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つまり、佐藤の本棚。

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今まで読んできた本にまつわる「記憶」の記録です。
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#コンテンツ会議

古本をめぐる冒険「性に目覚める頃 室生犀星」

最初に「性に目覚める頃」という題名を目にした時「性教育に関する内容なのか。それとも性欲に悩む主人公の葛藤を描いた作品なのだろうか」と。そして、機会があれば読んでみたい、と感じたことを覚えている。 今年の春に金沢へ旅した時、雨宝院で「この作品は、編集者のアドバイスで変更したそうです」と教えていただいたのだが、編集者の方は良い仕事をされたと思う。この題名だけでも(もちろん、すばらしい作品であることはいうまでもない)魅力が大幅にアップしていると感じる。実際に私も、こうして紹介

古本をめぐる冒険 太宰治「パンドラの匣」

太宰治といえば「人間失格」や「斜陽」を思い浮かべる人も多いかと思います。自分の場合は以上の作品に加えて「パンドラの匣」が頭に浮かびます。その理由は、本作品が地元の河北新報で連載されていた作品ということで、それとなく身近に感じるからでしょう。 そんなわけで「パンドラの匣」は河北新報版で読みたいもの。装丁も美しくモダンで所有する楽しみも感じる一冊です。 今回紹介している「パンドラの函(河北新報版)」は復刻版なのですが、奥付けもちゃんと再現されています。「太宰」の判子が、いい感

本をつくる: 職人が手でつくる谷川俊太郎詩集

「紙の本」に対する、あこがれ。私は、子供の頃から「本」に対する憧れが強かった。図書館にあった豪華な装丁の本は「お宝」のように見えた。大人になったら、天井まで届くような高く広い本棚を壁一面に設置して、好きな本をずらりと並べよう。その前に寝転がって、よし今日はあの棚の本を一気に読んでみるか、などと考えて過ごそう。そんなことを夢想する「よくわからない」子供だった。 ここ数年、少しずつ古書を買うようになったのも、子供のころの読書体験からきているものだと思う。買ってきた本を机の上に置

古本をめぐる冒険 濱田廣介「大將の銅像」

先日、待ち合わせまでに時間があったので、古本屋に立ち寄った時の話。抱えていた荷物が多かったため、眺めるだけにしようと考えていたのですが、ふと目に飛び込んできた装丁が気になってしまい、思わず購入してしまった一冊がありました。 それが今回紹介する、濱田廣介「大將の銅像(復刻版)」です。 帰宅してから、あらためて手にとって眺めてみると、装幀及び扉は竹久夢二、口繪及び挿繪は川上四郎でした。なるほど、道理で目を引かれたわけです。 序文と目次には、朱に近い文字色が使用されています。ペ

読書の記憶 七十七冊目 「兄たち 太宰治」

こんにちは。広告文案家の佐藤(さったか。)です。私が起業してまもない頃、ある経営者の方に「なにか嬉しいことがあった時は(たとえ、それが些細なことでも)大袈裟に喜んだ方がいいですよ。そうするとまた嬉しいことを呼び込めるから」と、アドバイスされたことがあります。 あの当時の私は、たいそう「つまらなそうな顔」を、していたのだと思います。それをさりげなく指摘してくれたやさしさと懐の深さ。今になって、その有り難さがよくわかります……。いつの日か若手の起業家の方に、このような言葉を届け

読書の記憶 七十六冊目 「太宰治との一日 豊島与志雄」

こんにちは。広告文案家の佐藤です。以前、図書館で借りた本に「コピーライターは広告文案家と呼ばれていた」と書かれていたことを思い出したので、ふと使ってみました。薄暗い部屋の片隅で煙草の煙をくゆらせながら、ひとり呻吟しているような、どこか物憂げな雰囲気がします。 さらに付け加えるのなら、私は「企業理念の標語(コーポレートスローガンというやつですね)」を手がけることが多かったので「企業理念的標語制作 広告文案家」という肩書きを考えてみました。こうなってくると、軽みが出てきてしまっ

読書の記憶 七十五冊目 「一問一答 太宰治」

こんにちは コピーライターの佐藤(さったか)です。今まで私が読んできた本を並べていく「佐藤の本棚」も75冊目となりました。ようやく75冊か。なんだか70冊を過ぎたあたりから、100冊のゴールがなかなか近づいてきません。むしろ遠ざかっていくような気配すら感じます(笑)このペースだと、年内のゴール達成は難しいか? いやいや、あきらめずに淡々と並べていこうと思っております。応援よろしくお願いします。 さて、6月になりました。私にとって6月といえば「太宰治」が思い浮かびます。太宰の