見出し画像

ICT支援員として今思うこと──MIEE2年目を迎えるにあたって

前回の記事では、マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)としての1年間の活動を振り返ってきた。
今回は、MIEE2年目というタイミングで、MIEEとは直接関係なしに今の仕事について思うところを率直に述べていきたい。

ICT支援員という仕事から、早く足を洗いたい

ICT支援員として働いていると、各校のICT支援員を取りまとめる民間企業から、教育現場へのICT導入に向けた営業的な動きを要求される。

その際に、こんなアドバイスを受けたことがあった。

「先生方との距離を近づけるには、“ICT支援員通信”なるものを作って、職員室で配布するのがいい」

これについて、私に言わせれば
ICT支援員通信だって? そんな生ぬるいことをやってたって、いつまでも職員室は変わりゃしねぇよ
というのが本音だ。

1枚の紙っぺらにちょっとしたこと(Tipsなど)を書いたところで、伝えられる情報なんてごくわずか。
手に取った教員からは、「ふーん」って鼻で笑われて終わっても無理はない。
教員のご機嫌を伺いながら情報を小出しにしたってね、しょうがないんですよ。

では、なぜそうなのか。
教員の中には、「部外者」「教員免許不所持者」とICT支援員を見下す手合いがいるから。
たとえ口には出さなくとも、何かの拍子に態度に出る。

そういう教員達と渡り合っていくには、スキルや専門的知識などの“武器”を身につけるなり資格を取るなりして、自分に箔を付けることで強くなっていくしかないんですよ。

もっとも、ここまでしてもICT支援員というポジションにはやはり限界があると思いますよ。授業をしている先生方に比べて、生徒と関わり合う頻度や関係性の深さがまず違う。何かあった時にしか話をする機会がないから、一人ひとりの顔と名前を覚えにくい。
ちなみに、ICT支援って教員相手だけじゃないですからね。生徒相手も大事な要素。

私の場合、今春から自治体の直接雇用になって、派遣社員の身分ではアクセスできなかった生徒の個人情報(=氏名)を閲覧できるようになった。これによって、たとえ顔を合わせる機会が少なくとも生徒を名前で呼びやすくなり、格段に仕事がやりやすくなった。
「X年Y組Z番さん」よりも「◯◯さん」のほうが、生徒との心の距離が近づくしね。

マネージャー気質の人にこそ向いている仕事

初めに断っておくけど、ここでいう「マネージャー」とは、システム開発のプロジェクトを司るPM(プロジェクトマネージャー)ではない。
学校や企業の運動部で、部員の身の回りの世話をする人のことを指している。
男所帯の運動部に一人か二人いて、ユニフォームの洗濯などを甲斐甲斐しくこなしている女性の方をイメージしていただくとわかりやすいだろう。

ICT支援員は教員をサポートするのが本分とされているから、専ら「裏方」「縁の下の力持ち」として働くことを厭わない気質の人に適性があるだろうと思っている。

ただ、スキルなり専門的知識なり蓄えていくと、ことICTに関していえば教員よりも自分のほうが詳しくなる。ICTに関心が薄く旧態依然とした授業を続けている教員相手であれば、なおのこと。

その結果、「教員>ICT支援員」という上下関係はもはや成り立たなくなって、「ICT支援員>教員」と主従が逆転するのは必然。
そうなると、教員向けの研修を開く際など、「自分が教員の方々をリードしていく・啓蒙していく」という気概がないと仕事は務まらない(ただし、「先生よりも自分のほうが物を知っているんだ!」という驕りは禁物)。

「ICT支援員として、先生方を支えるのが大好きです!」と言い切れる人は、それはそれでいい。決して否定はしない。
でも、私はそれでは満足できないし、そういうポジションを甘んじて受け入れ続けることはできない。
教員の中には、自分より一回りも二回りも若い人だって少なくないしね。

ICT支援員として楽しく働けるのは巡回型? 常駐型?

ちなみに、常駐型でICT支援員の仕事をしていると、その学校の人間関係がいろいろと見えてくる訳ですよ。
例えば、先生同士の人間関係(常勤の教員が時間講師の先生を見下す構図)もその一つ。

巡回型の仕事では、そういうものは見えてこない。
目にするのは、ごく表面的な部分だけ。

私自身、ごく短期間そういう働き方をしたことがある。
でも、仕事に張り合いが感じられなかったのと、ちょうど今の勤務先での仕事が見つかったことで、2ヶ月ほどで辞めてしまった。

一つの学校に根を下ろして、先生・生徒の人間関係の渦中に入ってそこから現場を変えていくことにこそ、この仕事のやり甲斐がある。
少なくとも、私はそう信じている。

ヒエラルキーの下層にいるのは、もう真っ平ごめん

20代の頃、私は大学病院で事務員として働いていた。
自ら望んだ訳ではなく、結果としてそうなっちゃっただけのことだけど。

そこで、病院というヒエラルキーの下層で働くことの悲哀を嫌というほど味わった。

どんなに年齢が自分より下でも、病院で偉いのは医師、次いで看護師。その次にコメディカルスタッフ(放射線技師・検査技師・薬剤師etc.)やソーシャルワーカーがいて、事務員は一番下。

それも無理はない。
医師にしろ看護師にしろコメディカルスタッフにしろ、皆国家資格を持っていなくては務まらない。ソーシャルワーカーも、社会福祉士の有資格者が一般的。
何の資格がなくても務まるのは、事務員だけ。

50代にもなって、またそんな環境で働きたくないんですよ。
だから、ICT支援員という今のポジションに甘んじることなく、もっと上を目指したいと思っている。

先生方よりも、生徒達をサポートしたい

教育現場でのICT化推進って、どうしても「教員をいかに感化させるか」に目が行きがち。
でも、本当にそれだけでいいのか。

ICT化推進の流れに、生徒が取り残されているんですよ。

入学前に通っていた学校や家庭環境によって、ICTのスキルはバラバラ。

キーボードの取り扱いにしても、一つ一つのキーの位置は知っているけどタッチタイピングが覚束ない生徒だって珍しくない。

それに、ファイルの取り扱いにも慣れていない。
ネットからダウンロードしたファイルがいつまでも「ダウンロード」フォルダに残ったままだったり、ファイルをフォルダ分けして整理していなかったり。
それに、不測の事態に備えたバックアップの仕方もよくわかっていない。

そんな中で、見よう見まねでPCの使い方に習熟していってる。

各教科の先生が自分の授業の中で上記のようなことを教える機会や時間的余裕がないのであれば、ICT支援員がその辺りをフォローするしかないと思う。

教員の中には、ICTを「とりあえず使えりゃいい、それ以上難しいことは面倒だから覚えなくてもいい」と考える御仁も少なくない。
それなら、生徒へのサポートに力を入れたっていいんじゃないか?

ちなみに私は、校内で先生方からあまり関心を持たれていない(私としてはそういう認識でいる)のを良いことに、ある意味自由気ままな動き方で働かせてもらっている。

ICTに関する生徒達の指南役であったり、ナビゲーターであったり。
時には、アジテーターになるかもしれない。

教員免許を持ってないので、「先生」と呼ばれるのは烏滸がましいし、そう呼ばれたいとも思っていないが。

MIEE2年目は、この考えを具体的な形にしていく取り組みに明け暮れることになりそう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?