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信用創造③準備預金制度と日銀の信用創造


準備預金制度は誤解されがち

 前回は、銀行は何もないところから貸し出しを行うと同時に新たな預金を生み出しているというお話をしました。このように銀行は信用創造によって新たな預金を生み出すことができますが、無制限に預金が増えていくと、現金の引き出しに対応できなくなるリスクがあります。

そこで「準備預金制度」というルールがあります。銀行は預金の引き出しに備えて預金の一定割合を日本銀行に預けなければならないというルールです。預金準備率は預金の種類などによって異なりますが平均すると0.7%程度です。このルールを知っている人ならば、『銀行が何もないところから預金を生み出してしまうと、日銀に預けるお金が足りなくなるじゃないか』、という疑問を持つかもしれません。

まず、理解していただきたいことは、準備預金制度で求められていることは、銀行が預金残高の一定割合の日銀当座預金を持たなければならない、ということです。現金を日銀に預けないといけないと誤解している人がいますが、それは違います。あくまで日銀当座預金を持てばよいのです。
また、銀行預金の一部を日銀に預けると誤解している人もいますが、
これも間違いです。銀行預金は銀行にとって負債ですので、自分の財産の
ように勝手に動かすことはできません。



銀行が準備預金制度の基準をクリアするための典型的な手段は短期金融市場で他の金融機関から日銀当座預金を借りることです。そうすることで日銀当座預金の残高が基準を上回れば問題ないのです。

 実際のところ、近年は日銀の金融緩和策により銀行が保有する国債を日銀が買い入れることで銀行の当座預金残高は十分すぎるほどの残高を維持しています。したがって銀行が準備預金制度のために手元の現金を日銀当座預金に預け入れる機会は減ってきていると言えます。

具体的には、2022年3月末時点での日銀当座預金の合計額は563兆円、預金合計は1,672兆円ですから、銀行は準備率を1%と考えた場合でも、
銀行は16.7兆円の日銀当座預金を持てばよいところを563兆円も持っているわけです。準備預金制度が事実上、意味のないものになってしまったとも言えます。




銀行が日銀当座預金から現金を引き出したり、逆に預け入れたりするのは単純に預金者の現金の需要に合わせて調整をしています。例えば大型連休の前は現金を引き出す人が多いから多めに現金を準備しておく、といったことです。


日本銀行による信用創造について

次に日本銀行による信用創造について説明します。現金を手に入れるためには預金残高がないといけないのですが、これは日銀と銀行の間にも全く同じことが言えます。つまり、銀行も一番最初に現金を手に入れた時は、日銀から借り入れをして日銀当座預金の残高を発生させてから現金を引き出しているんです。つまり、日本銀行は日銀当座預金という通貨で信用創造を行うことができるんです



銀行が日銀預け金を積み立てる行為を現金以外の方法で行ってもよいのだろうか?と疑問に感じたならば、このことを思い出してみて下さい。ある銀行が手元に持っている現金は、かつてどこかの銀行が日銀当座預金から引き出した現金なんです。つまり、現金を日銀当座預金に預け入れたとしても、それはかつてどこかの銀行が日銀当座預金から引き出した現金を日銀に戻しているだけなんです。

因みに現在の日銀当座預金の残高は563兆円です。仮に、すべての金融機関が日銀当座預金を現金に換えようと思った時、現金は約125兆円しかないので、全額引き出すことはできません。 世の中には現金だけが本物のお金だと考えている人が多いですが、実際は違います。
日銀当座預金も銀行預金も現金とは種類の異なる通貨なんです

まとめ

今回のまとめです。一つ目は準備預金制度について学びました。銀行は預金残高の一定割合以上の日銀当座預金を持つ必要があるというルールです。
銀行は日銀に現金を預け入れなくても他の金融機関から日銀当座預金を借り入れをすることなどによって残高を達成することができます。

実際のところ、日銀が金融緩和策によって銀行が保有する国債を大量に買い入れたことから日銀当座預金残高は十分な残高を維持しており、銀行が準備預金制度の基準をクリアするために手元の現金を日銀当座預金に預け入れるケースは減ってきています。

2つ目に日本銀行も銀行と同様に、信用創造を行うことができるということを学びました。つまり日銀は何もないところから銀行に貸し出しを行うことで日銀当座預金を生み出すことができるんです。

今回は以上です。
 


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