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言葉のことばかり【らちがあかない】

「らち」ってどんな字?

「らち」ってありますよね。

そう「らちがあかない」の「らち」
これってどんな字かわかります?

「拉致が開かない」
…妙に意味が通っているが、たぶん違う。

「裸地が空かない」…ちょっとムリヤリだ。

「らちがい」…「場違い」とは違うだろう。

「ラチエン通りのシスター」
…っていう歌があったな。知らないよね。

「そんなやり方じゃあ、ラチがあかない」
…意味はこれで合ってると思う。

いくらやってもダメ。
なにかが開かないから出られない
…っていうニュアンスだ。
「ハッチが開かない」ってことか…。

…いつまで引っ張るのか。って感じなので、
辞書引きました。

らち 【埒】
(1)かこい。しきり。特に、馬場の周囲の柵。
(2)物事のきまった範囲。限界。

ははあ、柵のことだったわけね。馬場のね。
…ってことで終わり…なんですが、
ふと思って英和辞典もひいてみた。

latch  
n., vt. 掛け金[ばね錠](を掛ける,が掛かる)

なーんと、こっちでも
意味が通ってしまったんですねえ…。

ラッチが開かない。
なんかこっちの方がちょっとかっこいい。

ちなみに「人につきまとう」 という意味もあって、
パパラッチのラッチですね。
うーん…妙に勉強になったなあ…。

「埒」ってこんな字

漢字で書くと「埒」。
いきなり出会ったらまず読めないね。
「…があかない」がつかないと無理。

そして「あかない」は「明かない」と書く。

埒がしきりや柵のことだとすると
「開かない」が正しいような気がするけど
なぜか「明かない」。

多分もともとは「開」だったのが、
「何度やってもうまくいかない」という
気持ちの話なので「明」の方が合うじゃん、
というふうに変わったのだと思われます。

昔の話なのであくまでも推測ですが。

ちなみに競馬用語で
内側の柵を内ラチ、外側の柵を外ラチと
言いますが、こっちは開かないですね。
開くのはゲートか…。

将棋で同じ手が繰り返されて
埒が明かないのを千日手と言いますが、
これとは別に「持将棋(ジショウギ)」
ってのがあるんですね。
先日の藤井さんの棋王戦で初めて知りました。

言葉は難しいけど、お互いの王様が
相手の陣地に入っちゃって勝負がつかない。
ってことらしいですが、
これは素人だとよくあることなんで、
こんなトップのバトルでもあるんだなあと。

これなんか陣地解放してますから、
逆に柵が開いちゃってますね。
埒が開いちゃったから埒が明かなくなった。
よくわかんないですが…。

埒が開くと
悪行ざんまいになる。

「埒」は柵なのでこの内側なら安全、
という考え方もできます。

なので埒が不完全だとヤバいことになる。
そう。「不埒」です。
桃太郎侍が許さないやつね。

「埒が明かない」が
ヒットしたので忘れがちですが
「埒」は単体でも使われています。
不埒もそうだし、埒外、埒内なんてのも
実は使われている。
想定の埒外だ、とかね。
まあ今はあんまり使わないですかね。

京都から金沢へ

もともとは京の都で使われてたので
由緒ある言葉だったりしますね。

徒然草にも
「おのおのおりて、
 らちの際(きは)に寄りたれど」
なんて表記があったりして、
賀茂(かも)の競べ馬を見に行った話らしい。
やっぱりもとは競馬なんですね。

これが地方に伝わって方言になったりしてます。

僕は出身が金沢で、
金沢の人には衝撃の事実なんですが、

金沢には「だちゃかん」という方言があって、
かなり使う。
単純に「ダメ!ぜったい」という意味です。

もうお気づきだと思いますが、
これの元が「らちあかん」なんですね。
僕も知らなかったので驚きました。

そう思うと京都での
「らちあかん」が「らちゃかん」になり
金沢で「だちゃかん」になったのは納得。
短縮形の「だっちゃん」もあります。

途中の福井あたりではどうなんだろう。

これ、金沢では「埒が明かない」の
百倍くらいは使う言葉なので、
観光で行って「え、21世紀美術館
もう終わってんの」ってとき、
「こりゃ、だちゃかんわねえ」って
言ってみてください。

ちなみに関西ではこの
「らちあかん」は「あかん」になったみたい。
こっちの市民権はすごいですね。

掘れば掘るほどいろいろ出てきて
キリがないのでこの辺にしときます。
(らちって言わんのかい)

次回の言葉は「未定は予定」です。


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