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言葉のことばかり【後の祭り】

桜のエピローグ

浅草の隅田公園を通りかかったら
「桜まつり」の垂れ幕が残ってた。
もちろん、祭りの気配はどこにもない。
桜が散ってしまったら、
そりゃ桜まつりになりはしない。
これがホントの「後の祭り」。

最近雨も多いから花びらが散った後は
「がく」んとこ以外全部落ちた。
花のなごりもすべて消えて、
桜の木は緑色になった。(ちょっと詩的)

桜の「後の祭り」には二段階ある。
まずは花が散り地面が花びらでいっぱいになり
川は花びらで埋め尽くされる
花筏(はないかだ)なんてのがこれですな。
これはこれで風情があるとされている。
まあ綺麗なのは一瞬ですぐゴミっぽくなる。

このとき、木の方にはまだ
花びら以外の「赤」が残っている。
それが若葉の緑と混じって
なんか濁った色になっちゃうんだよね。

…意外に綺麗じゃない。

桜蘂降る

この赤い部分がもう一度散る。
もう一度って変か。まあ二段階で散る。

実はこの赤いところが蘂(しべ)。
オシベ、メシベのシベね。
関係ないけど漢字がすごいね。
蘂、もしくは蕊。

よく見るとほとんど「絵」ですね。
「蘂」はちょっと遠景で木全体に見える。
「蕊」はカメラ寄って花の部分みたいだ。

このシベがもう一度散る。

実は地面が真っ赤になるくらい散る。
花びらより丈夫なので長く残る。
これに風情を感じる人はあまりいない。

【桜蘂(しべ)降る】桜の花が散ったあとでがくに残ったしべが散って落ちること。 そういう #季語 があるんですね。 桜蘂降るや無冠の身ほとりに 上原白水 「桜蘂」だけでは季語にならないそうです。以上、「俳句歳時記 春」(角川学芸出版編)より。 #きょうのこうきょ

Posted by 毎日新聞 on Thursday, April 14, 2016

桜のことは大好きな日本人も
このシベのことを話題にすることは少ない。
ちょっと冷たいよね。

個人的にはすごくドラマを感じる部分で、
こっちの方が話としては深みがある。

うわべの美しい部分の下に隠れているもの。
うわべは先に風に散ってしまうがそれは残る。
ちょっと頑張っている。
だけどしばらくしてそれも力尽きる。

ね。ドラマっぽいでしょ。

「桜蕊降る」という季語もある。
祭りの後にはドラマがあるのだ。

しかしその粘り強さは散った後も続く。
結構長い間、本当に地面を覆うくらい
ずっといるんだよね。
仕方ないけど、だんだん汚くなる。

あれがいつの間にかどうして消えるのか。
土に還るんだと思うのだが
不思議でしょうがない。

祭りの後の後の話。

後の祭りは後悔ばっかりだけど、
祭りの後は結構おもしろい。

次回の言葉は「なくす」です。

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