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お昼寝(第三回イロカワ文学賞応募作)

よく利用している、平らで寝心地のいい場所は、芝生がところどころはげて、土がむき出しになっている。僕はそこにポケモンのレジャーシートを広げると、シートの右端に体育座りをして、リュックを体の左に置いた。

風はなく、日光が顔に当ってすこし暑い。それでも僕はグレーのマフラーを首に巻いた。ふつうならまだ十月だからマフラーなんていらない。だけど風がよく通る大隈庭園で昼寝をしていると、寒くない日でもだんだんと体が冷えてくる。だから昼寝ができそうな天気がいい日には、僕はマフラーを、なるべく使い古したマフラーを持ってくるようにしている。

せっかくの昼寝日和なのに庭園には人が少ない。庭は正面入り口から奥へと緩やかな下り坂になっているから、入り口近くにいる僕は園内を見通すことができるのだけど、庭のちょうど真ん中にいる黒ガウンを羽織った女性と、奥にいる男女のカップルしか、日光で暖まった芝生の上に座っていない。
 僕はレジ袋をリュックから出した。ドラッグストアで安売りされていたカロリーメイトのフルーツ味と、生協で買ったコロッケパンが入っている。どっちから食べようと考えながら、細長いカロリーメイトの箱をシートの上に立てようと工夫していると、待っていた人が来た。水色でタック入りの太いパンツを履き、ピンクのシャツを着て、その上にデニムジャケットを羽織っている。

「やあ、裕一君」

何も持っていない左手ではなく、ビニール袋を持った右手を僕の方に振り、シャカシャカと音をさせながら、小原さんは近づいてきた。

「こんにちは」僕は小原さんの顔を見ずに、小原さんの履いているティンバーランドの茶色いブーツを見ながら言った。

「横に座っていいかな」

「あ、どうぞ」と答えながら、僕はリュックを背中の後ろに置き、シートに倒れたカロリーメイトの箱をレジ袋に戻し、もうシートの右端に座っているのに、体をさらに右に寄せる動きをした。座る位置は変わらないけれど、「座ってほしい」という意思を体で示そうとした。
「じゃあ、失礼します」

小原さんがゆっくりとシートに座るまでの間、僕はピンクのオックスフォードシャツを眺めていた。

「どうかした」

小原さんが微笑みながら僕の顔をのぞき込んできた。呼吸を感じた。僕は目を逸らし、「あ、その、今日は天気がいいですよね」とごまかした。

「そうだね。絶好のお昼寝日和だよ」と言うと、小原さんはシートに倒れ込んだ。「裕一君は準備がいいね。流石だよ」

「シートのことですか」

「そう。さあ、一緒に寝よう」

 横向きに寝転んでいる小原さんは、シートを左手で二回、パンパンと叩いた。

「昼を食べてからにしますよ」

 僕は体育座りをした足の間にビニール袋を入れた。

「じゃあ、僕は寝るよ。おやすみ」

 小原さんは目を閉じた。ピンクのシャツがめくれて、下に来ているピンクのTシャツが見える。そんなにピンクが好きだったのか。知り合って二年は経っているのに気づかなかった。そういえば小原さんはピンク色のトランクスを履いていたことがあった。周りの人がどんな色を好きかなんて気にしたことがなかった。特別な人でさえ知らなかった。

 レジ袋からコロッケパンを取り出し、プラスチックの包装についた白い正方形のシールをキレイにはがそうとしていたのだけど、残り八分の一くらいのところでもう大丈夫だと気を抜いたら破れてしまった。がっかりしながらシールを丸め、レジ袋に入れてから、包装を半分くらいまでむいて、コロッケパンを一口食べる。冷えているけれどコロッケの衣はまだサクサクしていておいしい。

 眠っている小原さんを少し見つめていたけれど、視線に気づかれてしまったら恥ずかしいし、せっかく庭園に来たのだからと、僕は空を眺めた。

 空にはほとんど雲がない。いくつか浮かんでいる雲も薄く、はっきりした形をしてないけど、一つだけ楕円形の雲を発見した。ゆっくりと、ゆっくりと流れていくその雲を観察しながら、僕はコロッケパンを一口食べる。

 何も考えずにアゴだけを動かしながらボーっと雲を見つめる。

 水色の空の中で、雲は滑るように動いている。等速直線運動という言葉を思い出す。理科室にある黒くて滑らかな机の上で小さな車を走らせる実験をした。中学生の理科の授業かな。小学生かもしれない。車は教科書の写真と違ってまっすぐに進まず、曲がったり、途中で止まったりした。どうしてだろうと思って車をよく見ると、車輪がボコボコになっていた。何年も実験で遊ばれたせいだった。

 僕は口の中でドロドロになっていたコロッケパンを飲み込んだ。背中の後ろにあるリュックを引き寄せ、水筒を取り出し、水を一口飲む。

 また楕円形の雲を見る。滑らかに、同じスピードで動き続けている。進んだ先には二十階はありそうな高いビルがある。壁はベージュ色で、建物上部の窓は日光が当たり輝いている。ちょっとまぶしい。楕円形の雲の先っぽがビルに触れたと思ったら、あっという間に全体がビルに隠れてしまった。

 ちょっとがっかりしながら視線をビルの方から正面に戻すと、今隠れた雲とほとんど同じ形、大きさの雲が浮かんでいるのを見つけた。ワープしたみたいだ。でも、空を見上げ続けて首が疲れた僕は、その雲の動きを追わずに視線を芝生に下げた。こんなにいい天気なのに、庭にいる人は増えていない。僕は手をつないでいるカップルを見ながら、コロッケパンを一口食べた。

 レジャーシートの上で物音がした。小原さんが目を覚まし、両腕を伸ばしている。

「おはよう」

 口の中にパンがある僕は黙ってうなずいた。

「今、何時」

 僕は左手首の腕時計を、時計に少しかかっているセーターを引きながら、小原さんの顔の前に出した。

「ああ、分かった。ありがとう」小原さんはほほ笑みながら右手を上げた。「じゃあ、僕もお昼を食べようかな」

小原さんはビニール袋から白い紙製の容器を取り出した。ロコモコ丼だ。
 白いプラスチック製のスプーンを取り出し、その後で紙おしぼりを見つけたようで、スプーンを口にくわえて、手を拭いている。僕はそんな小原さんは横目でこっそり観察しながら、残りのコロッケパンを口に入れた。

「そういえば。今日はもう一人来る予定なんだよ」と言ってから、小原さんはロコモコ丼を一口食べた。僕は大きく二回うなずく。体をひねり、背後にあるリュックから水筒を取り出しながらコロッケパンを飲み込み、水を一口飲んだ。

「今井さんですか」

ロコモコをすくい、口に運びかけていたスプーンをとめて、「いや、葛西君。って、たぶん裕一君は会ったことがないね。まあ、そろそろ来ると思うよ」と答えてから、小原さんはロコモコを口に入れた。

「そうですか」と僕は小原さんのへその辺りを見つめながら答えた。

 カロリーメイトをレジ袋から取り出すと、コロッケパンについていたシールが箱に貼りついていた。それをはがして箱を開けようとすると、小原さんが「あ、来た」とつぶやいた。

「こっちこっち」小原さんは公園の入口へ体をひねり、スプーンを持った右手をあげた。白いスプーンには茶色いソースと卵の黄身が少しついている。

 僕も入口へ首をひねると、黒いチノパンを履き、ギンガムチェックのシャツの上に黒いセーターを着て、黒縁のメガネをかけた男性が、レジ袋を持った右手ではなく、左手を軽く挙げながら、こちらへ近づいてくる。この人は黒が好きらしい。

「遅かったな」と言うと、小原さんはロコモコを一口食べた。

「そうかな」とつぶやいてから、僕の方を向いて「あ、どうも、葛西です」と葛西さんは軽く頭を下げた。

「あっ、斉藤です。はじめまして」

 カロリーメイトの箱を持ったまま、僕も葛西さんに頭を下げる。

「まあ適当に座ってよ」と小原さんが言った。でも、ポケモンの子ども用レジャーシートに三人が座る広さはない。それでもリュックを芝生の上に置いてスペースをつくろうとしていると、「あ、いいよ」と言って葛西さんは芝生に座った。

「大丈夫ですか」

「みんな直接座っているでしょ」葛西さんは公園を見回したのだけど、カップルはいなくなり、ガウンの女性しかいない。

「まあ、大丈夫大丈夫」と、葛西さんは斜め掛けのバッグを芝生に置き、レジ袋からおにぎりを三つ取り出すと、空になった袋の上に座った。僕は申し訳なさそうな顔をして、頭を下げながら、リュックをシートの上に戻した。小原さんの「いいよ。こいつは新入りだから。いきなりシートに座らせるわけにはいかない」という声が横から聞こえた。葛西さんはおにぎりの包装をむきはじめている。

 カロリーメイトの箱を開けると中には二つ袋がある。一つの袋には二本のカロリーメイトが入っている。僕は一本の三分の一を口に入れた。パサパサしている。

 葛西さんは尻の下に敷いていたレジ袋を引き抜くと、ゴミを入れた袋を体の右に置き、少し枯れた芝生に直接あぐら座りした。そして、「そういえば小原は決まったの」と小原さんを見ずに言った。

「まあね」

 小原さんは水色のハンカチで口を拭いている。もうロコモコ丼は食べ終えていた。「結局、学芸大にした」容器を潰してレジ袋に入れ、袋を結ぶ。

「まあ、いいんじゃない」と答え、葛西さんはおにぎりを一口食べた。僕は口の中でドロドロになったカロリーメイトを飲み込んだ。フルーツ味を食べる時は、ナッツや果物の粒を全部かみ砕かないと気がすまない。

「心理だっけ」

「そう。これからは心理学の時代だからね」と自信に満ちた表情で言うと、小原さんは僕の目を見てうなずいた。僕もうなずき返す。

「そりゃすごい」葛西さんはおにぎりをもう一口食べた。具の昆布が見える。そんなに黒が好きなのか。

「裕一君は進路のこと考えてるの」と、小原さんはレジ袋をロコモコ丼の容器の重さを利用してグルグル回しながら、めずらしく真面目なことを聞いてきた。

「正直、全然考えてないです」

「そろそろ考えないと。ねえ、葛西君」

 葛西さんはおにぎりを慌てて飲み込み、バッグから黒烏龍茶のペットボトルを取り出し、一口飲んだ。「あれ、えっと、何年生だっけ」と言って、僕の方を向いて座り直す。

「三年です」僕も体を葛西さんへ向けた。でも視線は向けない。

「じゃあ、そろそろだね。どんな方向に行きたいとか考えているの」

「いや、まだです」

「まあ、でもこれからだよね」

「そうですね」

 小原さんを見て、「これで話はすんだ」と言いたそうな顔をした葛西さんは、おにぎりを一口食べた。僕もカロリーメイトをもう三分の一食べた。

「裕一君。もっと葛西君にいろいろ聞いておいた方がいいよ。なんたって、トヨタに入るんだからね」

 僕と葛西さんは仕方なくもう一度向き合った。僕はカロリーメイトを強引に飲み込み、「すごいですね。トヨタですか」と葛西さんのナイキの黒いスニーカーを見ながら言った。

「いや、別に。そもそも、斉藤君は就職する予定なの。もしかして大学院とか考えているのかな」

「あ、実はちょっと考えています」と僕は適当に答えた。

「え、そうなんだ。初耳だよ」小原さんはまだレジ袋を回している。

「院に行くんだったらオレから言えることは何もないよ。小原が相談に乗るべきでしょ」

 葛西さんは僕を向いていた体の角度を少し斜めにずらした。代わりに小原さんが僕の方を向いて体育座りした。

「裕一君の専門はなんだっけ」

「経済学史です」

「学説史か。卒論は誰にするの」

「マーシャルにしようかと」

 僕は昼前の経済学史の授業であつかわれた学者の名前をとりあえず言った。

「裕一君はフランス語ができるんだね」

「え、全く。第二外国語でちょっとやったくらいですよ」と僕は手をひらひらさせながら言った。

「そっか。じゃあ、これから勉強するのか。大変だね」

「小原。マーシャルはイギリス人だろ」と葛西さんが言った。「お前も経済学科だろ。経済学史の授業は一緒に受けたのに」

「受けたけど。そうだっけ。あれ、でも」

 小原さんは「まあ、いいや。これ捨ててくる」と言ってレジ袋を僕の顔の前に突き出すと、立ち上がりゴミ箱の方へ行ってしまった。

「ねえ、マーシャルって流行ってるの」と葛西さんが聞いてきた。

「いや、流行ってないですね」

「そっか」と言うと、葛西さんがおにぎりを一口食べたので、僕も残り三分の一のカロリーメイトを口に入れた。

「じゃあ、誰が流行っているの」と葛西さんが手で口を覆いながら言った。「早く答えてよ」と言いたそうな顔をしている。僕は慌ててカロリーメイトを飲み込む。

「マルクスが流行っているみたいですよ」

「今さらマルクス。どうして」

「むしろ、今だからこそ、マルクス主義とか共産主義と切り離して、純粋にマルクス自身の思想を研究できるみたいな。マルクスを環境問題との関連で読み解こうとか」

「なるほど。そうか」葛西さんは僕のでっち上げた話に納得してくれた。

「二人は次の授業はあるのー」と言いながら小原さんが帰ってきた。

「僕はありますよ」

 葛西さんはちょうどおにぎりを口に入れたところだったけど、大きく二回うなずいたから、たぶんあるのだろう。

「次がないのはオレだけか」小原さんはシートに座る。「じゃあ、二人はそろそろ時間でしょ」

「今何分ですか」

「わからない。時計もスマホも持ってないから」

「スマホも持ってないんですか」

「家に置いてきた。スマホに縛られたくないから」

 葛西さんはポケットからスマホを取り出し、時間を確認してくれたみたいだけど、なかなかおにぎりが飲み込めずに苦労している。

僕は腕時計を見た。「十二時四十五分です」

「あんま時間ないね」

 葛西さんはスマホをしまい、「ありがとう」と言いたそうな目を僕に向け、右手を軽くあげた。

 僕は「そうですね」と小原さんに答え、カロリーメイトを口に入れた。早く食べないと。

「小原はどうするの」葛西さんはおにぎりを全て食べ終え、ゴミを入れたレジ袋を結んでいる。

「次の次の授業までここで昼寝して過ごすよ」小原さんはシートに寝転んだ。「あ、でも、このシートにはいられないのか」

 僕がカロリーメイトを飲み込み、「使っていいですよ。次に会う時に返して」まで言ったところで、小原さんは「大丈夫」と言って体を起こした。

「芝生で寝るから」

 小原さんは立ち上がると、芝生に背中から倒れこんだ。

「痛っ」

 頭が石にぶつかったらしい。小原さんは後頭部を撫でている。

「バカでしょ。ふつうに寝転がれよ」

「天気がいいから気分もよくなって」

「意味が分からない」と言うと、葛西さんは黒烏龍茶を飲んだ。小原さんは両手を頭の後ろに入れて枕みたいにして、もう目を閉じている。僕はカロリーメイトをせっせと食べる。

 葛西さんはスマホを取り出し、「もう四十八分か」とつぶやくと、そのままスマホを操作している。

 僕は背中の後ろに置いていたリュックを引き寄せ、水筒を取り出した。あまり水は残っていない。だから、ほんの少しだけ飲んで水筒をしまい、リュックを後ろに戻そうとしかけて、小原さんがいた場所にリュックを置いていいんだと気づく。

 あれ。

「そういえば。小原さんのリュックはどこにあるんですか」

 眠りかけていた小原さんは、少し間があってから、「え、なんか言った」と言った。

「小原さんは、今日はリュックとかバッグを持ってこなかったんですか」

「え、どういうこと」

「あ、えっと」

 小原さんは僕を見つめている。だんだんと自分がおかしなことを聞いているんじゃないか、という気持ちになってきた。

 葛西さんはスマホを持ったまま、小原さんの周囲を確認した。

「たしかに。お前のバッグはどこにあるんだよ」

「うーん」小原さんもやっと話が分かったらしい。キョロキョロと周りを見ている。「前の教室に置いてきたみたい」

「ヤバいでしょ。取って来いよ」

「まあ、貴重品はちゃんと持ってるから大丈夫でしょ」小原さんは後ろポケットから二つ折りの茶色い財布を取り出し、なぜだか僕たちに見せてくれた。葛西さんは僕の方へ顔を向け、苦笑いしている。

「そろそろ二人は行くんでしょ。その時に、オレもついていくよ」

 小原さんは上半身を起こした。僕は最後の一本のカロリーメイトを半分口に入れた。

葛西さんはスマホを見つめ、「五十分になった。そろそろ行かないと」とつぶやくと、立ち上がりかけた。

「まだでしょ。あと五分は大丈夫」

 小原さんはまた芝生に寝転んでしまった。

「お前は急げよ。もう次の授業の人が教室に来てるでしょ」と言ってるけど、葛西さんももう少しここにいることに決めたみたいで、また座ってしまった。僕は残った半分のカロリーメイトを口に入れた。

「せっかくのいい天気なんだから。もうちょっとここにいないと」

 小原さんは目を閉じてしまった。ため息をついた葛西さんもスマホをしまい、空を見つめている。僕もアゴを動かし続けながら、空を見上げた。

 雲はさっきよりもさらに少なくなり、しかも薄く、空との境界はあいまいで、だんだんとバラバラになりながら、空の中に消えつつある。青いだけの空を見つめているとなんだかめまいが起きそうで、僕は逃げるように視線を下げた。庭の奥で、レザージャケットを着た男性が、毛が短くて茶色い中型犬と散歩している。僕は脇に少し汗をかいている。

 僕はドロドロになったカロリーメイトを飲み込んだ。水筒を出そうと後ろに手を伸ばして、リュックがあるはずの場所に何もないことに不安になってから、横に置きなおしたんだと思い出す。

「もう行こう」と言って、葛西さんは膝を両手でパンと音がするくらい叩き、立ち上がった。目をこすりながら小原さんもゆっくりと起きはじめている。僕は水筒の水を全部飲むと、カロリーメイトの空き箱をレジ袋に入れ、レジャーシートを入れる大きめのレジ袋を取り出してから、リュックを担いだ。

「お前、汚いな」

 小原さんの服には草や土がかなりついている。

「昼寝したんだからしょうがない」と言って、小原さんが体を払いはじめた。舞い散る草や土から逃げるように、葛西さんは入口へもう歩きはじめている。僕はレジャーシートの汚れを払い、丁寧にたたむ。雑にたたむとレジ袋に入らなくなってしまう。

「ずっと裕一君を見ていて気づいたんだ」

 小原さんが変なことを言ってきたから、僕はレジャーシートを落としそうになった。

「裕一君は、青が好きだね」

 大事な秘密を告げるような声だった。

 レジャーシートを持ち直し、レジ袋の中に入れると、僕は「どうしてですか」と聞いた。

英語を教えながら小説を書いています/第二回かめさま文学賞受賞/第5回私立古賀裕人文学賞🐸賞/第3回フルオブブックス文学賞エッセイ部門佳作