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つまり、佐藤の本棚。

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今まで読んできた本にまつわる「記憶」の記録です。
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2019年11月の記事一覧

古本をめぐる冒険「春と修羅 宮沢賢治」

わたくしが「古本の装丁」に興味を持つきっかけになったのが「春と修羅」でした。しかし当然のことながら、初版本はとても手がとどく金額ではありませんでしたので、復刻版を探すことにしました。何軒か古書店を巡ったり、ネットで検索したりして、ようやくこの一冊に出会えた時は「お宝を発見!」したような気分になったことを覚えています。 布の表紙にアザミが描かれています。賢治は「青黒いザラザラの布」を探していたらしいのですが、実際に見つけてもらったのは「まったく違った色の布」だったそう。すると

古本をめぐる冒険「性に目覚める頃 室生犀星」

最初に「性に目覚める頃」という題名を目にした時「性教育に関する内容なのか。それとも性欲に悩む主人公の葛藤を描いた作品なのだろうか」と。そして、機会があれば読んでみたい、と感じたことを覚えている。 今年の春に金沢へ旅した時、雨宝院で「この作品は、編集者のアドバイスで変更したそうです」と教えていただいたのだが、編集者の方は良い仕事をされたと思う。この題名だけでも(もちろん、すばらしい作品であることはいうまでもない)魅力が大幅にアップしていると感じる。実際に私も、こうして紹介

四十年間、探していた本。

小学一年生の時、図書館で借りて読んだ本があった。それは、奇妙で不可思議で、今までに目にしたことのないような言葉が並んでいて、わからないところも多かった。それでも、どこか惹かれる部分がある。もっとこのような世界を探検してみたい気がする。そんな雰囲気のある小説だった。 「もう少ししたら、また借りて読んでみよう」 小学校一年生の僕は、そう考えて本を閉じた。しかし、転校などで環境が変わったこともあり、その本を借りて読むこともなく小学生は中学生となり、社会人になっていた。 題名も