1.音を出す原理

(旧サイト「オンラインレッスン」記事のアーカイブです。2017-02-09の記事。)

トランペットで音を出すとはどのようなことでしょうか?

ここでは、トランペット(金管楽器)で音を出すという事(英語ではsound productionと言われる部分)の原理を、簡単に確認してみたいと思います。

発音原理のモデル

私は次のようなモデルで金管楽器の発音原理を捉えています。

Song → Wind → Lips / Mouthpiece / Trumpet
頭の中の音(ソルフェージュ) → 息(呼吸) → 唇 / マウスピース / 楽器 の共鳴

SongやWindという言葉は、アーノルド・ジェイコブス (Arnold Jacobs) の教え “Song and Wind” から来ていますが、私なりにそれぞれを日本語に置き換えると、Songは「頭の中の音(ソルフェージュ)」、Windは「息」となります。

■このモデルの意味すること

このモデルが意味することは、
①全てはまず「頭の中の音」からスタートし、
それを、
②息を介して、
③唇やマウスピースや楽器の振動・共鳴にする。
というのが金管楽器の発音の原理である、ということです。

そしてこれは順序がどこかで入れ替わることがありません。唇を操作することによって息の状態を決めたり(唇→息の順)などの順はありません。

また、それに伴い、前段階での改善の余地が残っていればいるほど、後段階へその影響が及んでいく、ということにもなります。

たとえば、頭の中の音が不明瞭であればあるほど、息や唇や楽器との共鳴の状態に影響が及びます。また、息の状態に改善の余地があればあるほど、唇や楽器との共鳴に影響が出てきます。

Arnold Jacobsと”Song and Wind”

アメリカの偉大なチューバ奏者(シカゴ交響楽団でハーセスらと共に「シカゴの金管」時代を築いた)であり世界中の金管奏者の教育に影響を与えたArnold Jacobs(アーノルド・ジェイコブス)の教えに、“Song and Wind”(ソング・アンド・ウィンド)ということばがあります。

Song

Song とは、日本語で「歌」ですが、ここでの「歌」は、音の全ての要素を含んで、「歌」という意味なります。
音の、高さ(ピッチ)・音色・発音・リズム・アーティキュレーション・大きさ・重さ・フレージング(歌い方)など、全ての要素を含んだ、「歌」です。

Wind

Windとは、日本語では「風」と普通は訳されますが、「空気が動いていること」を意味する言葉です。これはトランペットの文脈で言い換えれば、「息の流れ」です。息の動き、動き続けている息、です。

トランペット(管楽器全般)は、息の流れが音を生み出します。息の流れが、唇を振動させ、楽器を共鳴させ、音を生みます。

Song and Wind

このふたつをつなげると、”Song and Wind”とは、「頭の中にある音のイメージ・『歌』を、息の流れにのせて音にする」と理解することができます。そしてこれがトランペットで音を出す原理だと言うことができます。

この原理の理解は、無理なく音を出すということのために、そして「基礎」や「技術」と「音楽・演奏」とがいつもつながっているためにも、非常に重要となります。

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