見出し画像

生物に寿命があるのはなぜかー事実と推測ー


こんにちは マスです
ご無沙汰していましたが 少しずつ新しい環境にも慣れてきたので
最近考えていたことをまとめてみようと筆を取りました


今回は少し前にSNS上で見た“性教育”に関する内容の記事から着想を得ました

今回はそのことと関連のあるスケールの大きなテーマ

生命に寿命があるのはなぜか

そんなことを考えるようになった背景から事実と自分の勝手な推測を書いていきたいと思います


学部時代の話


私は教員養成大学で大学院までの6年間を過ごしました
そこで中等の理科教員を養成する専攻にいたのですが
教授陣は理学系の専門家ばかりでした
(高校生の時にはわからなかったのですが
当然 教員養成大学でも教授が教員養成課程卒ということはありません)


学部4年次のある日の講義
専攻全員(20名程度)で当時の学長と話をする機会がありました

学長はゾウリムシ(あるいは広義の微生物)を専門とされていた方で
当時は学長の業務で忙しく研究はされていませんでした
(現在は別の大学で客員教授として勤務されているようです)

しかし 専門家ですので話したいことが山ほど有ったようです(偏見)
自らの研究のことを叩き台にして話をしてくださいました

その中で私の興味を引いたのは「なぜ生物には寿命があるのか」という話だったのです
(たくさん話されていたかと思うですが記憶が曖昧な部分もあり…)


生命と性


生物の中には有性生殖を行う生物と無性生殖を行う生物がいます

無性生殖には分裂、出芽、栄養生殖など様々な形式がありますが
親個体とほぼ同じ遺伝子でほぼ同じ形質の個体を作ります
単細胞生物などの原始的な生物の多くは無性生殖をすることで増殖します
(例外もあるかもしれませんが詳しくは触れません)

有性生殖は 異なる個体の異なる配偶子(接合子)が受精(接合)することで個体を作ります
この時の配偶子は親個体の染色体の半分(ゲノム)を持っていて
受精(接合)することで親個体とは遺伝情報の異なる個体が得られます

ヒトを含めた多細胞生物のほとんどが有性生殖で増殖します
(例外もあるかもしれませんがry)


中学校理科の生物分野ではこの無性生殖と有性生殖の違いを学習します

その中ではもっと簡単に
個体数を増やすという観点では無性生殖が有利
環境に適応できる可能性が高いという観点では有性生殖が有利
と学習します

今回は簡単な解釈をもとに進めていきます



性と寿命① 繁殖


さて 前述の学長の話「なぜ生物には寿命があるのか」という問ですが明確な答えはありません

しかし 長年研究していた学長は次のようなことを仰っていました

「有性生殖するための“性”が寿命という概念を作ったのではないか」


そもそも生物は繁殖を生命の最終目標としています
生まれてから栄養成長期を経て十分に成熟した個体は生殖能力を得ます

無性生殖の場合 整った環境下であれば何らかの形で個体を増やします

有性生殖の場合 別個体と交雑して子孫を残し巣立ちまでの期間は子育てをしますしかし 昆虫類や魚類の多くは子育てをせず 親個体はそのまま絶命します
絶命しない種でも子育てを終えて新たに別個体と交雑して子育てをするというサイクルを繰り返すこともあります

つまり 自分の子孫を残すことは
抗うことのできない遺伝子レベルのコマンド(表現としては正しくないかもしれない)であり 終えれば自分は役目を終えて絶命する

表現としては極端かもしれませんが ヒト以外の生物はほとんどがこういう一生を過ごします

ヒトのように余暇時間の方が長い生物はほとんどいません


性と寿命② 寿命


モンキー・パンチ作品でも永遠の命をテーマにした作品がありましたが
原始的な生物には記憶を保持する能力はほとんどありませんので
遺伝子(ゲノム)があれば自己は永遠に生きていると考えることもできるということです


最近になって改めて調べてみたところ 直鎖DNAを持つ生物には染色体の末端に
テロメアという部位が存在します
有名なのはクローンヒツジのドリーの話でしょうか

テロメアは受精卵の段階が最も長く 細胞分裂を繰り返す間にDNA複製時に短くなって娘細胞に引き継がれます
分裂を繰り返して最終的に無くなってしまうと 細胞分裂は行われなくなり 既存の細胞が老化していくことになり 組織や器官 個体の死を迎えます


テロメアは直鎖DNAを持つ生物には存在していますが 環状DNA(プラスミドDNA)には存在しません
末端にあたる部分がないためです

細菌などは環状DNAを持つためテロメアは存在しませんので寿命がありません
また プラナリアの研究で 親の生殖様式によって子世代個体のテロメアの長さが決定しているという研究もあります
どうやって生まれてきたかによってテロメアの長さが決定するようです

画像1

かつて ソメイヨシノがクローンであるため世界中から一斉に消失すると言われていましたが 最近ではそういう可能性は否定されているようです
植物にはテロメアという部位は存在するがテロメアーゼという酵素によってテロメアが修復されている可能性が示唆されているようです



性と社会


こういったことから学長は
性という概念ができたことで寿命も生じたのではないかと論じていました

当時 性と寿命の関係に目を向けることなど無かったため
まさに目から鱗でした


今回の記事について 冒頭で“性教育”から着想を得たと述べましたが
中高生の自分を思い出してみると何となく「野蛮なこと 卑猥なこと」と感じていた記憶があります

教師の立場としてもどのように指導すべきかというのは難しいところがあります
ただの猥談になってしまったら 望まぬ結果を生まないようにする
性教育の目的と真逆のことを誘発する可能性があるためです
大学の動物発生学の教授もかなり配慮されていました

個人的にですが 生物の一生の中で一番複雑な機構が働いていると感じます
しかし だからこそ面白いと思いますし是非知ってほしいとも思います


保健体育がメインとなっている性教育ですが
高校生になって生物を選択した生徒には可能な限り発生を理解してほしいです


そして 自分だけでなく自分の子どもにも伝えられるようになってほしいです
教員だった伯父は経験の中からこう言っていました

「やんちゃしていた生徒の多くは、結婚が早く、子どもを産むのも早く、離婚も早い。それが脈々と受け継がれてしまう。」

統計的なデータをとったわけではありませんが そういう事実はあるようです


もし 生物の観点から発生や病気に関することを知ってもらえたら
知識を自身で完結させるのではなく 次世代に伝えてもらえたら

防げることもあるんじゃないかと理想を抱いています


おわりに


本当は一ヶ月前にこの文章を書き始めたのですが 新生活に慣れるまでに時間がかかってしまいました

最近は理想語りが主だったものになってしまっていて
事実と違うことを述べていないか不安になることが増えました

伝える立場になるとテキトーにまとめられていた知識に対する
不信感が強くなってしまって1から調べ直して授業することがほとんどです
現在 学んでいる学生の皆さんには根拠を示しながら説明できるようになってほしいです(論じることができないのは理解にならないと考えています)


社会活動が再開され 再度停止するかもしれない事態ではありますが
情報を精査して適切に対応する力が試されているような気もします

今一度 自分を見直して行きたいと思います


長文になりましたが 最後まで読んでいただきありがとうございます
何かご感想・ご意見がございましたらコメントいただけますと幸いです

以上 マスでした