夢百夜話-ユメヒャクヨバナシ 第4夜
奇妙な夢のせいで寝不足だ。ぼおっとする頭で机に向かっている。夢の中と違い、人でごった返しうるさい。ふと、隣の席に目がいった。
……埃がうっすら積もっていた。
手を伸ばし引き出しをあけてみる。
「コウダイ、ユウタはどうした?」
前の席に声をかけたが不審な目が返っただけ。
「先輩、ユウタって誰すか?」
少しの間の後の返事がこれだった。
「この会社にユウタって名前の奴いませんよ」
後ろからも返事が返り背中が冷たくなった。俺はユウタを知っている。前に座っているコウダイより数ヵ月遅れの入社でコウダイはユウタを弟のように可愛がっていた。いつも一緒にいた。いた、はずだ。
「最近どうしたんです?自分の名前間違えたりいない人いるて今度は言い出して。」
サエコは笑いながらコーヒーを差し出す。
「さんきゅ。いない?ユウタ」
受け取ったコーヒーすすりながらもう1度聞く。答えはなくてもわかった。周りが妙な笑いをしている。十分な、はっきりした答えだ。何かがおかしい。自分がおかしいのか周りがおかしいのか?何が起きている?俺はユウタを知っている。そして、あの夢の中でユウタにあったのだ。
作品は観る者がいないと成立いたしません。観る者が1人でも成立いたしますが多ければそれだけ物書きという者ははりきるのです。観る者が育てるという役を選んでくれたなら物書きは安心して書くができるでしょう。