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信用創造④銀行が預金を集める2つの理由について


準備預金制度のおさらい

銀行が信用創造によって新たに預金を生み出した時、現金の引き出しに備えて預金の一定割合の日銀当座預金を新たに持つ必要があります。実際には手元にある現金を日銀に預けるのではなく他の金融機関から日銀当座預金を借りることなどの方法を採っています。

銀行からお金を借りた人は何らかの目的があって借りたのですから、借りたお金はすぐに他の銀行に振込をすることが多いです。すると、お金を貸した銀行にとっては準備しなければいけない日銀当座預金残高が下がることになります。

その一方、振込を受け入れた側の銀行は預金残高が増えるため、準備すべき日銀当座預金残高が高くなりますし、利息を払わなければならないことになります。なんとなく、不公平な印象をうけませんか?銀行間の資金移動で不公平が生じないようにどのような調整がなされているのでしょうか?

全銀システム、日銀ネット

銀行間で振込を行う際、全国銀行データ通信システム(通称:全銀システム)というシステムを使って、現金そのものを動かすのではなく、振込人の口座から受取人の口座に預金残高を移転させる処理を行っています。

銀行は毎日多数の振込を処理していますが、振込による入金と支払を比べて支払の金額が大きかった銀行は銀行全体の預金残高が減ることになります。逆に入金の方が大きかった銀行は預金残高が増えることになります。銀行間での振込による預金残高の増減は日銀ネットという仕組みを使って日銀当座預金を振替えることで調整されます。



簡単な事例を見てみましょう。上に表示した図は、三菱UFJ銀行から三井住友銀行に100万円振込を行った場合を示しています。三井住友銀行にとっては預金が増えることによって、負債が100万円増えることになります。逆に三菱UFJ銀行は100万円負債が減って楽になった状態です。

そこで、三菱UFJ銀行は日銀当座預金を使って100万円を三井住友銀行に支払います。日本銀行の中にある三菱UFJ銀行の口座から三井住友銀行の口座に100万円が振り替えられる、ということです。そうすることで、三井住友銀行は日銀当座預金という資産が100万円増えますので、預金という負債が100万円増えたこととバランスが取れることになります。

このような日銀当座預金の残高を調整したうえで、銀行は預金準備制度に基づく日銀当座預金の残高の基準をクリアする必要があるのです。

なぜ銀行は預金集めをするのか?

理由①銀行自身の手元資金を増やすため


銀行は他の銀行からの振込を受け入れることによって預金が増えると、自らの負債を増やすことになりますが、その分、日銀当座預金残高を増やすことになります。日銀当座預金残高は銀行が日銀や他の金融機関との資金のやり取りをする際に使用する手元資金になりますので、支払いに支障をきたさないように十分な量を確保する必要があります。これが、銀行が預金集めに力を入れる理由の一つ目です。

理由②預金者との取引を拡大するため

 次に、銀行は個人や企業の預金口座を開設し、預金を集中させてもらうことにより取引を拡大し、収益を上げる必要があります。例えば、預金を原資に投資信託を購入してもらったり、住宅ローンを組んでもらったりするためには自分の銀行に預金口座を持ってもらう必要があるのです。これが銀行が預金集めをする2つ目の理由です。

ただし、勘違いしてはいけないのは、預金を集めることによって貸出の原資を確保しているわけではないということです。銀行は誰かの預金を原資に別の人に貸し出しをしているわけではありませんし、日銀当座預金を使って融資をしているわけでもないのですから。

まとめ

振込により銀行の預金残高は増減しますが、振込によって預金残高が減った銀行は増えた銀行に対して日銀当座預金を提供することで調整をしています。預金は銀行にとって負債ですが、日銀当座預金は銀行にとって資産です。振込による預金残高の増減によって損も得もしないように調整をしているのです。

銀行は預金を集めることを通じて自らの日銀当座預金を増やし、銀行間の支払いに支障をきたさない様にしています。また、預金を集めることは将来、預金者との間の取引を拡大し、収益を上げる上でも重要なことです。

ただし、預金を集めることによって貸出の原資を集めているわけではないことに注意しましょう。銀行は預金を原資に貸し出しているのではなく、貸し出しにより新たな預金を創造している、つまり、信用創造を行っているのです。

今回は以上です。

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