歌舞伎座へ
日曜日の夜、母を『十二月大歌舞伎』に連れて行った。
今回チケットを購入した第四部は、近松門左衛門作 『日本振袖始 大蛇退治』。坂東玉三郎や尾上菊之助が出演する、公演時間1時間弱の演目。
「母の体力を考えると、このくらいの長さがちょうどいいかな……」という目論見があったのと、「坂東玉三郎なら安心して観られるな」という考えから、某チケットサイトで1,000円引きのチケットを購入。
なるべく長い睡眠をとらせ、外出直前まで家で休ませ、いざ夕方に家を出たものの、寒さもあってか母は最寄りのバス停まで歩くのにも難儀する始末。
バスと地下鉄2本を乗り継いだが、銀座駅で丸ノ内線から日比谷線へ乗り換える際に少々手間取った。エスカレーターはあるが、エレベーターに乗るにはいったん改札を出なければならないのだ。
エスカレーターは、下りは母が手すりにつかまらないで乗ってしまい、転落して怪我をする危険性があるので、なるべく乗らせたくない。特に、銀座駅の日比谷線ホームへのエスカレーターは長いので、とても危ない。
どうにか東銀座駅へ着き、歌舞伎座の1階にたどり着いた頃には、公演は既に始まっていた。しかも、母は歩き疲れたのか意識レベルが低下しかけていた。
案内係の方達の提案もあり、「このまま席についてもまた救急車を呼ぶ羽目になる」と判断して、ひとまず車椅子に乗せ医務室で休ませてもらうことに。常備されているという『ポカリスエットイオンウォーター』を頂いて水分補給をさせ、30分以上座ったままでいた。
最終的には、「消防法の関係で5分程度だけですが」ということで、1階の舞台上手側の通路脇にあるスペースで車椅子のまま観劇をさせていただけた(写真は、終演後にその場所から写した舞台)。
母は、若い頃は歌舞伎座に足繁く通っていたらしい。宝塚歌劇も好きだが、歌舞伎にも親しんでいたようだ。
今回、母を歌舞伎座へ連れて行ったのは、
「いつまで元気でいてくれるかわからない」
「いなくなってから『連れて行ってやれば良かった』と後悔したくない」
という私の思いがあったからだ。
残念ながら演目を最初から最後までキチンと観ることは叶わなかったが、ひとまず久しぶりの歌舞伎の舞台や歌舞伎座という空間を感じてもらうことはできたかと思う。
帰り際、案内役の方にいろいろ伺った。
私が今回チケットを取った、2階の前から3列目(1等席)は、エレベーターで2階へ上がってから何段も階段を下りなければならず、高齢者の足への負担が大きいという。むしろ、舞台を見づらくはなるが最後列を選んだほうが、下りる階段が1段で済むので着席も楽とのこと。
また、今回提供してもらったのとは反対側、つまり舞台下手側に車椅子用の席があるという(通常は2席、今は新型コロナウイルス感染対策で1席に減少)。そちらは、1階でありながら、2階の最後列と同じく2等席の料金だという。上の階への移動の手間がないばかりか、階段を下りる必要もないので、同じチケット代を払うならそちらのほうがトクだ。
なお、この車椅子用の席はインターネットでの販売は行われておらず、電話(チケットホン松竹)での販売のみだという。1席限定とはいえ入手困難というほどではないらしいが、早めに買い求めたほうが良さそう。
案内係の方々には、いろいろ親切丁寧に対応していただけた。おかげ様で、帰る頃には母も少し回復することができた。「また来てくださいね」と手を振ってくださって、本当にありがたい。
私としては、これを母の最後の観劇にはしたくないので、季節や演目・出演者を考慮しながらぜひもう一度連れてきたい。今度は、教えていただいた車椅子専用席で。
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