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信用創造⑤銀行とノンバンクの最大の違いは?


通貨には発行者と利用者がいる

今回は、『通貨には発行者がいる』という話を掘り下げて考えてみます。現金(お札)は正式には日本銀行券と言い、発行者は日本銀行です。銀行預金も通貨であり、発行者は銀行です。その他のものもまとめると下の表のようになります。

戦前には政府紙幣というものも発行されていました。また国債もある意味、政府が発行する通貨と言えますが、詳細は今後の記事の中で説明します。

発行者、利用者が守る『貨幣のルール』

ルール1:発行者は自分が発行する通貨で信用創造、つまりお金を増やすことができる。

これは、通貨の発行者という表現から考えると当然のことですが、例えば日本銀行は日本銀行券や日銀当座預金を何かの元手がなくても発行することができます。日銀が日銀券の発行者だからです。

それと同様に銀行は預金という通貨の発行者ですので、融資を行うことによって銀行預金を増やすことができるのです。誰かが現金を預けてくれたから預金が増えるわけではありません。逆に発行者ではなく、利用者がお金を貸した場合はどうなるのでしょうか?

例えば、ノンバンクと呼ばれている消費者金融などの金融会社が個人に貸し出しをする場合、消費者金融は預金という通貨の利用者なので、預金を生み出すことはできません。自分が持っている預金を貸し出しますので、トータルで預金総額は変わりません。

また、コール市場という金融機関どうしが短期間で資金の貸し借りをするマーケットがあります。ここでは金融機関どうしで日銀当座預金のやり取りをするのですが、金融機関、つまり銀行は日銀当座預金の利用者なので、日銀当座預金を発行できません。したがって、貸し手の金融機関は自分が保有する当座預金を減らして相手の金融機関に貸し出しをするのです。

最後に、借りたお金を返済したときに起きることを整理します。信用創造によって発行されたお金を発行者に返済すると、お金は消滅します。ただし、利用者同士でのお金の貸し借りの場合は返済してもお金が移動するだけでトータルのお金の量は不変です。どうでしょう?だいぶ頭の整理ができてきたのではないでしょうか。

ルール2:お金を動かしたり使ったりできるのは利用者(保有者)だけ

これも当然と言えば当然のことですが、お金の発行者、利用者という考え方が身についていないと、つい勘違いしてしまうことがあります。というより、今の日本人の大部分が勘違いをしている状態にあります。下の図は野村證券のHPに載っている間接金融の説明です。間接金融とは銀行による融資のことを指すのですが、預金者からお金を預かり、それを別の人に貸すと書いてあります。


HPに堂々と書いてありますが、この説明は明らかにおかしいんです。銀行は預金という通貨の発行者の立場であり、預金を利用したり、保有したりする立場ではありません。

預金を別の人に提供したり、自分で消費したりすることができるのはあくまでその預金を保有している人、つまり預金者自身なのです。もしあなたの預金を銀行が勝手に他の人の貸し出しのために使ってしまったらあなたは困りますよね。

 会計の用語で言い換えるとこのようになります。通貨の利用者にとってお金は資産ですが、発行者にとっては負債になるんです。あなたの預金はあなただけが保有している財産のように感じるかもしれませんが、実際はあなたの資産であり、同時に銀行の負債でもあるという二面性があることを意識しましょう。
また、銀行が信用創造によって生み出した預金そのものを銀行の収益であると勘違いする人がいます。そういう人を見かけたらやさしく教えてあげて下さい。

まとめ

通貨には種類があり、それぞれの通貨について発行者と利用者がいます。

発行者は自らの負債を増やす形で通貨を発行しますが、返済を受けるとその通貨は消滅します。通貨の利用者がお金を貸した場合は、自らの保有する通貨を借り手に移す形で貸すので、トータルでのお金の量は変わりません。つまり信用創造できないということです。

お金を自由に使うことができるのは利用者の立場の者だけです。銀行にとって預金は負債ですので、預金者の預金を別の人に貸し出すという間接金融の説明は実際にはありえません。将来的には間接金融という言葉自体がなくなるかもしれませんね。

今回は以上です。


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