先生との別れ

10年間にわたって母の認知症を診てきてくださった先生が、遠方への転勤に伴いクリニックを去ることに。この土曜日(12月5日)に、最後の診察へ行ってきた。

私は当初、母を別の病院にかからせていたが、担当医(若めの女性)のやけに高圧的な態度に介護者として徐々に嫌気がさすようになった。その年の暮れ、母は突然気を失って倒れ年末年始を病院のベッドで過ごす羽目になったのだが、それをきっかけに「もっと家から近い病院に通わせたいから」という口実で別の病院へ転院させた。その際に出会ったのが、今の先生だ。

その後、先生はその病院を離れることになり、しばらくは所属先が決まらない状態が続いたが、その間ももともと所属していた研究室のある大学の病院で診てもらうなどしていた。

最終的には今のクリニックに落ち着くこととなったが、「30分じっくり話を聴く」という先生の診療スタイルに対してクリニックは患者に5,000円の診療費(保険対象外)を課してきた。それでも、「どうしても先生に診てほしい」という思いから、あえてそれを甘んじて受け止めてきた。

しかし、今回は先生が東京から少々離れた地(先生の地元だという)にある公的機関(医療機関ではない)への転勤ということで、受診を続けることは叶わなかった。

これは私の口から先生に直接お伝えもしたけど、先生の言葉に介護者としてどれだけ救われてきたことか。
私が母の自宅介護を続けることができたのも、先生の存在があってこそ。端的にいえば、介護者とは別の視点からの物の見方や、「介護者として自信を持ちなさい」「あなた自身のことも大事にしなさい」というエールを、先生は毎回私に贈ってくれた。

来年から受診することになるクリニックの名前を伝えると、「あそこの院長先生は私の先輩」とのこと。そういえば、所属されていた研究室は同じ大学だ。クリニックの開業時には、先生も見学にも行かれたことがあるそう。
人と人とは、どこでつながっているかわからない。

私はずっと自宅介護を貫いてきたけど、先生曰く「あの人なら人間の多様性に理解があるし、きっとそういう介護のあり方にも理解があるだろう」とのこと。実に心強い。

お別れするのは残念でならないし、先生としても、母を最後まで診たいという意向を持ってくださっているのは私にもわかったが、事情が事情だけに仕方がない。
本当にお世話になりました。心から御礼申し上げます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?