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岡江久美子さんの訃報に接して

女優の岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎で、お亡くなりになったという報道を聞きました。乳がんで闘病中であったことは以前から存じていましたが、まさかこんなことになるとはと驚きました。心からご冥福をお祈りいたします。

ニュースを聞いてショックを受けているがん患者さんやその家族の方もいるかと思いますので、この報道に関して少し追加の解説をさせてもらいます。


がん患者が一律にリスクが高いとは言えない

報道ではがん治療が影響したのではと伝えていますが、詳細な病歴がわからない以上は、因果関係がどの程度あったかは不明です。

たしかに、がん治療の一部は免疫細胞の数を低下させて、感染症への防御力を一時的に落としてしまうものがあります。しかし、がん治療も大変に種類が多く、また人それぞれで全身状態も違うため、免疫低下の状態は患者さん個人個人で大きく違います。

がん患者さん全員が同じように高いリスクがあるとは言い切れませんので、その点は誤解をされないでいただきたいと思います。

主治医から「免疫低下があるので、感染に注意をしてください」と言われているような方は高いリスクにある方と言えるかと思いますので、一層の注意を要します。また、がん患者さんは新型コロナの重症化リスクが高いと言われる60歳を超えている方や、他の持病を持つ方も多いため、基本的に注意をする必要があるのはもっともです。


慌てずに感染防御を

がん患者さんも報道を見て、ますます不安になっていると思いますが、慌てずに手洗い・マスク・3密を避けるなどを続けていただければと思います。

感染防御をしっかりしていれば、決して危険度は高くないのではというデータも出ています(Hrusak, O., et.al. (2020). European Journal of Cancer 132, 11-16.)。小児がんで抗がん剤治療をしている患者さん約1万人を調査した結果が出ていて、免疫抑制状態の人を多く含んでいるこの群でも、9人しか陽性は確認されておらず、そのうちの8例は無症状か軽症だったとされています。残りの1例は経過が不明です。

このデータは、限られた検討であることや、重症化しにくいと言われる小児の検討であるため、どのように解釈するかは難しいですが、ここから推察されることとしては、すでにリスクが高いと思って、しっかりと感染防御をしていれば、リスクの高いがん患者でも、十分に予防効果は得られるのではということは言えると思います。この調査に含まれる症例では血液がんの患者さんが多くて、感染リスクが大変に高いことが知られているため、良く感染防御の指導をされて、本人も家族も十分に注意をしていたと思われます。


周囲の方も注意をして下さい

がん患者さんはすでに気をつけている方が多いと思います。まだ注意していなかったという方はこれから注意をしてもらいたいです。あと心配なのは、がん患者さんの家族、またがん患者さんの家族と接することがある方です。

一般的にウイルス感染は活発に活動している方を介して広がっていきます。がん患者さんが注意していても、同居する方や、同居する方に接することがある方が持ち込んでは防ぎきれません。ぜひ、周囲の方が一層の注意をしてあげてもらいたいと思います。

このことは、がんに限らず、高齢者と同居する方、その他の既往疾患(心疾患、呼吸器疾患、糖尿病など)を持つ方と同居する方も注意をしてもらいたいと思います。その方達を守るためにも、不要不急の外出を控えることや、会社も従業員に配慮をして欲しいと思います。


治療継続については主治医に相談を

あと、がん患者さんに対してのアドバイスですが、このようなニュースを聞くと、心配になって病院通院を自分で控える方も出てしまうかもしれません。ただ、待てないがん治療もあるので、必ず主治医とよく相談をして、受診・治療をどうするかをよく相談してもらいたいです。

がん治療を継続するか、一旦延期するかには、高度な医療判断が必要です。その詳細については、以前の記事に書いていますので、ご参考になさってください。


本当に大変な状況ではありますが、がん患者さんと周囲の方の努力で、この難局を乗り切ってもらえればと願っています。この記事が何かの参考になれば幸いです。

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