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言葉のことばかり【自慢話】

謎のアベック

その日、電車はけっこう混んでいた。
途中の駅で乗ってきた男女二人連れ。
金持ち風の恰幅のいいオヤジ(推定48歳)と
黒のスーツ着たすらっとした美人(推定24歳)

一見秘書風ではあるが、
化粧がちょっとお水っぽい。
どう見ても、
あまりノーマルではない関係に見える。

男はずっと何やらしゃべっている。
女はずっと相づちだけを打っている…。
こっちは、やることもないので、
聞くとはなしに話を聞き、
なんとなく横目で眺めている。

そうこうしているうちに、
男がパチンコ(スロット)の話を始める。
車内にパチンコ屋の広告があったからだ。

「いやあ、
 最近初めてやってみたんだけど、
 けっこうはまるもんだよね」
「えー、おもしろいんですかぁー」
「アッという間に負けちゃうね。
 20万くらいね」
「ホントですかぁー」
「勝つときはね。40万くらい勝つよ」
「すごいですねー」

…ぜんぜんすごいとは
思っていない口調である。
金持ちの金持ち自慢なのか…。
それにしては自慢している方も、
口調にココロがこもっていない。

僕はこの二人の関係が気になって、
ついチラチラと見てしまう。

ある意味
ステージと観客

この男と、この女と…いったい何で…
周りを見ると、あっちからもこっちからも
同じような視線が集まっている。

と思ったら、二人を見る、
女性の視線はちょっと違うようだ。
女だけを見ているのである。
それも上から下までずーっと。なめるように…
なんかすげー怖かった…。

女はもちろんそんな自慢話、
本気でなんか聞いちゃいない。
お仕事だから相手してるに違いない。

そう思うと、
なんかビジネス会話に聞こえてくる。
めんどくさいクライアントの話を
何となく受け流しながら
機嫌良くさせてお金もらう感じ。

何となく見覚えがあるような気がした。

しかしこのオヤジ、
自分の話が聞かれてるのが分かってないのか。
わかってて聞かせたいくらいに思ってるのか。
…どっちでもいいのか。

まあ気にしてないんだろう。
今が楽しければいい。
自分が楽しくて周りは気にならない。

そんなふうに生きることができたら
どんなに楽だろうと
ちょっとだけ羨ましくなった。

それにしても…
そんな金持ちなら、電車なんかに乗るなよ…。

次回の言葉は「いぶし銀」です。


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