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この本にこめた思い

がん治療について解説した初の著書を4月2日に出版します。この本は、勝俣範之先生と津川友介先生と3人で執筆した共著となります。

書籍表紙

  世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療

この本には、日本のがん患者さん・家族・友人が置かれているひどい状況を変えたいという熱い思いが詰まっています。


あれは、3年ほど前のことです。私が日本に一時帰国した時に、何気なく本屋さんに行って、がん書籍のコーナーを訪ねた時のことでした。

私は棚に並ぶ本を見て愕然としました。

「OOでがんは治せる」「がんを治す奇跡のOO治療」のような怪しい本が大量に並んでいたのです。

多くは日常生活で簡単にできるような行動(体温を上げるとかなど)を取り上げて、それでがんを治せると主張するものです。もちろん、そんな簡単な行動で治せるほどがんが簡単な病気なら、誰も困っていないわけで、専門家視点でみると失笑せざるを得ないものばかりでした。

しかも、それらの本の中には、病院で行われている標準治療を信じてはいけない、それをすると命を失う、この本で紹介している治療を信じて、それだけを行いなさいという、恐ろしい主張までもされているのがありました。

この本を患者さんが手にしたら、この本の内容を信じてしまったら。。。

しかも、さらに驚愕したのはそれらの本が良く売れているという事実です。本屋さんでは平積みされていて「売れています」と書かれていて、実際にアマゾンのがん書籍ランキングをみると、それらの本ががん書籍の上位を締めていました。

私は背筋が凍る思いがしました。こんな恐ろしい現実が日本にはあるのかと。患者さんの命を危険にさらすような本が平然と売られている。

日本を含めて、世界の病院で一般的に行われている標準治療を解説する書籍はないのかと調べると、いくつかは見つけることができました。ただ、残念ながら売れている様子ではなくて、明らかに怪しい本の方が書棚を占拠していました。

この現実を何とかして変えないといけない。怪しい情報が広がることは患者さんの命を危険にさらす。

私は書籍を書きたいと思いましたが、すぐに実現するのは難しかったです。なぜなら、がんを網羅的に解説しようと思うと、本当に多くの知識が必要で、とてもがん研究者である私一人の知識では補いきれないと感じていたからです。少なくともがん専門医の医師の知識と、追跡データ解析の専門家である疫学研究者の知識が必要だと思っていました。ツイッターやブログでの情報発信を続けながら、そのチャンスを待ちました。

書店での衝撃的な事件から1年半ほど経った頃に、その機会は突然やってきました。

津川先生がメッセージをくれて、勝俣先生を含めた三人で一緒にがんの書籍を作らないかという話を下さったのです。

「これだ!」と思いました。ついに戦いの火蓋は切られたと。

日本医科大学教授の勝俣先生は日本を代表するがんの専門医です。また、SNSでがん患者さんに寄り添った情報発信を熱心に行われている思いやり溢れる医師です。津川先生はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授で、まさに世界を舞台に活躍する疫学研究者です。また、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)というご著書を出され、10万部を売られたという実績もお持ちで、科学の話を一般の人に伝える豊富な経験をお持ちです。まさに、これ以上のメンバーはいないと思いました。

また、お二人の先生方は、日本のがん書籍の問題について、私と全く同じ危機感を抱いておられて、この現状を変えるための書籍をなんとか世に出そうという強い思いをお持ちでした。

日本のがん書籍の現状を変える。こうして、プロジェクトはスタートしました。

そこから、約1年半の年月をかけて、私達三人の知識の全てをつぎ込んで書き上げたのが本書です。本書を読んでいただければ、病院で行われている保険適応される標準治療はいかに信頼のおけるものなのか、それ以外の未承認治療を過信しすぎては危険な理由がわかっていただけると思います。


最後に、この本の目次を紹介したいと思います。がんには膨大なトピックがあって、その何を紹介するかはとても難しい選択でした。そこで、我々が重視したのは患者目線です。医師が治療を選択する上で何が大事かなどの医師目線ではなくて、患者さんががん治療と向き合った時に、何に不安になって、何を知りたいのか。どんなことが間違いやすいのか、患者さんが本当に知りたいことを中心に解説しました。

例えば、本書では患者さんが気になる食事について大きくページをさきました。「がんを治せる食事はあるのか?」は患者さんが最も気にする話題の一つです。健康な方々が気ににするのは「がんになりにくくする食事はあるのか?」です。それについて、データを基にして徹底的に解説しています。また、怪しい情報を見抜く方法だとか、正しい情報をどのように見つけるのかなどの、情報収集法についてもかなりの分量をさいています。

患者さん、その家族、その友人、そしてまだがんとは関わっていない人まで、多くの人ががんについて、重要なエッセンスを勉強できる教科書になっていると思います。

ぜひ、ご一読いただけますと嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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   『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療

            4月2日発売!予約受付中!

書籍表紙

科学的根拠に基づいた、いちばん正しいがんの本! 「抗がん剤治療のパイオニア」「新薬開発の専門家」「医療データ分析の専門家」の3人が、現時点で最も効果が期待できるがんの治療法とは何かを可能な限りやさしく、かつ「トンデモ医療情報」が見分けられるほど詳しく説明。がん解説本の決定版!

目次抜粋

はじめに がんになったらどの治療法を信じればよいのか

第1章
「最高のがん治療」はどのように決められるのか

1万個に1個しか残らない! がん治療薬を選抜する4つのプロセス
「マウスに投与したら効いた!」を信用してはいけない
「新しい治療法であるほど効果が期待できる」わけではない
標準治療は「スーパーエリート」の治療法
「余命2年のところ5年も生きた奇跡の治療法」を信じてはいけない
ノーベル賞級の治療薬でも、個別の例だけ見ると効果を見誤る …など

第2章
「最高のがん治療」では何をするのか

効果を徹底的に検証された3つの標準治療
抗がん剤がまったく効かないがんはない
「日本での承認の遅れ」はわずか0.4年
「緩和ケア」は最後の手段ではなく、第4の治療法
「免疫細胞療法」とオプジーボはまったく別物
「免疫療法=副作用が少ない」は間違い …など

第3章
食事やサプリでがんは治るのか

糖質制限でがんは治るのか
「コーヒー浣腸」には死亡例も
治療後のがん患者さんがとるべき理想の食事とは
大腸がん患者さんは生存率をあげた食事とは?
「がんに効果あり」と言われている4つのサプリを検証する
サプリは抗がん剤の効果を弱める可能性がある …など

第4章
どうしてがんができるのか

タバコを吸わなくても、親ががんでなくとも、がんになる人がいる
がんの原因は「プログラムエラー」の蓄積
がんができる3大要因とは
偶然発生するがんが意外と多い
「がんになったのは過去の生活習慣のせい」は言い過ぎ …など

第5章
「トンデモ医療」はどうやって見分けるのか

教育レベルや収入が高い人ほど、怪しいがん治療法にだまされやすい
インターネット上の情報を信じ込んでしまう4つの理由
「本に書いてあるから正しい」と信じるのは危険
信頼できる専門家の2つの特徴
科学的根拠に基づいた8つの情報源
トンデモ医療を見分ける6つのポイント …など

第6章
どうやってがんを見つけるのか

がんが疑われる4つの症状
受けるべきがん検診はこの5つ
検診が有効ではないがんがある
「急速がん」は検診で見つけられないが、抗がん剤がよく効く
「超のんびりがん」は、見つけてもがんで亡くならない
前立腺がんの60%は進行しない …など

第7章
がんを防ぐために普段の生活で何ができるのか

がんになるリスクを上げる2つの食品
肥満はがんになるリスクを上げる
がんになるリスクを下げる5つの食品
お酒は少量なら体によい? 悪い?
運動は大腸がんと乳がんになるリスクを下げる
ストレスはがんを引き起こすのか? …など

おわりに この本は「情報のワクチン」である

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