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目の前にいる高畑勲を無視する僕 

ノルシュテイン氏と会話


実を言うと、ノルシュテインの作品は好きだったけど、ノルシュテイン自身には興味はなかった。いまでは彼とたくさん話したいと思うけど、彼の作品に引き込まれ過ぎていてそこに人間の手が加わったと考えるのが非現実的に感じて、彼の存在すら忘れていたからだ。
 
だから彼を目の前にして僕はどうしたらよいかわからなかった。 高畑勲とノルシュテインの対談が終わると、夢にも思わなかった彼らを交えた会食パーティーがはじまる。対談に来た人はみんな参加できた。
 
高畑勲とノルシュテインとお客さんたちと立食パーティーが開始されるのだった。
 
「火垂るの墓」を素晴らしいと思う僕がいたのに、高畑勲と話をすることに全く興味がなかった。
 
彼はリフレッシュメントをもぐもぐしながらノルシュテインやファンらと話している。 この時は宮崎駿がジブリアニメでは重要で、他の人はあまり関係ないとか考えていた。絵が描けない人がなんで監督できるのか?というような考えをしていた。
 
今思えばあの時高畑勲と話ができていたらとよかったと思う。
 
多忙な勲氏、つかまえてその時話せたとしても、一瞬であったでしょう。 彼は会場をすぐに去っていった。
 
ノルシュテイン氏は疲れていたのか、床に座っている。 そこで僕は彼にたまたま持っていた絵のポートフォリオを見せに行った。
 
うちの母も話したくて近くによってくる。ノルシュテイン氏が語る僕の絵についての感想を通訳の人がその場で訳してくれる。
細密に描かれた東京の実家の庭の絵に対して、
「これは良いかどうかはべつとして、とてもプロフェッショナルな仕事だ」
 
写実的な絵と表現主義的絵を比較して、
 
「ぼくはこの絵よりも、この絵の方が好きだ」
 
などと話してくれた。
 
将来のことなど、特にアドバイスをしてくれた記憶はない。 好きにやりなさいと言われたかもしれない。 作家に興味がないとか思っていたけど、緊張してあまり覚えていない...
 
そしてパーティーは静かになっていき、スタッフは食事を片付け始める。
 
ぼくらは映画館の一番上の階にある、薄暗い部屋に移動する。
 
続く>

Artwork by Satoshi Dáte

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