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ひとかたまりの雲

ひとかたまりの雲は

風に流されてどこに行くのだろう


冬の冷たい大気の中で

ぎゅっとかたまって

しっかりとよりそって

ひとつの方向へ流れて行くのだけれど

やがて寒さがゆるみ

春が近くなって

ゆっくりとあたたかさにつつまれれば

かたく結び合っていた雲は

そろそろとほどけてゆき

ふわりと広がってゆき

やがて

大気の中に

その色さえ溶け込んでしまう


過酷な冷たさが

雲をひとかたまりにしていたのに

やさしいあたたかさが

団結をほどいてしまうのだ


細かなひとつぶひとつぶになって

雲はどうなるのだろう

雲はどうするのだろう


広い世界をみるひとつぶ

果てに放り出されてしまうひとつぶ

霧散してしまうひとつぶ

たったひとつぶで

どこまでもどこまでも


春、夏、そして秋

さまざまな環境にさらされて

また冬になれば

再び結び合えるのはどれほどなのだろう


ひとかたまりの雲

ひとかたまりでありながら

ひとつぶひとつぶである雲

ひとつぶひとつぶそれぞれの

来し方行く末を

思う

また、冬

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