと -- オールドレンズの楽しみ -- 

noteを初めて、第4回目。ご紹介するは、ヤシカ Yashinon DX 50mm f1.7 。
東西冷戦中の東ドイツ製、ソ連製と東側のレンズが続いたので、今回は日本製レンズ、1960年代後半〜1970年代前半、ヤシカが世に送り出した Yashinon-DX 50mm f1.7 にしてみました。このレンズ、当時の最先端技術を取り入れた、とても意欲的なレンズ。日本のカメラ技術が活き活きと世界を席巻しようとしていた頃のレンズです。

古風な色合いがよく似合うレンズ

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紫陽花@井の頭公園。ヤシカ製 Yashinon-DX 50mm f1.7。
見頃を終えた紫陽花は、鮮やかなパステル調の青や紫から、やがて緑色を帯び次第に茶色へと変化します。パステル調から古風な色合いへと変化するその過程が私の写活の良き被写体となります。古風な色合いならば、古風なレンズで。そう思ってYashinon-DXで撮った一枚、青から緑色へのグラデーションが綺麗に撮れました。合焦面では開放 f1.7 からエッジが鋭く立ち上がり、紫陽花がポッと浮き上がるように見える立体感もこのレンズの魅力です。

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レンガ通りファストフードのお店@吉祥寺。Yashinon-DX 50mm f1.7
このファストフードショップは、パステル調のデコレーションが美しいカラフルなショップですが、Yashinon-DXを通して見ると、いかがでしょう? 鮮やかさや爽快さよりも、色褪せて年月を感じさせる写真に仕上がりました。この色褪せた古風な色合いは、決して欠点ではなくて、被写体を選べば雰囲気や時間の経過をも表現できそうですね。
(車の白色とピンク色の部分を見ると黄色が乗っかっているのか、あるいは青みが足りないのかな?)

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YURAKCHO CONCOURSE@JR有楽町駅ガード下。Yashinon-DX 50mm f1.7
ここは、意図して昭和の30-40年代をこしらえたのですから、当然のようにレトロな雰囲気や時間の経過も感じられる場所ではありますが、それを差し引いても、このレンズが持つ時間経過を表現する力は素晴らしいです。

もう一枚、古風な色合いの写真を。

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奥行きが撮れる立体感が素晴らしいレンズ

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フードトラック@JR有楽町駅。Yashinon-DX 50mm f1.7
フードトラックの Welcome マークが宙に浮いているように撮れました。オールドレンズで写真を使うとき、ほとんど場合、絞りを開放にして楽しみます。ピントの合焦面から外れたところのボケ具合にレンズの個性が表れて、それを写真にどう活かすか 考えることが楽しいですから。

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YURAKUCHO CONCOURSE@JR有楽町駅ガード下。Yashinon-DX 50mm f1.7
色乗り、特に暗部の色乗りは良いですね。一方で、原色系の赤、青、黄色部分でも鮮やかさが適度に失せていて「昭和の写真」と言っても通用しますかね。

さて、話をボケに戻しましょう。このレンズ、合焦面から奥行き方向に向かって、ボケ具合が変化していくのがわかります。奥行きが撮れるレンズです。

よく見ると周辺付近のバブルボケが円周方向に長い楕円形をしています。これは、ぐるぐる渦巻き状のバブルボケも期待できそうです。

美しいバブルボケ、ぐるぐる渦巻きのレンズ

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玉川上水緑道@三鷹市。Yashinon-DX 50mm f1.7
長く続く玉川上水の脇の小道、ぐるぐる渦巻きバブルボケを使いこなして、トンネルのような写真にしたい。そう思ってトライしました。中央に適切な被写体が無かったので、道端の杭(距離は多分2mくらい)にピントをあわせて撮影。枝のたわみなどにも助けられ、何とか目的を達成した一枚でした。写真の左上周辺部には小さいですが楕円のバブルがたくさん映り込み渦巻きに一役買っています。

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井の頭公園@吉祥寺。Yashinon-DX 50mm f1.7
夕方にかけて太陽光が斜めから降り注ぐ時間帯になるとツヤのある葉っぱに太陽光が反射して輝いている場面に遭遇する時があります。
無数の点光源をバブルボケにしてみたい。そんな意図で撮ったのがこの写真。点光源が多すぎて意図通りではありませんが、これはこれで良い写真だと自画自賛しています。もう少し暗めにしたらよかったかな。
これだけの光がレンズに入ってきてもハレーションを起こさないのはコーティングやレンズ内の予期せぬ乱反射をしっかり抑え込んだ設計の賜物でしょう。

では、もう一つバブルボケの写真を。

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ヤシカへの想い

さて、ヤシカと言えば、私の中では一時代を築いた電子カメラ ヤシカ エレクトロ35。「ろうそく一本の灯りでも写る」というキャチコピーに胸を躍らせたものでした。1966年発売、自動露出機構を備えた絞り優先の電子シャッター式カメラ、改良を重ね1975年のシリーズ最終製品まで10年にわたって販売されました。10代の私の憧れの的でした。
その頃の日本のカメラメーカーは実に溌剌として新技術を惜しげもなく投入して、世界を席巻しつつあったように思います。

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先端技術の投入、このYashinon-DX f1.7も例外ではありません。このレンズには酸化トリウムが含まれ高屈折率、低分散を実現しているのです。当時、トリウムレンズはヤシカ以外からも販売されていますが、その先進性は一目に値しますね。

ガラスが黄色みを帯びる経年変化、ブラウニング現象がその特徴です(下記Ref. 1)。写真では少しわかりにくいでしょうか? 黄色みを帯びている様子がお分かりかと思います。後玉がトリウムレンズです。

この黄色みを帯びたレンズが一種のフィルターの役割をして、青みを吸収、その結果、鮮やかさが失せ年月を感じさせる色褪せた古風な色合いの写真を生み出していたんだなぁ と私個人の今回の結論です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
さて、次に紹介するオールドレンズの楽しみ、満を持して Carl Zeiss Jena にしよう。Biotar 58mm f2.8。

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Ref. 1) トリウムレンズからは微量のγ線が出て、ガラスが黄色みを帯びる経年変化、ブラウイニング現象が起きます。γ線はカメラをずっと抱えていても一般の許容値より低いとのこと。「トリウムレンズ」などで検索などして、どうぞご自身で判断してください。


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