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痛風コワイ!(先輩が書いた痛風体験記)


アニサキス・アレルギーになって魚介類(ダシを含む)が食べられなくなったことで、数は少ないがイイコトもある。

食事をひとつひとつ吟味しながら食べ、相対的に野菜が増えていることもあってか、血液検査のあらゆる数値がさがったのである。

つまりは正常値になった。

会社員時代には3桁の後半くらいまで行っていた「γ-GTP」なんて、なんと42まで下がった(基準値は13〜64)。
うわ〜なんか赤ちゃんみたいな肝臓だ(違)。

尿酸値も下がった。
これは本当にホッとした。

だって、痛風、怖いもんね・・・


ボクが痛風を怖がるのは、先達たちがちゃんと脅してくれるからだ。

「いや、ほんと痛いよ」
「痛いなんてもんじゃない!」
「いやぁ、あれはえげつないで・・・」
「風が吹いても痛い、というのはホント!」

その中でも、もっとも丁寧に教えてくれたのがT先輩である。
大阪勤務時代の先輩だ。

もうずいぶん前になるが、T先輩が送ってくれた痛風体験記があるので、それを全収録したいと思う。

なかなかの迫真である。

いや、ほんと、痛風コワイ・・・


以下は個人の体験談をそのまま載せたもので、特に医師の発言について医学的な裏付けを取っていません。また、この体験記自体が10年ほど前のものなので、その後医学が進歩していることもあります。それをご了承のうえお読みください。


まいど。

デスクのごみの下から、先月のさとなおの書き置きが出てきたよ。
大阪に来てたんだって? いなくてごめんね。

ひさしぶりに「パイルドライバー(注:いっしょによく行く大阪のバー)」にでも行きたかったよ~、とゆうワケにもいかないワケがあるの。

嗚呼、あたしお酒が呑めない体になってしまったの!

つッ痛風じゃ~!!!!!!!!!!!!!!!



それは残暑きびしき9月の木曜日5:38AM。
なにげに寝返りうって、タオルケットをけっとばした左足首内側が

グガガガガガググリングリンゲボンガグガガウガワワワワワワァー

くるぶしの骨の真芯からそとにむかって、割れた三ツ矢サイダーの瓶の底のギザギザが

グリグリグリグリッ~っ!


くるぶしの皮膚の表面にぐらぐらの熱湯が500円玉大のピンポイントで

ドボドボドボボボッ~っ!


骨折、火傷、刺し傷3針、盲腸17針、47年間の痛い痛い歴のどれを振り返っても、こんなんはじめてッ!痛い度No.1!

ふつうどんな痛みでも、波があるでしょ、ズキンズキンとか、ガーンガーンとか。

痛風は波なしッ!
とってもデジタル!
痛ったいのんがピィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと続きまんねん。百万年。

脳細胞のすべてが痛いしか感じません。
気ぃまぎらす一瞬がありません。
どっちむいてもイタイイタイ、それどころか体をチョビッと動かすだけで激痛がシフトアップしよる!

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


微動もできず、忍忍2時間半。
痛みにいくらか慣れた(痛みが和らいだのではない、脳が麻痺してしまったのだ)ので恐る恐る匍匐前進で玄関へ、300m先の外科にタクシーで転がり込む。

「せんせ~!」
「ふーん、レントゲンを見る限り骨に異常はない。ふふ、あんたサケは?」
「ハイ、毎日がぶがぶ」
「まっ、血液検査と尿検査の結果見んとわからんけどぅ、十中八九、まっ、痛風やね」

痛風!? 
痛いから外科きてしもたけど、これが痛風!
つ・う・ふ・う ゆうもんなん!



それにしてもせんせ、なんでニヤニヤ、話し声が笑顔なん?

そういえば、先輩の痛風の話聞いてたとき僕も笑ろてたような・・・
う~ん因果応報。盛者必滅。

「で、どないする?
 検査結果あさっての朝になるけどぅ、それまで。
 痛い~ぃ?」
「イタイ!イタイ!」
「痛み止め出しとくぅ~?」
「出しとく、出しとく、今すぐ出しとく!!!!」(悪魔か!おのれは!)

薬飲んで半日冬眠。激痛は台風一過で消えました。
さすがデジタルペイン。嘘みたくカットオフです。


「やっぱり痛風やね。尿酸値9.5もあるで!」
「はぁ・・・」
「尿酸ゆうんは、ゆうたら古なった細胞の滓や。
 それを腎臓さんがオシッコにして体外に排泄してくれはるんやが、
 あんたはいままで腎臓さんをいたぶってたさかい、
 よう排泄せんと血液中に溜まってんねん。
 溶液が過飽和状態になるとどーなる? 中学で習たやろ」
「固体になる?」
「そう、結晶化しよる。その結晶が骨の関節に溜まって溜まって、
 そこにじっとしといてくれたら、どもないが、ひょと溢れ出す。
 するとどーなる?
 白血球が異物としてこれを攻撃しはじめるわけや。
 ミクロの決死圏見たか? 見た!
 あの、お汁粉の中の、白玉のへしゃげたみた様な奴が攻撃しよる。
 それが痛風の痛み、デアル」
「そうか!白玉のへしゃげたみた様な奴の痛み!デアッタカ。
 はじめてのはずや!」

 
「さて、あんたには、あんたのこれからの一生には、
 ふたつのコースがある。
 ふたつしかないッ!と思うか、ふたつもあるッ!と思うか
 それは自由やが。
 ふたつふたつ、フフ。
 ふたつから選ば。
 なければ。
 ならない。
 そのふたつとはッ! 
 それを言うまえに、まず肝に銘じておくこと。

 痛風は一生もんのお付き合いデアルッ! 

 
 治ったからもうよいとゆうようなことは
 いっさい在り得ない、無いッ! 

 では、Aコース。
 尿酸値を下げるお薬を毎日まいにち、一生涯飲み続ける。
 いっぺんでも、あ、忘れた。するとどーなる?
 尿酸値が激増し、痛風発作がくる、来やすくなる。
 薬の副作用てなもんも、ないことはぁ、ない。
 どーする?

 次、Bコース。
 食事療法。野菜を食べる。
 あらゆる種類の食物をまんべんなく食べる。
 尿酸に変化するプリン体の多い食物、
 ウニとかイクラとか肉とかは控える。
 酒は飲まない。
 水を飲む、一日2リットル欠かさず。
 オシッコいっぱい出す。
 どーする?」

「あの~質問いいですか?」
「どうぞ」
「Bコースですが、酒は、焼酎はいいとゆーようなことを聞い」
「焼酎はいいとゆーようなことは、無いッ!
 プリン体がビールより少ないゆうだけで
 アルコールはどれもみな腎臓さんの機能を低下させる。
 いっしょッ!」
「Aコースなら酒は、」
「イッショッ!腎臓さんがこのまま傷んでゆくと、
 腎障害、腎不全、尿毒症、
 それにくわえて、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞・・・」 
「ビッ、Bコースにしますッ!」
「正しい選択だと思います。
 ほなこれ、痛風手帳。
 よー読んでおだいじにぃ~」



家もどって、痛風手帳(手帳ゆうても葉書大の小冊子)を開く。

この手帳を開いたあなたは今、発作の激痛もおさまりホッとされている事でしょう。
喉もと過ぎれば、熱さ忘るる。
ひょっとしたら、お医者さんはいろいろ言ってたけど、もう大丈夫。治ったんだ、なんて思ってはいませんか?(ドキッ)
あなたが、以下の事をよく読んで守らなければ、個人差はありますが、2週間から1年以内に、2回目の発作が訪れます!(ガ~ン!)
あなたの骨の関節部分には、まだ(ほとんどの場合一生涯)尿酸の結晶が存在するのです。
それは時限爆弾のようなもの。
起爆スイッチを握っているのは、あなたです。(グサグサグサッ!)


あれから3ヶ月。
一滴も呑んでません。(「パイルドライバー」って何?)

朝は、金時人参とレタスを一本づつ丸かじりし、ハム3枚と玄米ごはんに根菜味噌汁。
昼も夜も野菜中心生活です。(金時人参ウマイッス。バックスバニーかおれは!)

おかげで7キロやせました。
痛風ダイエットであります。
きょうも、お得意と忘年会ですが、ウーロン茶で乗り切るつもりです。

強い強い意志の力!


ほな、お元気で! よいお年を。



いや、T先輩、名文w
そして、この先生、絶品w


このメール、久しぶりに読んだけど、アレルギーのボクにも、こう言ってはなんだけど、勇気になりますね。

まぁみんな、いろいろなものをそれぞれに抱えているんですよね。

ということで、ご同輩、気をつけましょう。



上記は個人の体験談をそのまま載せたもので、特に医師の言葉について医学的な裏付けを取っていません。また、この体験記自体が10年ほど前のものなので、その後医学が進歩していることもあります。ご了承ください。


※※
飲み過ぎや不摂生以外で、遺伝要因での痛風もあるようです。
ボクの友人に、特に激しい飲酒をしないのに、若くして痛風になったヒトがいます。


古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。