CTNNB1変異型肝細胞癌について

肝細胞癌における遺伝子変異
・TERTプロモーター領域の変異(42-60%)
・TP53変異(12-48%)
・β-cateninをコードするCTNNB1の変異(11-37%)

  (TP53変異とCTNNB1変異はおおよそ相互排他的に認められる)


CTNNB1変異型肝細胞癌の特徴
 組織像:偽腺管構造、胆汁栓形成、線維性被膜
 Gd-EOB-DTPAを細胞内に取り込むOATP1B3の発現増強を伴うことが多い
 EOB造影MRI肝細胞相画像である程度予測可能

CTNNB1変異は免疫組織化学的にはβ-cateninの核内集積、glutamine synthetase (GS)のびまん性強発現の確認により判定

細胞質内のβ-cateninの量はユビキチン-プロテアソーム系により調節を受ける
β-cateninのExon3に含まれる複数のセリン/スレオニン残基をGSK3α/βがリン酸化するとE3ユビキチンリガーゼであるβ-TrCPに認識され速やかにプロテアソーム系に分解される。
CTNNB1変異ではβ-cateninのExon3に変異が生じるためβ-cateninが分解されず、細胞質内、核内に集積する。
核内に移行したβ-cateninは転写因子TCF/LEFと複合体を形成し標的遺伝子を発現させる。
GSはβ-cateninの標的である。
従って、CTNNB1変異では免疫組織化学的にはβ-cateninの核内集積、glutamine synthetase (GS)のびまん性強発現がみられる。

CTNNB1変異型肝細胞癌は腫瘍内へのリンパ球浸潤が乏しい(immune-low)。
免疫チェックポイント阻害剤が治療効果を発揮するには、腫瘍内に腫瘍を認識する細胞障害性CD8T細胞の浸潤がみられ、それらCD8T細胞がPD1/PD-L1(L2)系により抑制されていることが前提と考えられる。
従って、CTNNB1変異型肝細胞癌は免疫チェックポイント阻害剤に不応なタイプの肝細胞癌である可能性がある。


βカテニンについてのページ

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene?db=gene&cmd=Retrieve&dopt=Graphics&list_uids=1499


参考文献
肝胆膵 83 (2): 189-195, 2021
紅林 泰, 坂元亨宇.
免疫療法と免疫微小環境 -β-cateninサブタイプを中心に-


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