フランケン

人造人間の苦悩

「フランケンシュタイン野望」
(ディーン・クーンツ著、ハヤカワ文庫、2011)

久しぶりのクーンツ先生。過去の作品のうち自分のなかでの最高傑作は「ウォッチャーズ」ですが、「フランケンシュタイン」どんな感じでしょう。もともとテレビドラマの脚本だったもを小説に書き直したそうです。

■ 1、せすじも凍る、あらすじ

フランケンシュタインは寓話ではなく事実だった。博士は名前を変え自らを改造し生きながらえ、人造人間による世界征服をたくらんでいた。表向きは科学者として生活しているが、その妻も使用人も、彼の研究施設で働く人々もすべて人造人間。さらに博士は国中に人造人間を紛れ込ませている。殺人事件を追う刑事、自閉症の子供、研究所から抜け出す「新人類」、博士を狙う人造人間、マッドサイエンティスト、連続殺人鬼、人造人間の葛藤。人類と人造人間の前面戦争。全5冊シリーズの幕開けです。一冊完結ではなく完全続き物です。

■■ 2、さっくり感想

映画のような場面転換、別々な場所で進行していく複数並行ストーリーが、じわじわと収束していく面白さ、個性的な登場人物とダークな雰囲気でクーンツ作品の魅力がたっぷり味わえる一冊です。ただし、ガンガン猟奇殺人出きますし、マッドサイエンティストがヤバイ。人造人間のシュールな習性や、復讐劇だったりと、暴力的、倒錯的描写も多いので苦手な方はちょっと覚悟が必要です。

■■■ 3、クーンツ作品といえば

心に闇を抱えた主人公、その闇が増幅し現実になったような恐ろしい出来事に遭遇する。勇気を持って恐怖に立ち向かい、仲間との出会いを通して暖かな感情が生まれる。とはいえ物語全体を通して薄いダークさが包む。そんな感じです。一方、この作品はなかなかどうしてグロいし暗い。おそらく今後の展開で、感性の鋭い自閉症の子供や、人造人間たちの葛藤などが、和ませてくれるのかもしれませんが。一冊目が気に入れば続編もぜひ。 

■■こちらは子供向。ソフトですがダークな感じが充分味わえます■■

■■■■ 4、人造人間じゃなくても悩む

人間より、肉体、頭脳ともに優れた人造人間たち。主人に服従するために作られたことを、生まれた瞬間に悟るわけですが、旧人類と呼び見下している人間たちの本を読んだり感情に触れ、自身の存在への疑問や、人類への羨望などの苦悩を抱くようなっていきます。

もっとも、人造人間じゃない僕も現在「自己成長したい」「自分を変えたい」「学びたい」「健やかかに働きたい」「人間関係を良くしたい」ことについてどうすればいいのか悩んでいます。人造人間がだんだん「心」を獲得していくことで博士の意に背いていくわけですが、それは変化や成長をしているからかもしれません。僕も人造人間に負けてられません。


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