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言葉のことばかり【五月蝿い】

当て字の話の続きです

「五月蝿い」…すごい言葉ですね。
「うるさい」と読みます。

僕がこの言葉を知ったのは小学校のころで
石ノ森章太郎の「佐武と市捕物控」という
漫画の中のセリフでした。

確か登場人物の「市」という
盲目で居合抜きの達人のキャラクターが
「ああ五月蝿い五月蝿い」って
喋ってた気がする。

フリガナがついてたから読めたんで、
小学生にわかるわけもない言葉です。

で、やっぱり思いました。
何で五月なんだろう。って

で、当時はネットもパソコンもなかったので
調べようもなくて、漠然と
「五月の蝿ってうるさいのか。
 五月じゃなくてもうるさいけどな」
って思ってた。

煩い

「うるさい」は普通ひらかなで書きますね。
わざわざ漢字で書くのは小説くらいかも。

漢字だと「煩い」が一般的だと思います。
煩わしい(わずらわしい)の「煩」。

なのでこの「煩い」はどっちかと言うと
まわりからあれこれ言われたり、
つきまとわれたりして、あーうっとうしい
ってイメージが強い。

ちょっとじわっとしてるというか、
「うるさいっ!」って手をピシッと払うより
「うるさい〜」って手をひらひらさせる感じ。

いちばん基本的な「音が大きくてうるさい」
ってのが抜けてるように思います。

その点「五月蝿い」は完璧。
音はうるさいし、ぶんぶん鬱陶しいし、
こっちの方がトータルに言えてる。

五月のイメージ

で、何で五月なのか、ですが、
それは五月に蝿が多かったからです。
え、そんなイメージないけど。

これは旧暦の五月だからですね。
実は梅雨の時期だった。
確かに蝿、多そうです。

そう考えると、
五月雨(さみだれ)と五月晴れのイメージも
かなり修正を迫られます。

てかもともと間違ってた。
五月雨は梅雨ならそりゃそうかだけど、
強い雨じゃないイメージがあった。
ぱらぱらと降る。五月雨式なんて言うし。
だから五月なのかと思ってたけど。

そうか「だらだら続くから」ってことか。

五月晴れは五月っぽいピーカンじゃなくて
梅雨なのに晴れた貴重な晴れってことね。

まあこの辺は知ってる人からすれば
常識でしょ。って話かもしれませんね。

旧暦と完全にイメージがズレてるのに
言葉はそのまんま残って、
何気なく使われてるのが不思議といえば
不思議な感じはします。

うるさ型

うるさいにはもう一つ使い方があります。
「あの人は〇〇にうるさい」ってやつ。

何かにくわしい人で優れた人。
でもこの言い方、あんまり尊敬してないね。

マニアの喋りたがり感がよく出てます。
あーわかったわかった。
…こりゃ五月蝿い。

そんなうるさい人のことを
「うるさがた」って言いますよね。
これ漢字だと「うるさ方」だと思ってた。
人のことだから。
だけど「型」が正解でした。

そういうタイプってことなんだね。
さらに突き放した冷たい言い方だった。
あいつはうるさ型だから、的な。

最近はこういういろんな「うるさい」は
まとめて「ウザい」が担ってる気がします。

元は八王子あたりの方言で
所ジョージさんが広めたらしい「ウザい」
あっという間に定着したのは
このあたりの気分がいかに日常的かって
ことかもしれません。

五月蝿いとウザい。時代は違うけど
どっちもスラングっぽくて
ちょっと面白いです。

次回の言葉は「悪役」です。

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