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聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる(新約聖書篇17) 〜12人の使徒たち

1000日チャレンジ」でアートを学んでいるのだけど、西洋美術って、旧約聖書や新約聖書、ギリシャ神話などをちゃんと知らないと、よく理解できないアート、多すぎません? オマージュなんかも含めて。
それじゃつまらないので、アートをもっと楽しむためにも聖書や神話を最低限かつ表層的でいいから知っときたい、という思いが強くなり、代表的なエピソードとそれについてのアートを整理していこうかと。
聖書や神話を網羅したり解釈したりするつもりは毛頭なく、西洋人には常識っぽいあたりを押さえるだけの連載です。あぁこの際私も知っときたいな、という方はおつきあいください。
旧約聖書篇は全65回で完結しました。こちらをどうぞ。

いまは新約聖書をやってます。ログはこちらにまとめていきます。
このあと、ギリシャ神話。もしかしたらダンテ『神曲』も。


さて、前回までで、キリストの少年期と洗礼者ヨハネとの関わりの話が終わり、新約聖書の序盤が終わった、という感じである。

表で言うと、いまココ。

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まぁ1/3終わった、という感じっすね。

ということで、上の矢印を見てもわかるように「イエスの宣教と奇跡」という項目に入っていく。ここからがいわゆる「公生涯」と言われる3年間で、イエスの宣教と受難を追っていくことになる。

で、その前に、これから長くつきあっていくであろう「12使徒」について軽くまとめておこう、というのが今回の趣旨だ。

使徒というのは、イエスの高弟のこと
まぁ「とても信頼された弟子」みたいなことか。その中でも特に選抜された12人を「12使徒」という。

12、という数字は、旧約聖書篇を読んでいただいた方はわかると思うけど、イスラエル12部族に由来している。キリスト教では聖なる数字なんだな。

使徒は、マグダラのマリアが入ったり、裏切り者のユダを引いてマティアという人物が入ったりと、バリエーションもあるようだ。


まぁたいてい、弟子というのは、布教していくに従って増えていき、最終的に高弟が決まっていくまでには紆余曲折があるものだ。出世競争だって起こるし、エコヒイキだって起こる。

でも、イエスの12使徒の場合はちょっと特殊で、宣教活動のかなり初期に12人が選抜され、そのままずっと12人だった。


というか、こうやって新約聖書を追っていっているのだから、この12人は知っておいた方がいいと思う。

これからも主要な使徒は何度も登場するからね。

ということで、まずはこの12人を覚えちゃおう!


実際は、12人のうちの重要人物は5人くらいなんだけど、でもどうせなら全員覚えちゃおう。

いろいろと覚え方を探したんだけどいいのがないので、例によって独自の語呂を作ってみた

12人を弟子になった順に書くとこんな感じになる(途中の順番、少し異説あり)。これを順番に覚えたい。

ペテロ(一番弟子で有名。天国の鍵を預かったので初代ローマ教皇とみなされる。逆さ十字で処刑された。)

アンデレ(ペテロの弟。謙遜の人。X十字にかけられ殉教。アンデレ十字と呼ばれスコットランド国旗などに用いられる)

大ヤコブ(短気で「雷の子」と呼ばれる。ムーア人征伐でなぜか幻として現れ有名になる)

ヨハネ(大ヤコブの弟。イエスに一番可愛がられる。イエスが十字架にかけられたときも弟子としてただ一人十字架の下にいた。福音書を書いたヨハネと同一人物とも言われるが反論も多い)

フィリポ(逆さ十字で処刑)

バルトロマイ(フィリポの友人。生皮剥がされて処刑)

マタイ(下賤な職業と言われた収税人だった。福音書を書いたマタイとは別人)

トマス(イエスの復活を疑ったことで「疑り深いトマス」と呼ばれるが、ある意味知性人だよね)

小ヤコブ(イエスの兄弟「義人ヤコブ」と同一視する説もあるが別人らしい)

タダイ(本名をユダといい、「イスカリオテでない方のユダ」と呼ばれてしまう影の薄い人)

シモン(ユダヤの独立運動を展開した「熱心党」出身。正義感強し)

ユダ(イエスを裏切ったことで超有名。イスカリオテのユダ)



で、こういうのを作ってみた。

ペアダイヤよ!
フィーバー待ったと?
ショタだしユー!



・・・すいませんw
つまり、頭文字をこうつなげたわけです。

テロ
ンデレ
大ヤコブ
ハネ

フィ
リポ
ルトロマイ
マタ
マス

ヤコブ
タダ
モン


意味?
いや、イメージ的には、デビュー前のKinki Kidsのふたりを見つけたジャニーさん。

「ユーたち、ペアのダイアモンド(のように美しい)よ! 
え? フィーバーを待ってたって! 
ユーたちショタ(可愛い少年の俗語)だし、絶対フィーバーするよ!」



みたいな・・・(すいません)。


ペアダイヤよ!
フィーバー待ったと?
ショタだしユー!



・・・あぁなんか各方面に怒られそうだ。ホントすいませんw
でも、語呂なので、赦してください。
つか、なぜ博多弁?


ちなみに、12使徒を英語にすると、お馴染みの名前がたくさん出てくるよ。
親が12使徒にちなんだ名前をつけたんだね。

ペテロ:Peter(ピーター
アンデレ:Andrew(アンドリュー
ヤコブ:James(ジェイムズ
ヨハネ:John(ジョン
フィリポ:Philip(フィリップ
バルトロマイ:Bartholomew(バーソロミュー
マタイ:Matthew(マシュー
トマス:Thomas(トーマス
シモン:Simon(サイモン
ユダ:Jude(ジュード

いやー、お馴染みの名前だらけだ。


では、有名なダ・ヴィンチの『最後の晩餐』で、12使徒を見てみたい。

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絵の左側から行くよ。

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ユダは手前の肌の黒い人。
手にイエスを売った銀貨の袋を持っていると言われている。

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この上の部分で有名なのは、果物ナイフを持っている手。
これ、誰の手かまったくわからないんだよね。ダ・ヴィンチがかけた謎とも言われている。
たしかに、ペテロの手にしては不自然だし、ヨハネの手としては「ヨハネ、腕、長過ぎ!」ってなる。
いったい誰だ! 計算し尽くして描くダ・ヴィンチがいい加減なことを描き込むわけないので、何かしらの意味があると言われている。

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下の絵。
トマスは疑い深いからw、「え、裏切り者? それってひとりですか?」って疑問を呈している。

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ここは影の薄いグループw

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まぁこの中でも特に有名なのは、

ペテロ
アンデレ
大ヤコブ
ヨハネ
バルトロマイ
トマス
そして、ユダ

あたりだろうか。

ひとりひとりの説明は今後のエピソードの中で出てくるので、そのとき書いていくことにするけど、今回はひとつ、個人的な発見があったので、それにだけ言及したい。


それはアンデレ

アンデレは、次回「奇跡の漁(すなど)り」で登場する。
彼は兄ペテロといっしょに弟子になったんだけど、イエスに従った最初の人物とも言われているんだな。そのことをもってして、キリスト教ではとても重要視されている人物だ。

彼はイエスの死後、トルコ方面に伝道を行い殉教するんだけど、そのとき「イエスさまと同じやり方で十字架に架けられるわけにはいかない」と、自らX字型の十字架を所望する。


ルーベンス

これがX字型の磔(はりつけ)。
いや、なかなかの名画だ。この辺については、このあとの連載でまた出てくると思う。

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で、そのX字型の十字架を「アンデレ十字」と呼ぶらしい。

そしてそして、それがそのままスコットランドの国旗になっている!

知らなかったなぁ・・・「聖アンドリュー旗」(Saint Andrew's Cross)とも呼ぶらしい。

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ここで「Saint Andrew's Cross」という英語を読んではしなくも気づくわけだが、そうか、聖アンデレって、セント・アンドリューなんだ!!!

・・・うひー!

ボクはスコットランド大好きで、人生で3回訪れているけど、東海岸のセント・アンドリュースという街には2回行っている。

で、その街にあるゴルフ発祥の地「セントアンドリュース・オールドコース」は、ラウンドはしていないものの、何度も何度も散歩した(普通に夕方とか朝とかコース内を散歩できるのだ)。

ここ、聖アンデレ由来なんだ! マジか!


いやぁ・・・勉強になったわー。
まぁ考えてみたら「セント(セイント)」とついているんだから、キリスト教関係なわけだけど、そんな意識もなくいままで生きてきてしまった。
いや、なんだかえらく知的快感があったなぁ。

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さて、12使徒の絵をいくつか見て、今回もオシマイにしよう。

14世紀のコンスタンチノープルの絵。

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上の絵、誰が誰か書いてないんだけど、ほぼ同じ配列、同じポーズの絵を見つけた。ちょっと出典はわからないが、この絵と見比べると、誰が誰を描いたかわかるかも(下の絵が完全に正しいとはまったく限らないが)。

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これは描き人知らず。
イエスの昇天だろう。
12使徒がそれぞれ描かれている・・・というか13人いるのは、真ん中にマグダラのマリアがいるから。

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ジェームズ・ティソさん。
イエスは宣教の早い段階で12使徒を正式に決めているのだけど、その場面。
右に11人いる。そして12人目は画面の外にいるようだ。そう、それは後にイエスを裏切るユダですね。

なんか上の方の絵のもう以下にも「使徒でーす」という格好とかキンキラキンに比べて、ティソさんはあくまでリアリティ重視。その辺のブレがないのもティソさんのいいところ。

ということで、これを今日の1枚にしよう。

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下の絵もティソさん。
彼のことだからきっと12人描き分けていると思うけど、誰が誰だかよくわからない。ロン毛のヤツもいるなw

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ギュスターヴ・ドレさん。
これはイエスが亡くなったあとペトロが使徒たちに説教しているところ。

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ということで今回はオシマイ。

なんかいか、あの「覚え方」を頭の中でくり返すと、あら不思議、自然と覚えちゃうからオススメですw


さて、次回からはイエスの宣教活動の始まりだ。

まずは「奇跡の漁り(すなどり)」から。



・・・あ、おまけとして。

使徒といえば、若い人にはやはり「エヴァンゲリオン」だろう。

ちなみに「エヴァンゲリオン」を日本語にすると「福音」。
当然、新約聖書が想起される。
そのうえで、使徒だし、十字の光、そして東方三博士の名前がコンピュータ名になっているなども含めて、とにかくキリスト教に関連が深いアニメではあるね。

エヴァの使徒の名前は、12使徒からは採られていないけどね。


もうひとつおまけ。

12使徒を英語で言うと「Twelve Apostles」になるのだけど、同名の景勝地がオーストラリアにある。
石灰岩でできた複数の海食柱。いまではいくつか倒れてしまっているらしいけど、岩を使徒たちに見立てた景勝地なのだろう。

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この新約聖書のシリーズのログはこちらにまとめて行きます。
ちなみに旧約聖書篇は完結していて、こちら

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間違いなどのご指摘は歓迎ですが、聖書についての解釈の議論をするつもりはありません。あくまでも「アートを楽しむために聖書の表層を知っていく」のが目的なので、すいません。

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この記事で参考・参照しているのは、『ビジュアル図解 聖書と名画』『キリスト教と聖書でたどる世界の名画』『聖書―Color Bible』『巨匠が描いた聖書』『新約聖書を美術で読む』『名画でたどる聖人たち』『アート・バイブル』『アート・バイブル2』『聖書物語 新約篇』『絵画で読む聖書』『中野京子と読み解く名画の謎 旧約・新約聖書篇』 『天使と悪魔の絵画史』『天使のひきだし』『悪魔のダンス』『マリアのウィンク』『図解聖書』『鑑賞のためのキリスト教事典』『西洋・日本美術史の基本』『続 西洋・日本美術史の基本』、そしてネット上のいろいろな記事です。



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